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生活のポイントになる、家にあると楽しくなる器や花器「川名萌子」。

新潟市を拠点に活動する陶芸家の川名萌子さん。シンプルなかたちに抽象画のような模様が入れられた器からは、あたたかさとやさしさを感じます。今年4月、沼垂にギャラリー兼工房である「atelier gallery mo」をオープンされたと聞いて、川名さんに作品づくりへのこだわりや、陶芸の面白さについて聞いてきました。

 

 

atelier gallery mo

川名 萌子 Moeko Kawana

1984年東京都生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン科陶磁専攻卒業後、岐阜県多治見市陶磁器意匠研究所で2年間陶芸について学ぶ。多治見市にあるタイルの会社に勤めた後、2011年に埼玉県川口市で作家活動をはじめ、2017年に新潟市へ拠点を移す。「青人窯」を手伝いながら作陶を続けた後、2023年4月、沼垂に自身のアトリエ「atelier gallery mo」を構える。

 

大学時代に出会った陶芸を続けて、気づけば新潟へ移住。

——川名さんはどんなきっかけで陶芸に興味を持ったんでしょうか。

川名さん:もともと小さい頃から絵を描いたり、いろいろ作ったりするのが好きで、高校のとき美術の大学に行くことは決めていたんですけど、何を専攻するかは決めていませんでした。だけど絵とか表現するものより生活の中で使うものを作りたくて「工芸工業デザイン科」に入ったんです。

 

——どんなことを勉強できる学科だったんですか?

川名さん:陶芸、テキスタイル、ガラス、インテリアとか、すごく幅広く学ぶことができる学科でした。私はその中から陶芸、ガラス、金工の3つに触れてみたんですけど、先生の話が面白かったからっていう軽い理由で陶芸を専攻に決めました(笑)

 

——先生が決め手だったんですね(笑)

川名さん:あとは焼くと物質が変化して違うものになるし、色や質感がまったく変わるので、どうなるか分からないところが面白いなと思って。土を触って作りながら考えられるところにも惹かれました。

 

——大学在学中から卒業後も陶芸に携わるつもりで?

川名さん:そうですね。楽しかったし、大学の授業だけではぜんぜん足りないんですよ。だから大学を卒業した後も岐阜県の多治見市にある陶芸の学校に行って、2年間勉強しました。それから多治見市にあるタイルの会社で働いた後、しばらくは埼玉で作家活動をしていました。

 

 

——それから新潟に拠点を移されたのは?

川名さん:沼垂テラス商店街にある「青人窯」のご夫婦は、岐阜の陶芸学校の同級生なんです。埼玉で活動する中で少し行き詰まりを感じていたので、環境を変えてみようかなと思っていました。それから新潟に遊びに来たり、展示をする機会があったりして、「青人窯」も人を増やしたいと言っていたので、ぬるっと移住して(笑)。「青人窯」を手伝いながら、間借りして自分の作品制作もしていました。

 

——環境が変わると作品にも影響が出るんでしょうか。

川名さん:新潟は東京に比べてコミュニティがすごくギュッとしているなって思いますし、この辺りにはいろんな制作をしている方がいたり、面白い方ともいっぱい出会えたりするので刺激になりますね。だからやっていることは埼玉にいる頃とそんなに変わらないけど、気持ちとしては違うかな。

 

好きなものや見たものが、模様のイメージにつながる。

——今作られているような作品のスタイルになったのはいつからですか?

川名さん:新潟に来てからですかね。作陶を続けるなかで徐々に徐々に変わっていって、今の技法になったのはここ3、4年くらいです。

 

——川名さんの作品、模様や柄がちょっとユニークで、あたたかみがあって素敵です。どんなことを意識して作られているんでしょう?

川名さん:自分で言い表すのは難しいんですけど……。柄があるものなので、シンプルに揃えるというよりは、生活の中にあったら「これに何を盛ろうかな」って楽しくなるような、ポイントとして使ってもらえるといいなと思って作っています。

 

 

——この模様はどうやって付けているんですか?

川名さん:ベースとなる土に色の違う土を貼って、それを薄く延ばしてカットして、型に沿わせて成形しています。黒い点は金属と赤い土を少し入れているんです。模様はいろいろな技法を試しながら変化しているんですけど、私が好きな幾何学模様とか抽象画とか、見た風景の影響もあります。この技法だからできる模様っていうのもあるかも。

 

——後から着色するんじゃなくて、土の色の違いで模様を作っているんですね。

川名さん:あと最近は白っぽいものをよく作っていて。やっぱり新潟って雪が多いので、雪を見ていると白っぽいものを作りたくなるんですよね(笑)。かたちは模様との兼ね合いでなるべくシンプルにしていて、サイズは自分で使いながら調整しています。

 

 

——作品のデザインって、どんなときに思いつくんですか?

川名さん:思いつくっていうより、作りながら「あ、この感じいいかも」と思ったらそこで止める。「こういう感じのものを作る」とははっきり考えていないですね。

 

——最初からガチっとした完成イメージがあるわけではないんですね。

川名さん:そうですね。作ってみて「これ、もうちょっとこうしたほうがよかったな」って思ったら変えてみて。はっきりデザインを描いてその通りに作るっていうより、やりながら変えていっています。

 

——食器だけではなくて、花器なども作られているんですね。

川名さん:部屋の中を飾るのが好き、というか楽しいから、こういう壁掛けとか花器とかを作っています。「道具としての役割」プラス「見た目も楽しい家の中のポイント」として使ってもらえるように考えています。

 

作陶は日々の試行錯誤の繰り返し。

——作陶を続けるモチベーションって、どんな部分ですか?

川名さん:結局、なかなか思い通りにいかないんですよね。だから続けているっていうよりは「なんか違うな」「もうちょっとこうしたいな」って試行錯誤しているうちに、気づいたら時間が経っていたという感じです(笑)

 

——川名さんの中でゴールみたいなものが?

川名さん:うーん、それはないかも。あとは展示とか、求められているものがあるっていうのも続いている理由かなと思います。

 

 

——先月、アトリエ兼ギャラリーとしてこの場所をはじめたそうですね。

川名さん:この場所が空いていたのと、「青人窯」を間借りしている状態だったこともあって、自分の場所を作りたいなと思って。ここは「books f3」さんが入っていた場所で、すごく素敵なお店だったので「借りていいのかな」って迷いながらもはじめることにしました。ここじゃなければはじめていなかったかもしれませんね。場所ありきです。

 

——他の作家さんの企画展も開催する予定だと聞きました。

川名さん:7月末から展示を開く予定があります。この空間ならいろいろ映えると思うので、私が好きなものとか、出会った人とかの作品をここで見てみたいなって思っています。

 

 

 

川名 萌子

atelier gallery mo

新潟市中央区沼垂東2丁目1-17

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