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自分へのご褒美や、大切な人への贈り物にしたい「atori-アトリ-」のお弁当。

新潟市中央区の花町に今年2月にオープンした「atori-アトリ-」。地元で採れた季節の食材を使って、色鮮やかなお弁当屋やお惣菜を作っているアトリエです。普段は予約優先ですが、月に数回「アトリエのオープンデー」として店頭販売もしているんだとか。今回は代表の天野さんに「atori」で作っているお料理へのこだわりや、天野さんが考える「美味しい」についていろいろ聞いてきました。

 

 

atori-アトリ-

天野 千尋 Chihiro Amano

1987年阿賀野市生まれ。関西の大学を卒業後、大手料理教室に総合職で就職。縁あって東京のケータリング会社に1年半ほど勤める。新潟に帰って来てからはケータリングユニットを組んで活動をした後、2022年2月に「atori-アトリ-」をオープン。

 

愛着を持って食べてもらえるお弁当を作りたい。

――「atori」はどんな思いではじまったお店なんでしょうか。

天野さん:えっと……「美味しい」について考えたことってありますか?

 

――えっ。美味しい……ですか。あんまりないです……(笑)

天野さん:ないですか(笑)。私の好きな文化人類学者さんの本に、「『美味しい』って感じるときの定義がある」って書いてあって。例えば、すごくお腹がぺこぺこのときに出てきたご飯って「美味しい」って思うじゃないですか。

 

――すごく思います。

天野さん:あとは、お母さんの手料理みたいな懐かしい味とか馴染みのある味の、安心感による「美味しい」。それと、ジャンクフードとかのやみつきになる「美味しい」。それから、自分で作ったものや育てたものへの愛着から生まれる「美味しい」。この4つのうちどれかの要素が入っていたり、被っていたりするから「美味しい」って感じるそうなんです。

 

 

――確かに。思い返してみるとそうかもしれないです。

天野さん:私は、すごく好きな農家さんから野菜を買ったり、生産者さんとのつながりを大切にしたりしているんですけど、「そういうものから作った手作りの料理って、みんなに美味しいって思ってもらえるんじゃないかな」という思いでここをはじめたんです。

 

――じゃあ天野さんは「愛着による美味しい」を感じてもらえるお料理を作っているわけですね。

天野さん:そうですね。「美味しい」にたどり着く道のりって何でもいいと思うんですよ。けど私はそのうちの「愛着」っていうところで、口に入るまでの工程も愛おしく思えるお弁当を作りたいと思っています。食材やお弁当自体に愛着を持ってもらえて、かつ、それを食べたときに自分を大切にできるもの。自分へのご褒美として食べたり、大切な人にあげたり、シェアして食べたりできる時間が大切だなというか、好きだなと思うんです。

 

――そういう時間、私も好きです。

天野さん:「食」って「ただお腹を満たすためのもの」じゃなくて、それ以上のものが得られるものだと思うので、私たちの作っているお弁当からそういうところを感じてもらえるようになったらいいですね。

 

余裕を持って働ける仕組み作りを模索する、実験の場。

――「atori」は「お弁当とお惣菜のアトリエ」だそうですね。「お店」ではないんですか?

天野さん:私はここをお店というより実験の場みたいに思っているんです。お店みたいに毎日やっているわけではなくて、予約が入った日やオープン日に作ったものを自由に持っていってもらうっていう場所です。工場みたいなことですよね。工場がオープンする販売日にだけ、ものを買うことができるみたいな。

 

――なるほど。「実験の場」という表現をされたのは?

天野さん:ここは働き方とか、経営しながらお客さんにどう思ってもらえるかっていうところを試行錯誤する場なんです。「atori」を手伝ってくれている人たちには、働いていて「楽しい」って思ってもらいたいし、そのために私も余裕を持って働きたい。だけど経営しているからには売上も作りたいってなると、そのいいあんばいってどこなのかなって。

 

 

――じゃあ営業の仕方も、今後変わる可能性があるわけですね。

天野さん:そうですね。みんなのライフステージの変化に合わせて柔軟に対応できるようなお店の仕組み作りがしたいし、かつお客さんに受け入れてもらえるようになったらいいなと思います。

 

自分を大切にしたいとき、「atori」のお弁当を食べて欲しい。

――お料理についても教えてください。お弁当の中身はどうやって考えているんですか?

天野さん:農家さんからその時期に採れるもののリストを送ってもらって、その中から私が使いたいものをピックアップして、届いた食材をもとに作っています。

 

――彩りもすごくきれいですよね。

天野さん:お弁当なので冷たいものを食べるわけじゃないですか。そのぶん彩りが良くなるように作るようにしています。今採れている旬のものを使うだけで夏は夏っぽい色になるし、春は春っぽい色になるんですよ。私がチョイスしているというか、お届けされた野菜の色を活かすように使うとそうなるんですよね。

 

――味付けについてはどうですか?

天野さん:夏が近づいてきたら「スパイシーなものが食べたいな」とか「あっさりしたものが食べたいな」って感じで考えています。お出汁を使った和風な味付けが好きですね。なるべく甘い、酸っぱい、辛い、しょっぱいとか、ひとつのお弁当にいろいろな味が入るように作っています。

 

 

――「『atori』のお弁当をこういうシーンで食べてほしい」っていうイメージはありますか?

天野さん:自分を大切にしたいときとかに、自分へのご褒美で食べて欲しいです。数人でシェアして食べられるものも用意しているんですけど、それは大切なひとと食べて欲しいです。みんな自分を大事にできたらいいですよね。自分を大事にできないと自分の周りも大事にできないですし。

 

――「atori」のお弁当を通じて、自分を大切にできる人が増えていったらいいですね。今後、天野さんはどういうふうに活動を続けていきたいですか?

天野さん:もちろんお客さんは大切なんですけど、私やスタッフのみんなが働きやすくなるように、楽しくなるようにワクワクするようなことを常に考えたいですし、考えていられるような余裕を常に持っていたいです。ご機嫌でいたいですね(笑)

 

 

 

atori-アトリ-

新潟市中央区花町1983-1 山際ビル1階

11:00-19:00(売り切れ次第終了)

営業日はInstagramでご確認ください

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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