古町エリアの取材へ向かうためいつもの有料駐車場に車を停めると、ずっと廃屋だった正面の建物に「ばぁばのごはん」という看板が掲げられていました。駐車場に車を停めなければ気づかれないような、こんな場所でお店をやっているのはどうしてなのか……。恐る恐る入口の扉を開けてみると、トトロやカオナシといったスタジオジブリのキャラクターたちと共に、店主の小嶋さんがあたたかく迎えてくれました。
ばぁばのごはん
小嶋 典子 Noriko Kojima
1969年新潟市中央区生まれ。警備会社、乳児園、食堂、鮮魚店といろいろな職場を経験。現在も居酒屋でアルバイトをしていて、2023年に新潟市中央区で「ばぁばのごはん」をオープンする。歌うことが好きで、趣味のカラオケではMISIAが十八番。
——有料駐車場からしか入れないような場所に、お店がオープンしているとは思いませんでした。
小嶋さん:そうですよね(笑)。せっかくお店の紹介をしていただいても、ほとんどの方はたどり着くことができなくて、2回目の挑戦でやっとたどり着くんですよ。本当に申し訳なく思っています。でも、知る人ぞ知る隠れ家っぽいお店に憧れていたので、この物件を見たときからひと目惚れしてしまったんです。
——隠れ家っぽい立地にひと目惚れしたんですか?
小嶋さん:それもありますし、建物の雰囲気もいい感じだなと思いましたね。物件の下見に来たとき、なかを覗いてみたら奥にある棚が目に入ったんですよ。お店には大好きなスタジオジブリのキャラクターグッズを飾りたいと思っていたので、その棚を見てこの物件でお店をオープンしようと決めました。
——確かにお店のなかは、スタジオジブリのキャラクターだらけですね(笑)。そんなに好きなんですか?
小嶋さん:ファンタジーなのに現実社会に通じていて、癒しも学びも与えてくれる奥深さが好きなんです。なかでも好きな作品は「千と千尋の神隠し」。キャラクターはみんな好きなので選べないけど、グッズではカオナシが推しですね。
——なかなかガチなファンですね(笑)。小嶋さんは今までどんな仕事をしてきたんですか?
小嶋さん:私は同じ仕事で経験を積むというよりも、いろんな仕事をして経験を広げたいタイプなんです。だから今までいろんな仕事をしてきましたね。警備会社からはじまって、乳児園、食堂、かまぼこ店、鮮魚店……。どれもいい経験になりました。
——お店をはじめてみようと思ったのはどうしてなんですか?
小嶋さん:子どもの頃から料理が好きで、いつか自分のお店をはじめてみたいという夢はあったんです。鮮魚店でお惣菜を作る仕事をはじめて、決められたものを作るのではなく、自分の考えで作りたいものを作りたいと思うようになったのが、自分のお店をはじめるきっかけでしたね。今までも働きながら物件探しをしてきたんですけど、なかなか見つからなかったので、前の仕事を退職してけじめをつけてから、背水の陣で本格的に物件探しに取り組んだんです。
——「千と千尋の神隠し」が好きな作品と言ってましたけど「ばぁばのごはん」っていう店名はまさか……
小嶋さん:孫から「ばぁば」と呼ばれているので、それを店名にしたというように由来をお話ししていますが、裏に隠された真の意味はご想像にお任せします(笑)
——「ばぁばのごはん」をどんなお店にしていきたいですか?
小嶋さん:毎日のように通ってもらえて、お店に入ったときに「ただいま」って言いたくなるような、アットホームなお店を目指しているんです。そのためにも気軽に買える価格や、おしゃべりしやすい雰囲気づくりを心掛けるようにしています。
——スタジオジブリが好きなお客さんとは会話も弾みそうですね。
小嶋さん:BGMには昭和歌謡を流していますので、懐かしがってくれるお客様もいらっしゃるんです。私は高校時代から今までいろいろなバンドでボーカルを務めてきたので、店内にお客様がいらっしゃらないときには大声で歌ったりしています(笑)。いつか店内でアコースティックライブなんかも開いてみたいですね。
——それは楽しそうですね(笑)。他にもお店のことで心掛けていることがあったら教えてください。
小嶋さん:この辺りにはひとり暮らしの学生やお年寄りがたくさん住んでいるので、そういうお客様のことを考えたお料理を並べるようにしています。家で作ると量が多くなってしまうようなお料理を、ひとりで食べる一食分にちょうどいい量で提供しているんです。
——家庭的な料理が多くてほっとします。お弁当はすべて丼になっているんですね。
小嶋さん:食べやすさからなのか、幕の内弁当よりも丼の方がよく出るんですよ。でもお時間さえいただければ、売っているお惣菜を使って幕の内弁当にすることもできます。お客様の声にお応えして提供をはじめたお弁当やお惣菜もあるんですよ。
——お弁当やお惣菜はそのときどきで変わるんでしょうか。
小嶋さん:先ほどもお話ししたように毎日通えるようなお店にしたいので、お客様に飽きられないよう旬の食材を取り入れたお弁当やお惣菜を作るようにしています。今の時期だと真鱈子がおすすめですね。デザートは完全に気分で作っていて、今日はクリスマスだからカップケーキを作ってみました。でも、お客様から「美味しかった」と言われると、嬉しくってまた同じものを作っちゃうことも多いんですよ(笑)
——ずっと気になっていたんですけど、お店の片隅にある「わらしべBOX」というのは何ですか?
小嶋さん:自宅を片付けていたときに、まだまだ充分使える不用品が出てきたんです。捨てるのはもったいないけど、リユース店に持っていっても買取してもらえないようなものばかりだったので、店内に「わらしべBOX」を作ることにしました。このなかで欲しいものがあれば、まだ使える不用品と交換していただくことで、少しでもリサイクルに繋がるんじゃないかと思っています。
——へぇ〜、面白い試みですね。最後に、今後やってみようと思っていることがあったら教えてください。
小嶋さん:2階にもスペースがあるので、ゆくゆくはイートインスペースとして開放したいんです。最近はファミレスやハンバーガーショップで勉強する学生さんが多いようなんですけど、古町にはそうしたお店がどんどん無くなってきているんです。それで困っている学生さんのお勉強や、ママ友さんの集まりに使っていただけたらいいなと思っています。
ばぁばのごはん
新潟市中央区東堀通5番町443-5
090-3439-3198
10:00-18:00
日水曜祝日休