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元小学校の木造校舎で楽しむ「Bague」の地元食材フレンチ。

緑の山々に囲まれ、少し黄緑に色づきはじめた田園が広がる長岡市の和島地区。蝉しぐれが降りしきる小高い丘の上に、小学校の木造校舎のような建物があります。門柱の表札には「島田小学校」の文字。といっても実はここ、「和島トゥー・ル・モンド」という、フレンチレストランやベーカリーを擁する複合施設なんです。今回はその中で営業しているフレンチレストラン「Bague(バーグ)」のシェフ・中澤さんにお話を聞いてきました。

 

 

Bague

中澤 壮一 Souichi Nakazawa

1969年南魚沼市生まれ。東京の調理師専門学校卒業後、都内のホテルやフレンチレストランで修行を積み、新潟に帰ってからは長岡市の結婚式場でチーフとして腕をふるう。2012年にオープンした「Bague」ではシェフとして、地元食材にこだわったフレンチを提供している。

 

地元のランドマークだった小学校をリノベーション。

——絵に描いたような木造校舎ですね!まるで映画やドラマに出てくるみたいな……。ここはどういった建物なんですか?

中澤さん:もともとは明治37年に創立した島田小学校の校舎で「Bague」のある木造校舎と体育館は昭和2年に建てられました。「丘の上の小学校」として長い間地元の人々のシンボルでしたが、新しくできた和島小学校の開校を受けて平成21年に閉校したんです。実際に映画のロケで使われたこともあるんですよ。

 

 

——そうだったんですね。その廃校舎を使って、複合施設を作ったのはどうしてなんですか?

中澤さん:小学校に思い入れのある地元の人たちから、建物を残しながら、何か新しいことができないかという声があったんです。そこで、社会福祉法人長岡三古老人福祉会が障がいを持った人達でも、やりがいを持ってゆくゆくは、一般就労に羽ばたいて行ける場所として、平成24年に障害福祉サービス事業所「和島トゥー・ル・モンド」をオープンすることになりました。「トゥー・ル・モンド」という言葉は「みんなで」という意味のフランス語なんです。

 

 

——なるほど。こういう校舎に入ると懐かしい気持ちになりますね。

中澤さん:この建物の2階には小学校の教室がそのまま再現してあるんです。第2駐車場はプールを埋め立てて作ったんですが、洗眼器やシャワー、腰洗い槽がそのまま残っています。このレストランの梁や柱は小学校当時のままで、真ん中をぶち抜いてふたつの部屋をつなげようと思ったけど構造上できなかったので、和島産の竹材と小国和紙を使って部屋の真ん中に光壁を作ったんです。できるだけ当時の校舎を生かしながら、地元産の材料を使ってリノベーションされているんです。

 

ひと筋に続けてきた、フレンチの経験が生かせる店。

——中澤さんはどうして「Bague」のシェフになったんですか?

中澤さん:私は当時、長岡市の結婚式場で洋食部門のチーフをやっていたんです。そのときの部下のところに、「新しくできる『和島トゥー・ル・モンド』で飲食店をやってみないか」という話がきて、その部下から「一緒にやってほしい」って誘われたんです。当時はまだ何の店をやるか決まっていなかったので、フレンチレストランをやらせてほしいとお願いしました。

 

——なるほど。中澤さんはずっと新潟でフレンチをやってきたんですか?

中澤さん:いいえ。東京の調理師専門学校を卒業した後、都内のレストランで修行を積みました。最初に働いたのは品川のホテルレストランです。フレンチをベースに世界各国の料理を作っていたんですけど、たくさんスタッフがいて仕事が細分化されていたんです。だから自分の担当以外の仕事をしたいときは、時間外によその部署を手伝うしかなかったんです。

 

——へ〜、じゃあ、働きながら、もっと仕事を覚えるために職場を変わりたいと思っていたわけですね。

中澤さん:そうですね。だからそのレストランの先輩に紹介してもらって、OBの方がシェフをやっているレストランを紹介してもらいました。ホテルレストランとは正反対の、少人数でなんでもやらなければならない店だったので、いろいろな仕事を覚えることができましたね。でも、閉店することになったので他の店に移りました。

 

——次の店ではどんな経験をしたんでしょうか?

中澤さん:西麻布にあるフレンチレストランで、スーシェフとして働かせてもらいました。その店のシェフはフランス帰りで感覚が新しかったので、とても刺激を受けましたね。例えば、ソースをスモークするなんて発想は当時なかったですからね。

 

 

——いろいろな店で技術や発想を学んできたんですね。ところで新潟に帰ってきたのはいつなんですか?

中澤さん:30歳のとき、ふたり目の子供が生まれたのをきっかけに南魚沼へ戻ってきました。でもそこでは私が今までやってきたフレンチレストランの需要がなかったんです。いろいろな仕事をした末に長岡の結婚式場で働くことになって、そのときのご縁で「Bague」のシェフをやらせていただくことになったわけです。今は自分の修行してきたフレンチが生かせる仕事ができて、本当にありがたいと思っています。

 

地元野菜を大切にし、障がい者と共に働く店。

——「Bague」の料理はどんなところにこだわっていますか?

中澤さん:食材はできるだけ地物を使うようにしています。とくに野菜は100%地物ですね。古い付き合いの農家さんは、市場に出回らないような野菜を回してくれたり「Bague」のための野菜を作ってくれています。

 

 

——生産者といい関係ができているんですね。

中澤さん:市場に出ている青果って、まだ熟さないうちに収穫されて出荷されるんです。うちはギリギリまで枝についていて熟した野菜を仕入れさせてもらっているから、うま味がぎっしり詰まっているんですよ。そのかわり、うちも農家さんが市場に出すことができない規格外の野菜を、積極的に使うようにしています。少しでも農家さんの助けになってWin-Winの関係が築ければいいと思いますし、フードロスの減少にもつながりますから。

 

——和島周辺の食材でおすすめのものを教えてください。

中澤さん:栃尾のブルーベリーは大粒な上に甘くて美味しいし、出雲崎の「越後姫」も甘みが強くて美味しいイチゴです。あと、和島のカブは梨と間違うほど甘いんですよ。初めて食べたときは感動して、素材の美味しさを生かすため調理に手をかけ過ぎたらダメだと思いました。だから素材のうま味を生かすために、シンプルな味付けにするよう心がけています。農家の皆さんが作る美味しい野菜のおかげで、本当に助けていただいてますね。

 

 

——今まで「Bague」をやってきて、いかがですか?

中澤さん:オープンする前は、こんな山の中でフレンチレストランをやって、本当にお客様が来てくれるのか半信半疑だったんです。でも海水浴場やキャンプ場のお客様が立ち寄ってくれるし、いろいろな場所から足を運んでいただけていますね。

 

——それはうれしいことですよね。他にもやってきてよかったと思うことってありますか?

中澤さん:うちは「指定障害福祉サービス事業所」として、障がいのある人たちと一緒に働いているんですが、最初は「一緒に働けるのかな」っていう心配もあったんですよ。でも、与えられた仕事を真面目にやってくれるし、寸分のズレなく正確に並べてくれたりするし、そういった長所に気がつきました。

 

——実際、一緒に働ける人たちばかりだったと。

中澤さん:はい。だから私も「人よりも苦手なことが多い人たち」として接するようにしてきたら、職場に少しずつ一体感が生まれてきたんです。障がいのある人の中には、頑張って調理師免許を取った人もいます。昨年「ミシュランガイド新潟2020特別版」でビブグルマンに選ばれたのは、障がい者施設が運営するレストランではおそらく初めてじゃないかと思うんです。頑張ってきたことが認められて彼らの励みにもなったし、私たちもうれしかったですね。

 

 

——本当に素晴らしいことですね。

中澤さん:ありがとうございます。これからも障がいを持つ人たちが社会に巣立っていけるよう、仕事を覚える「学校」としても「Bague」を続けていきたいと思っています。

 

 

地元の人たちから愛され続けてきた小学校の木造校舎で、地元食材を使った料理を提供しているフレンチレストラン「Bague」。子どもたちの思い出がいっぱい詰まった建物で、今は訪れるお客さんたちの思い出を作っています。皆さんもぜひ「Bague」で思い出に残る食事をしてみてはいかがでしょうか。

 

 

Bague

新潟県長岡市和島中沢乙64-1

0258-74-3004

11:00-16:30(L.o.16:00)/18:00-21:30(L.o.20:30)

木曜休

 

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