Things

広々とした空間や生産者の思いも調味料にする「La Gemma」。

聖籠新発田インターチェンジの近くにあったイタリアンレストラン「La Gemma(ラ・ジェンマ)」が昨年、新発田市緑町に移転し、広々とした空間で食事をゆったりと楽しめるようになりました。今回はオーナーシェフの菊池さんに、料理の道へ進んだきっかけやお店のことなどいろいろとお話を伺ってきました。

 

 

La Gemma

菊池 正史 Masashi Kikuchi

1980年新発田市生まれ。新潟調理専門学校卒業後、新潟市内のイタリアンレストランで経験を積む。20代で2度イタリアへ渡る。2010年に独立し、新発田市に「La Gemma」をオープン。2021年に同市緑町へ移転。車が好きでドライブが趣味。

 

郷土の食材を、大切な人と楽しむイタリアンレストラン。

——まずは菊池さんがシェフになるまでのことを教えてください。

菊池さん:料理の仕事に興味を持ったのは幼少の頃でした。昔、古町に「ラ・バルカローラ」という地中海料理のお店があって、よく両親に連れて行ってもらいました。そのお店には半地下と中2階があって、「迷路みたいでワクワクするお店だな」って思ったことを今でもよく覚えています。パスタもピザもすごく美味しくて、「自分でもこんな料理が作りたい」と思ったんですよね。

 

——じゃあそのお店が菊池さんの原点なんですね。

菊池さん:子どもの頃は「バルカローラ」が何料理のお店なのか分かっていませんでしたけどね。だって当時はイタリア料理なんてあまり知られていませんでしたから。パスタといったって、せいぜいミートソースとナポリタンくらいだったような……。

 

——確かにそうかも……(笑)。高校卒業後は料理の道へ?

菊池さん:「バルカローラ」への憧れから調理の専門学校へ進学して、今までずっとブレることなくイタリアンの道を進んできました。

 

 

——ずっと憧れていたことを仕事にされたからこそ感じるギャップってありませんでしたか?

菊池さん:見習いの頃は分からないことだらけでしたし、本で学ぶ料理の世界と実体験はまったく違いましたね。厳しい現実にぶち当たって、続けられるかな……と思ったことはありましたけど、「人に喜んでもらうこと」が自分の活力なので、料理人が天職なのかな、という思いはあります。

 

——料理の勉強のためイタリアにも行かれたそうですね。そこではどんなことが印象に残っていますか?

菊池さん:イタリアには2度行って、最初は北部、次は南部に行きました。イタリアって日本と同じく四季があって、季節ごとに食材が変わるし、日本の各都道府県に名物があるように地方ごとに食文化があるんです。「基本的にはローマに行かないとカルボナーラは食べられない」みたいな、「この土地でしかこの料理は提供しない」という信念を感じる国でした。それが郷土愛につながっているんでしょうね。イタリア人の友人同士が「どっちの母ちゃんの料理がうまいか」と言い争っているシーンを見かけたこともありますよ。イタリアの食文化と郷土への愛着を感じて、世界観がガラリと変わりました。

 

——イタリアの食文化は「La Gemma」さんにも反映されているんでしょうか?

菊池さん:本場のように「地元の素材を生かした料理を提供したい」という思いを店名にも込めています。「La Gemma」はイタリア語で「大切な人」「芽」です。「大切な人と過ごすお店」「地元で芽吹いた食材とともにある料理」という意味で「La Gemma」なんです。

 

簡単には真似できない空間だからこそ、料理がひときわ美味しくなる。

——独立して「La Gemma」をオープンした頃のことも教えてください。

菊池さん:若い頃から人生設計を立てるようにしていて、「30代前半でお店を出したい」とは思っていました。でも、そんなに綿密に計画していたわけじゃなくて「好みの物件が見つかったら」とぼんやり考えていたんです。そしたら目星をつけていた建物がちょうどいいタイミングで空いちゃって(笑)。それで30歳のときに聖籠新発田インターの近くでお店をはじめたんです。

 

——ご自身でお店をやるって、やっぱり大変なこともありますよね。

菊池さん:勤めていた頃よりも責任がありますからね。「毎日がチャレンジ」って感じでいろいろ試行錯誤してきました。失敗したことも多いですけど、お客さまに喜んでもらったことは継続しています。

 

——例えばどんな試みが?

菊池さん:僕はお客さまの数だけ需要があると思っているので、「お任せコース」の場合はオーダーの際に好きなもの、苦手なものをお聞きするようにしています。お客さまの好みをできるだけメニューに反映させたいんです。そうすることで対話が生まれて、自然なコミュニケーションも取れるんですよ。

 

 

——去年、新しく店舗を構えられて緑町に移転されたそうですね。

菊池さん:以前の店舗はお借りしていた物件だったので、何をするにしてもリミットがあったんですよね。それで開業して3、4年くらい経った頃から次のステップとして新店舗の構想をしていたんです。新店舗への移転がひとつの目標でもありました。

 

——そうでしたか。

菊池さん:料理は切磋琢磨して競い合えますけど、建物は一度建てたらすぐには変えられません。「自分が行きたくなるお店づくり」をテーマにいろいろ考えて準備してきました。僕の原点「バルカローラ」は料理だけじゃなくて店構えも素晴らしかったので、「人が簡単には真似できない空間を作り込みたい」という思いをずっと持っていたんですよ。食べる空間によって食事の雰囲気って変わると思うんですよね。

 

——新しい店舗にはどんなところにこだわりが?

菊池さん:自然の風景が目に入るようにしたくて、ちょっと背伸びして庭とテラス席も作りました。それから広々とさせるために天井も高くしたんです。広い空間だったら圧迫感もないですし、スピーカーから響く音楽も嫌味じゃなく、ちょうどいい感じに落ち着くんじゃないかと思いまして。

 

食材には生産者のストーリーが。料理から地域のことを伝える。

——お料理のことも教えてください。菊池さんのおすすめメニューはなんでしょう?

菊池さん:市場がお休みじゃない限り、毎朝馴染みの魚屋さんから「今日はこんな魚介があるよ」って教えてもらっています。それを聞いて頭の中でメニューを考えているので、魚介系のメニューはおすすめしたいです。それと新店舗にはピザ窯を入れたので、高温でピザを焼けるようになりました。人気のナポリピザは格段に美味しくなったと思います。

 

——う〜ん。美味しそう。

菊池さん:今回ご用意したのは、お店の人気メニューのひとつ「カチョ・エ・ペペ スパゲティ」です。この料理は、イタリアではお茶漬けのような位置づけですかね。茹でたパスタにチーズと黒胡椒を混ぜるだけなんですが、スッキリとした黒胡椒の辛さに濃厚なチーズが合わさった、癖になる味です。すりおろしたてのペコリーノをたっぷりかけて召し上がっていただきます。季節によって具材を変えるので、これからの時季は旨味のしっかりある関川村のしいたけを使おうと思っています。

 

 

——おお。関川村のしいたけですか。

菊池さん:農家さんと直接やり取りすることも多いんですよね。その中で教えてもらった生産者さんの思いやストーリーをできるだけお客さまにお伝えすることにしています。そうすると、ただ「しいたけのパスタです」ってお出しするより価値があるものになるというか、食材の背景も美味しい調味料になると思うんですよね。

 

——食材から地域を知ることにもつながる気がします。

菊池さん:その土地のものを食べると「ここに来たんだな」って実感できますよね。野沢菜を食べて「長野に来たな」と思うみたいな。なので、県外からのお客さまのためにも地元の食材は必ず用意しておくことにしているんです。「新発田に来たな」って感じてもらえると思うし、「また新発田に来ようね」って会話にもつながると思うんですよ。

 

 

 

La Gemma

新発田市緑町1-17-2

TEL:0254-28-9303

<ランチタイム> 11:30〜14:00ラストオーダー

<ディナータイム> 17:30〜20:30ラストオーダー

<定休日> 毎週月曜日、第2火曜日、他

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP