「アンティークって何?」と聞かれると、案外よく知らないという方も多いのではないでしょうか。アンティークは、雑貨やインテリアだけでなく、布やポストカードにもあるんだとか。にいがた人情横丁で雑貨屋「Caraway」を営む五十嵐さんは、アンティークの布地を使ったハンドメイドも得意なのだそう。今回はそんな五十嵐さんに、アンティークのあれこれや好きな雑貨への思いをたくさん聞いてきました。
Caraway
五十嵐 千里 Chisato Ikarashi
1959年新潟市生まれ。高校生の頃からアンティークに興味を持ち始める。海外旅行でアンティークショップ巡りを経験。結婚してふたりの子どもを育てた後、2008年に「Caraway」をオープン。趣味はK-POPのライブやクラシックバレエ・ダンス、ミュージカルを鑑賞すること。
――店内にはかわいい食器がいろいろありますね。
五十嵐さん:「スージークーパー」とか「ロイヤルドルトン」、「シェリー」なんかの洋食器を置いています。もともと好きで集めていました。
――なかでもお気に入りのものはありますか?
五十嵐さん:いちばんは「バニキンズ」ですね。ロイヤルドルトンっていう陶器メーカーがあるんですが、その中の子ども向けの食器の名前なんです。かわいらしい絵柄が大好きです。お店にあるものはだいたい30~40年前のものかな。だから、これは正確にはアンティークとまではいかないですね。アンティークには「100年経ったもの」という明確な定義があります。お店にあるものは古くても70~80年までのもの。ですから私は、アンティークからアンティークまではいかないもの、と言っています。
――へ~、それは知らなかったです。アンティーク雑貨はいつからお好きだったんですか?
五十嵐さん:本格的に集めはじめたのは、子どもが大きくなってからなので、30年くらい前からです。でもアンティーク自体は高校生の頃から好きだったかな。お店に来る高校生の子なんかが、少ないお小遣いの中で買えるものとしてよくポストカードを買っていきます。私も、アンティークにハマるとっかかりとしてポストカードを買っていたな~、なんて、昔のことを思い出してしまいますね。
――雑貨はどうやって集めたんですか?
五十嵐さん:雑貨が好きな人って、いろんなところに行って集めるんですよ(笑)。昔趣味で集めていたときは、日本だったら関東圏とか、海外ならイギリス、フランスなんかで、アンティークショップやマーケットに行って集めていました。
――今お店にあるものもそうやって仕入れているんですか?
五十嵐さん:直接イギリスに行って買ってきたものもあったけど、だいたい売れちゃったかな。今お店に仕入れているものの多くは、イギリス旅行で知り合った日本人ガイドさんにお願いしています。注文するときはあれこれ大量にお願いするんじゃなくて、ピンポイントでこれが欲しい、とお願いしています。実はスージークーパーをはじめとする洋食器って全部ネーミングがあるんです。だから、その名前で言ったほうが探してもらいやすいし、お客様にも売りやすいんですよね。
――仕入れのときにこだわっていることはありますか?
五十嵐さん:「使って楽しい、見ても楽しい」というものを仕入れるように心掛けています。やっぱり使えないと寂しいじゃないですか。お皿なんかは飾ってもひとつの絵みたいだから、見ても楽しめるところが魅力です。
――お店には手作りの商品もあるとお聞きしました。
五十嵐さん:ランチョンマットやコースター、トートバッグなんかがそうです。ランチョンマットやコースターに使っている布地には市販のものもあるけれど、アンティークの布地もあるんです。アンティークのものは意外といい値段がするから、小さい端切れでもなかなか捨てられなくて。ハンドメイドをはじめた当初は、捨てられない端切れをつなぎ合わせて、パッチワークにしていました。今お店にあるウエディングピローも、アンティークのレースを使っています。結婚式を控えた娘さんを持つ方に、「娘にあげたいんだけど、自分じゃ作れないから」と頼まれることが多いです。頼まれるといつも2、3個作るので、そこからお客様に選んでもらって、残りは販売しています。
――よく見ると陶芸品もありますね。
五十嵐さん:あれは主人の趣味です。家に置いておいても行き場がなくてもったいないから(笑)。いろいろ作ってもらって、少しだけ置いています。マグカップとか、コーヒーのドリッパー、カフェオレボウルなんかがありますよ。売ってるっていうか、半分飾ってるみたいな感じですね。
――そもそも五十嵐さんがお店をはじめたきっかけはなんだったんでしょう?
五十嵐さん:はじめは、友人の自宅ショップを10年くらい手伝っていたんです。そのお店はアンティークの古い雑貨から新しい雑貨まで取り扱っていて、パンを作って焼いて届けるみたいなこともしていました。でも私はそっちにはあまり興味がなくて。食べものを作るより、雑貨を売るほうが好きだと思って、そのあと何年かは、知り合いに頼まれて個人でハンドメイドしたものを譲って、材料費だけをもらっていました。それで、その頃友人と人情横丁に遊びに行ったとき、お店の方に「場所が空いているから、そこでお店をやったらいいんじゃないか」と誘っていただいたんです。
――では、急にお店をやることを決めたんですね。
五十嵐さん:まさか自分がお店を構えるなんて思っていませんでした。お店をはじめるための資金もなくて、あるものでやるしかなかったんです。だから、以前みたいに自宅に来てもらってお茶を飲みながらのスタイルのままでいいと思って、棚も自宅にあったものを使っているし、テーブルとか椅子も家にあったものです。あとはステンドグラスの窓も家から持ってきました。初めてお店の予定地を見に来たとき、シャッターを開けたら、まるで車庫みたいに手前の壁やドアがなかったんです。でもその分改装しやすくて。ステンドグラスもちょうどいいやと思って、そのままはめ込みました。やめるときどうしようかな(笑)
――外観のブルーも素敵ですね。
五十嵐さん:この青色は、イギリスのアンティークショップをイメージしています。好きな色を選んで、塗るのは主人にやってもらいました。あんまりお金をかけないで、手作り感覚で。イギリスには個性的な色をしたアンティークショップがたくさんあります。今後新潟にもアンティークショップが増えたらいいな、と思っています。
人情横丁にある素敵な雑貨屋さん「Caraway」。こじんまりとしていて、隠れ家のようなわくわく感がありました。五十嵐さんにお店をやっていて嬉しいことを訊ねると、「オープン以来ずっと売れなかったものが売れたときは、嬉しい反面、すごく寂しい気持ちにもなる」と語ってくれたのが印象的でした。店内に並ぶのは、どれも思い入れ深い、素敵な雑貨ばかりです。五十嵐さんのアンティークショップにみなさんもぜひ一度足を運んでみてくださいね。
Caraway
新潟市中央区本町通5番町本町中央市場内
025-229-2274
11:00-17:00
日・月・金曜休み