自然の力で作品を生み出すアーティスト「山口達己」さん。
カルチャー
2024.07.14
雨や波、植物の力を作品づくりに生かしている「山口達己」さん。古町のアトリエには、大学時代からの作品の数々が保管されています。「だいぶ整理したんですよ」とのことでしたが、その多さから山口さんがずっと制作意欲にあふれていたことが感じられました。貴重な作品づくりの様子を見せてもらいながら、いろいろとお話を聞いてきました。


山口 達己 Tatsumi Yamaguchi
1969年愛知県生まれ。東京藝術大学卒業後、美術系予備校の講師を務めながら創作活動を続ける。2012年に新潟市に拠点を移し、本格的に作家活動をスタート。2020年、リラックスとインスピレーションを感じられる作品を対象にした「Mellow Art Award 2020」で優秀賞を受賞。自然が好きで、秋はきのこ採りに出向く。
雨に打たせて絵を描く。独特の制作手法。
——山口さんが、新潟に拠点を移されるまでのことを教えてください。
山口さん:大学を卒業してから、20年ほど東京で美術系予備校の講師をしていました。働きながら創作活動をして、絵画や写真の個展も何度か開催しました。当時からブログを運営していたんですけど、それがある方の目に留まりましてね。その方が、私と写真家「相田諒二」さんの2人展を東京と新潟で開催してくれたんです。そこで妻と出会い、2012年に新潟に拠点を移しました。
——新潟にいらっしゃってから、作家一筋となられたんでしょうか?
山口さん:そうなりますね。妻のおかげで、好きなようにさせてもらっています。もともと絵を仕事にしたいと思っていましたし、新潟に来てからは絵画作家として活動してきたと言えばいいでしょうか。
——東京藝術大学をご卒業されました。小さい頃から、絵を描くのはお好きだったんでしょうか?
山口さん:好きだったかと言われると、どうだったかな(笑)。でも小学校3年生のときの通信簿は、図画工作がAでそれ以外ぜんぶ「C」だったんです。「これはまずい。親には見せられない」と思ったんですけど、「図画工作がAでよかったじゃない」と褒められまして。それを今でもよく覚えています。

——私は図画工作が苦手だったから、羨ましいです。
山口さん:両親とも、よく働く人でした。自宅が職場だったので、私は放っておかれたんですね。それで、ひとり遊びが得意になったんですよ。ぼーっと何かを眺めたり、いろいろ観察したりしていたので、自然に眼が鍛えられたのかもしれません。
——本格的に美術を学ばれたのは、大学ですか?
山口さん:高校で美術部に所属していました。「美大に行きたい」と思っていたら、後輩から「それなら予備校にいかないとダメです」と言われたので、予備校に通って勉強して。地理が好きだったけど数学は苦手だし、「こういう道しか自分にはないよな」って思っていたのかもしれないですね。
——大学時代の思い出を教えてください。
山口さん:3年生のとき「自然」をテーマに作品づくりに取り組みました。僕は「自然はものすごくパワーがあるものだ」と思っていたので、「だったら自然に作品をつくってもらおう」と考えたんですね。それから雨に絵を打たせて作品をつくるっていうのをやりはじめたんです。それが卒業制作で評価されて、以来、自然に作品をつくってもらっています。

関東にはない自然があふれる、新潟の暮らし。
——山口さんの作品のキーワードは、「自然」ですよね。
山口さん:もうずっと自然任せっていうか、自然の造形がいちばん素敵だと思い込んでいるんですね。最初は自然が作ったものに手を加えていたんですが、やっぱり人の手が加わってない方が美しいなと思って。ただ、ご覧になる方にとっては、漠然としすぎているかもしれません。もっと皆さんに観ていただきやすいかたちにしたいと思っているところです。
——最近はどんな作品をつくっているんですか?
山口さん:具体的なものを描いたりだとか、ご依頼を受けて作品をつくることに注力しています。最終的には、自然による作品づくりに戻るのかなという気はしています。季節のお花、紫陽花の花びらに色をつけてスタンプする作品もつくっています。

——新潟は東京よりも自然が豊かだと思います。
山口さん:そうですね。新潟ではコバンソウが咲いていたり、関東とは違う植物がけっこうありますよね。それが葉っぱを使った表現をしてみたいと思ったきっかけでもあります。海もありますから、作品を波にゆだねることもしましたよ。それから雪に絵の具を晒してみたりもしましたね。雪が溶けると、また違った風合いになるのがおもしろくて。
——アトリエには相当数の作品がありますね。制作意欲が失われることはなかったんですか?
山口さん:やりたいことが次々と頭に浮かぶんですよね。アイディアが尽きて困ることはまったくないです。

自然の尊さを作品に込めて。
——個展の開催もされていると思います。近々、新潟でのご予定はありませんか?
山口さん:今月から新潟を離れて、実家のある愛知に行こうと思っているんです。先日、対馬に滞在していたんですけど、宿の主人からいくつも依頼がありまして。別の場所に拠点を移すと、また違う視点で作品を生み出せるのかなと思っているんです。
——タイミングがちょっとずれていたら、お会いできなかったかもしれないんですね。
山口さん:しばらく新潟に拠点を構えていましたが、これからはいろいろな場所で作品をつくりたいですね。もっと大きなサイズの作品もつくりたいですし。人間ではできないものを自然が作ってくれると思うんです。波の大きさなんて、表現できないくらいのサイズですよね。それから風の力もすごいですね。人体の動きには限度がありますけど、風の力を使えばものすごく巨大な作品が瞬時にできあがるかもしれません。きっとおもしろいと思います。

——山口さんが自然の力に吸い寄せられるのはどうしてなんでしょうね。
山口さん:未知のパワーがあるからなんでしょうね。対馬でもその力を強く感じました。やっぱり私は自然をテーマに作品をつくっていきたいと改めて思いました。
——作品にはどんなメッセージを込めているんですか?
山口さん:自然の尊さみたいなものを伝えるアプローチができていたらいいなと思います。そういうメッセージが、皆さんにすんなりと届くような作品をつくりたいです。

山口 達己
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