自然のなかで過ごす時間を通して
その魅力を伝える「里山ハーモニー」
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2026.06.30
加茂市七谷地区の里山に「みのりの家」という名の民泊施設があり、里山の魅力を体験できるイベントや多世代の居場所の拠点になっています。こちらを運営しているのが「里山ハーモニー」の代表を務める樋宮さん。雨の降る里山を眺めながら、「里山ハーモニー」の取り組み、自然と人への思いについて聞いてきました。
樋宮 美希
Miki Hinomiya(里山ハーモニー)
1976年新潟市中央区生まれ。里山ハーモニー代表。大学や大学院で学び、2002年に新潟へ帰って特別支援学校で働く。2021年より「里山ハーモニー」を立ち上げ、自然体験を中心とした多世代の居場所をはじめ多岐にわたる活動を展開している。「Miraha(ミラハ)」の名前で音楽活動もおこなう。動物と触れ合うことが好き。
音楽大学出身の女性が
「里山ハーモニー」をはじめた理由。
――樋宮さんはシンガーソングライターとして、音楽活動もされているんですよね。
樋宮さん:「Miraha」という名でピアノの弾き語りをメインに音楽活動をしていますが、そちらは仕事ではなく趣味として続けているんです。作曲や演奏も頼まれたらやるというスタンスですね。今はさざなみドラムを演奏しながら自然のなかで歌うことにハマっています。自然や生命をテーマにしていて、なかでも水と大地を歌った「いのちのバトン」は代表曲になっています。
――自然のなかで歌うのって。気持ち良さそうですね。音楽は昔から好きだったんですか?
樋宮さん:7歳からピアノを習いはじめて、その頃から作曲をしていました。当時はカセットテープに吹き込んでいたんですけど、中学生になってからは楽譜に起こすようになったんです。
――7歳で作曲をしていたとは(笑)。その後もずっと音楽を続けてきたんでしょうか?
樋宮さん:音大に進学して音楽心理学を学びました。高齢者や障がい者の施設を回って、ピアノの演奏をしたりハーモニーを一緒に楽しんだりするうちに、もっと関わっていきたいと思うようになり、大学院を修了した後に再度大学で障がい児教育を学び、卒業してからは新潟へ戻って特別支援学校の先生になりました。
――学校ではどんなふうに子ども達と触れ合っていたんでしょう?
樋宮さん:歌を歌いながら野遊びをするんです。ただ、学校ではいろいろと制約があるので、もっと自由に活動をしたいと思って学校を離れ、自宅を開放して「里山ハーモニー」をはじめました。最初は少人数の親子と梅干しづくりや山歩き体験をおこなっていました。その後は何度か移転して、現在はこちらの「みのりの家」と田上の「奏の家」を拠点に活動しています。
――「みのりの家」って隠れ家みたいですね。
樋宮さん:以前は別荘として使われていた建物で、裏には8ヘクタールの山林があります。新潟日報に掲載された記事でヤギを7頭飼っていることを知ったこちらのオーナーが、山もあって放牧できるし、ここで活動をしたらどうかと声を掛けてくださったんです。現在では「里山ハーモニー」の民泊施設や体験施設として利用しています。
――そうだったんですね。「奏の家」はどちらかといえば町のなかにありますよね。
樋宮さん:あちらは内科医院があった古民家を改装して、人が集う交流スペースや、夢を叶えるお手伝いをするための場所にしました。イベントスペースのほか、子ども食堂、多世代の居場所もおこなっています。

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「みのりの家」のきっかけになった
7頭のヤギはどうして飼ったのか。
――ところで先ほどのお話にもありましたが、樋宮さんはどうしてヤギを飼うことになったんでしょうか?
樋宮さん:小学2年生の娘が「将来はアイスクリーム屋さんをやりたい」と言い出したんです。せっかくなのでアイスクリームに使う卵や乳は自然素材にこだわりたくて、烏骨鶏を飼うことにしたのですが、乳牛を飼うのはさすがに難しいので、代わりにヤギを飼うことにしました。
――ヤギは一体どこから?
樋宮さん:閉園を決めた牧場から、肉になる予定のヤギを7頭保護してきました。ところが7頭ものヤギを飼育するスペースを用意していなかったので、その日のうちにあちこち探し回り、ようやく1軒見つかったので小屋をリノベーションして使わせてもらったんです。
――アイスクリームはつくることができたんでしょうか?
樋宮さん:家庭でヤギの乳を使ったチーズやプリンをつくったら娘はそれで満足してしまったのか、それっきり「アイスクリーム屋さんになりたい」とは言なくなり、ヤギのお世話からもフェードアウトしていきました(笑)。今はもっぱら私と主人がお世話をしています。夏は生えている草を食べてくれるけど、草のない冬はエサ代が大変なんですよ。そこで5頭は草刈り隊員として農家に引き取っていただき、現在は2頭が残っています。
――アイスクリーム屋さんはひとまず置いといて、卵や乳は自給自足できるんですもんね(笑)。ほかにも自給自足していることはあるんでしょうか?
樋宮さん:山間にある使われていない田んぼを借りて、佐渡で暮らしていたときに学んだ米づくりをしています。沢の水が真っ先に入ってくる棚田になっているので、できるだけ自然な環境にしようとビオトープを意識した田んぼになっているんです。「里山ハーモニー」の農業体験でも田植えや稲刈りに参加していただいています。

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やりたければやってもいいし、
何もせずにのんびりしてもよい。
――こちらの「みのりの家」は宿泊することもできるんですね。
樋宮さん:里山の自然を満喫できる、一棟貸しの民泊施設になっています。季節や天候によってはホタルや星空を目にすることができますし、鳥のさえずりや虫の声を聴くこともできるんです。裏山にある竹を使った遊具で遊んでいただくこともできます。四季折々の自然に癒されていただけたら嬉しいですね。
――自然のなかでリフレッシュできると。体験施設としても使われているんですよね。
樋宮さん:地元のおばあちゃんから、暮らしの知恵を教わるイベントを開催しています。教わる側はもちろん、教えるおばあちゃんも自分の知識が役に立つことを喜んでくれるんです。
――とても素晴らしいことだと思います。「わくわくスクール」もおこなっているんでしょう?
樋宮さん:4月~11月の毎月1回、日曜に開催しています。子どもだけではなく、仕事に追われる日常を過ごしている大人にも参加していただき、自然のなかでリフレッシュしていただきたいですね。
――どんな体験をするんですか?
樋宮さん:里山のなかで過ごしてもらえれば、特に決められたことをやる必要はないんです。本人の気持ちを大切にしたいので、やりたいことがあったらチャレンジしてもらってもいいし、何もせずにまったり過ごしてもらっても構いません。ただ、ご飯の支度はお手伝いしてもらって、みんなで美味しく食べることにしているんです。夏は流しそうめん、秋は手造りアースオーブンで焼いたピザを楽しみます。
――里山で過ごすこと自体が体験なんですね。子ども達にとっては夏休みの思い出づくりにも良さそう。
樋宮さん:夏休みには1泊2日のお泊まり体験もご用意しています。川遊びや竹いかだ体験、木工クラフト製作、星空観察、たき火、花火と夏休みの思い出づくりにはぴったりの体験になっています。

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佐渡での暮らしで気づいた
目の前にある豊かさ。
――「佐渡で農業を学んだ」というお話がありましたが。
樋宮さん:娘達が佐渡に離島留学したので、私も佐渡で暮らしていた期間があるんですよ。その期間は私の価値観を大きく変えてくれるものでした。神様がくれたプレゼントだと思っています。
――それはすごい(笑)。どのように変わったんですか?
樋宮さん:それまでは家庭のことや動物の世話に追われながら生活していたんですけど、佐渡では何もやることがなかったので、田んぼで農作業をしたり、地元の方の手伝いをして過ごしました。すると今までは気づかなかった、目の前にある豊かさに気づくことができたんです。
――「豊かさ」というと?
樋宮さん:地元の方から規格外の魚や野菜をいただくんですよ。申し訳ないからお酒やお菓子を買ってお返ししようとすると、「お礼がほしくてやっているわけじゃない」といって怒られるんです。
――ほうほう。
樋宮さん:「ギフトエコノミー」とでもいいますか……お金を介さずに、相手から受けた恩は手伝いで返すんですよ。野菜をもらう代わりに得意なものづくりでお返ししたり、魚をもらう代わりに力仕事を手伝ったり。そうしたシェアの精神は「みのりの家」がある加茂の七谷集落にも似ている気がします。
――自然も心も豊かな土地なんですね。最後に、樋宮さんが思う自然の魅力を教えてください。
樋宮さん:自営業の両親はお休みの日になると、私を山や川へ連れて行ってくれてたんです。自然のなかではふだん喧嘩の多い両親も仲良く過ごしていたし、私自身もありのままを受け入れてもらえるような気持ちになれました。自然には人を素直にする力があると思いますし、どこか音楽に似た力があるように思うんです。

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