日々、パンと向き合う職人がいる、
十日町のパン屋さん「BAUMRINGE」
食べる
2026.06.29
十日町市妻有にあるパン屋さん「BAUMRINGE(バウムリンゲ)」。甘い菓子パンから惣菜パン、ハード系のパンまで、様々な種類のパンが楽しめるこちらのお店には、毎日たくさんのお客さんが訪れます。店主の樋口さんは、実は「パネットーネ」というパンの日本大会で優勝し、世界大会への出場も決めている凄腕の職人さん。そんな樋口さんのこれまでのことや、「BAUMRINGE」のこと、今力を入れているパネットーネのことなど、いろいろお話を聞いてきました。
樋口 達也
Tatsuya Higuchi(BAUMRINGE)
1979年生まれ津南町出身。高校卒業後、東京の専門学校で製パンを学ぶ。その後は埼玉県の有名店「デイジイ」で20年以上働く。新潟に戻り2020年に「BAUMRINGE」をオープンする。ロードバイクと登山が好き。
小さな「好き」から進んだパンの道。
師匠のもとで働き続けた、21年。
――まずは樋口さんがパン作りをはじめたきっかけを教えてください。
樋口さん:昔、地元にある「松屋」っていうパン屋さんが好きで、そこのパンを食べるとすごく幸せな気持ちになれたんです。それで、将来は人を喜ばせる仕事をしたいと思っていたのもあって、パンづくりの道を目指しました。進学した東京の専門学校で師匠となる人に出会ったのも大きかったです。
――師匠はどんな方だったんでしょう。
樋口さん:専門学校の外部講師として年に数回、僕たちにパン作りを教えてくれていた人で、厳しかったのですがとても面倒見のいい人でした。それで「この人のもとで働きたい!」って思うようになって、卒業後、師匠がやっている埼玉の「デイジイ」というパン屋さんで働くことにしました。
――当時のことで、印象に残っていることはありますか?
樋口さん:学校で教えてもらっているときとは違う、「商品として売るためのパン」を作る大変さをいろいろ教えてもらいました。2年目くらいのときに、師匠に直接パンを教えてもらえる機会があったんですけど、今思えばこれが僕の人生のターニングポイントだったと思います。朝から晩までずっと一緒に過ごしてパン作りを教わりました。よく怒られましたけど、仕事が終わった後はご飯に連れて行ってくれたりもして。「お前には家一軒分くらい美味しいものを食わせた」って言われるくらいです(笑)
――樋口さんはそのお店で21年も働かれたんですよね。
樋口さん:自分のお店を出したいっていう思いはずっとあったんですけど、師匠からは「お前は仕事に熱中しすぎるから、結婚するまでは独立しないほうがいい」って言われて(笑)。長く働くうちに後輩が増えてきて、そしたらお店にとっての自分の存在価値を考えるようになったんです。「自分はパンの技術を高めてお店に必要とされる人になろう」と決めて、講習会に参加したり、他のパン屋さんに行って勉強したりしました。
――そんな樋口さんは2020年に独立されました。ということは、ご結婚をされて……?
樋口さん:そうですね(笑)、それもあったのですが、「デイジイ」で働いてきて、ひとつ区切りがついたと感じたタイミングでもありました。


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日常の中で当たり前にある、
そんなパン屋さんを目指して。
――「BAUMRINGE」では、どんなパンが楽しめるのでしょう。
樋口さん:菓子パンからハード系のパンまで、オールジャンルのパンを取り揃えています。お客さんの日常に寄り添うパン屋さんにしたいと思っているので、ジャンルにとらわれず、いろんなパンを作っています。
――樋口さんおすすめのパンを教えてください。
樋口さん:どれもおすすめなんですが、こだわって作っているのは食パンですね。これは自分でも美味しいと思っています。新潟にはコシヒカリがありますよね。みずみずしさと弾力が特徴のコシヒカリを食パンで表現してみたくて、使う小麦粉には特にこだわっています。うちの食パンはすごく柔らかくてもちもちで、しかも、そのもちもち感は次の日まで楽しめるんですよ。
――お話を聞いているだけで食べたくなります。他にも、樋口さんがこだわって作っているパンがあるそうですね。
樋口さん:師匠から譲り受けた「クロワッサンBC」というパンですね。本家の「デイジイ」の看板商品で、クロワッサン生地にアーモンドクリームを包んだパンなんです。この地域の皆さんに受け入れてもらえるか不安だったんですが、なんとか好評をいただいています。
――ところで、樋口さんは今年、とあるパンの大会に出られたと聞きました。
樋口さん:「パネットーネ」というミラノ発祥のパンの日本大会に出て、優勝することができました。その前にも何度かパンの大会に出ていて、イタリアで開催された大会に出たとき現地のパネットーネの美味しさに衝撃を受けて。そこから、パネットーネの大会に出るようになったんです。最初は全然うまくいかなくて、だいぶ苦労したんです。
――具体的にはどんなところに難しさを感じたのでしょう。
樋口さん:まず、パネットーネは自家培養種(天然酵母)だけを使うっていうのが難しくて。この酵母の管理がすごく難しいんですよ、イタリアでは「子育てよりも難しい」って言われるくらい。酵母の扱いには、最初の1年はとても苦労しましたね。でも今年、大会で優勝できて、自分のパネットーネの方向性が間違っていなかったんだって実感することができました。11月に開催される世界大会に向けて、もっといいパネットーネが焼けるように日々奮闘中です。


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パンに向き合い、突き詰める。
これからも、そんな職人でありたい。
――20年以上パン作りを続けられていて、今もなお高みを目指している樋口さんですが、努力を続けられる秘訣はどこにあるのでしょう。
樋口さん:僕は部活のような感覚で仕事をしているんですよ。部活って試合があるからこそ、それに向けて練習を頑張れるじゃないですか。それと同じで、大会という目標に向かって準備して、練習していて。そのほうがモチベーションを高く維持できると思うんです。修業時代は朝5時から動き出して11時くらいまでやっていたこともあったので、部活よりもきつかったですけどね(笑)
――とても前向きで、こちらも励まされます。
樋口さん:もちろん、落ち込むこともあります。パンがあまり売れない日は「やっぱりうちはダメか……」って思ったり(笑)。でも、仕事を楽しまないと、いいものは作れないと思うんです。ゼロから何かを作っていて苦しいこともありますけど、「できそう」って思ったときは本当に楽しいし、自分が仕事を楽しんでいいものを作れば、お客さんが「美味しい」って喜んでくれる。それがいちばん嬉しいし、そのためにも楽しんでパンを作ろうって思うんです。
――お店は7年目を迎えます。これからの「BAUMRINGE」をどうしていきたいと考えていらっしゃいますか?
樋口さん:自分の作ったものに責任を持ちたいと思っているので、これ以上の店舗展開は考えていないんです。いつも来てくれる地元のお客さまに飽きられることなく、地域に根ざした、そこに当たり前にあるようなパン屋さんにしていけたらいいなと思っています。
――素敵です。樋口さんご自身は、これからどうなりたいですか?
樋口さん:僕はずっと職人でありたいなと思っています。パネットーネもそうですが、やると決めたらとことん突き詰めていきたいと思いますし、20年以上パンを作っていても、まだまだできることがたくさんあるなと感じています。もっと自分をアップデートしていきたいっていう思いは変わっていないですね。この店の「BAUMRINGE」はドイツ語で年輪という意味をもつ言葉です。木の年輪みたいに、年を重ねることにお店も成長できたらいいな、という思いを込めています。
――最後にひとこと、お願いします!
樋口さん:一緒にパンを作ってくれる職人、募集中です!
――今日はありがとうございました! 11月の世界大会も頑張ってください!


BAUMRINGE
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