阿賀野市の物語を包む、
シュークリームのお店「chouette」
食べる
2026.02.23
阿賀野市にオープンしたシュークリームのお店「chouette(シュエット)」。注文を受けてからクリームを詰めるそうですが、その理由は、カリカリの生地とトロトロのクリームの組み合わせの魅力を最大限に引き出すため。甘いものと阿賀野市が大好きだという店主の鈴木さんに、いろいろとお話を聞いてきました。
鈴木 安佳里
Akari Suzuki(chouette)
1988年石川県生まれ。高校卒業後に事務職に就く。その後、仕事を辞めて製菓の専門学校で学び、石川県のスイーツショップ「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」で経験を積む。結婚を機に2016年に阿賀野市に転居。出産・育児期間を経て、食品会社や税理士事務所に勤務。2026年にシュークリームのお店「chouette」をオープン。趣味は、お母さんの影響で高校時代にはじめたソフトバレー。
甘いものが好きすぎる。
「たくさん食べたい」ピュアな欲。
――鈴木さんは一度、一般企業に就職しから、改めて製菓学校に入学されたそうですね。
鈴木さん:商業高校に通っていて、就職するのが一般的だったんです。親も「専門学校へ進学するのはダメだ」と(笑)。高校卒業後は食品卸会社の事務職に就いて、それから自分でお金を貯めて、製菓の学校に入学しました。
――どうしても製菓の勉強をしたかったんですね。
鈴木さん:ただ甘いものが好きすぎて(笑)。自分でお菓子を作ったら、たくさん食べられると思ったからなんです。手作りであれば、ホールケーキだって丸ごと自分のものですよ(笑)。でもお菓子づくりをしているうちに、「もっと、もっと上手になりたい」と思うようになるんですよね。その気持ちが今もずっと続いているんです。
――最初は、自分で食べるため、でしたか(笑)
鈴木さん:今もそうですよ。自分が食べたいものを、自分の好きなように作りたい。それがいちばんのモチベーションです。
――ところで、通っていた専門学校というのは?
鈴木さん:パティシエの辻口博啓さんが、石川県に製菓専門学校を新設されて。私はその学校の1期生なんです。卒業後は「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」という、辻口シェフのお店でお仕事をさせてもらいました。
――そのお店の名前、聞いたことがあるような。
鈴木さん:金沢市の県立美術館内や和倉温泉、金沢駅の中など、観光地に店舗があります。私が勤めていたのは、ちょうど北陸新幹線が石川県に開通した頃だったので、とっても忙しくて。あの頃の記憶があまりないくらいです(笑)

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今がそのとき。
見つけた絶好の場所。
――そして、阿賀野市ご出身の方と結婚されて、新潟にいらっしゃったんですよね。
鈴木さん:こっちに来てからは地元の食品会社さんで商品開発に携わらせてもらいました。製菓の理論をもう一度勉強し直すつもりで、いろいろと試してみて。甘いものが好きだから、自宅でも商品開発をしていました。
――なんと、「セルフ商品開発」をするほどとは(笑)
鈴木さん:それと、税理士事務所さんでも働かせてもらったんですよね。子育て中だったので、土日に休めるところはないかな、という考えがあって。地元の食品会社さんからは、たまたま声をかけてもらって商品開発の経験をさせていただきましたし、税理士事務所さんは、偶然求人が出ていたご縁でお世話になって。どちらもとても運が良かったと思っています。
――税理士の知識って、お店を経営するのに役立ちそうです。やっぱり、いつかご自身のお店を持とうと思っていたんですね。
鈴木さん:出産してすぐの頃は「とても無理だな」と思っていました。夫が元板前なので、「老後にでも、ふたりでお店を持てたらいいね」なんて話はしていたかな。でも税理士事務所さんでいろいろ勉強させてもらって、「今やるしかない」と思ったんですよ。
――いったい何が起きたんでしょう?
鈴木さん:「お店を構えるなら、ここだ!」という絶好の場所を見つけたんです。理想的な広さで、すぐ近くが新興住宅地で。土地のオーナーさんに「この場所を使わせてもらえないでしょうか」とお手紙を書いたら、快く「いいですよ」とお返事をもらえて。それから話がグイッと進んだんですよね。オーナーさんはとってもいい方。今もよくしていただいています。
――いい出会いに恵まれたようですね。
鈴木さん:店舗のコンテナを手がけてくれた会社の方にもお世話になりました。どうもこの場所柄、いろいろな申請が必要だったみたいなんですが、とても親身に話を聞いてくださって。おかげさまで、思い描いていたお店ができあがりました。

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阿賀野市の物語を詰め込んだ、
シュークリーム専門店。
――「シュークリームのお店」にしたのには、どんなお考えからでしょう?
鈴木さん:辻口シェフは、「物語を売ろう」とよくお話されていました。阿賀野市(旧安田町)は酪農発祥の地です。この地域の食材を取り入れようと決めていたので、「神田酪農」さんの美味しい牛乳を使いたくって。でも調理スペースが広くないので、あれもこれもといろいろなお菓子を作ることは難しい。それであれば、「シュークリームの専門店にしよう」と思ったんです。シュークリームに美味しい牛乳は欠かせませんから。それに私、シュークリームも大好きなので。もう飲めるくらいに好きです(笑)
――ちょっとわかります(笑)。でもシュークリームって、いろいろなタイプがありますよね。「chouette」さんのはサクサク系なのかな、という気がしますが。
鈴木さん:「出来立てをお出しすること」を大切にしています。シュークリームのいちばんの醍醐味は、カリカリの生地とトロトロのクリームの組み合わせ。それをぜひ召し上がっていただきたいので、クリームは詰めたての状態でお渡ししています。
――詰めたてのクリームとは、気になります。
鈴木さん:バリバリ食感の「BARIシュー」、ザクザク食感の「ZAKUシュー」の他にも、「専門店」なので、いろいろな種類があるといいだろう、とショーケースには季節のフルーツなどを使ったシュークリームも揃えているんですよ。
――大のスイーツ好きという鈴木さんだから、「こうしたい」って考えがたくさんあったのでは?
鈴木さん:コンセプトのひとつは「地産地消」。辻口シェフの「物語を売る」という考えが、いつも頭にありました。阿賀野市で暮らしていると、農家さんとのつながりがたくさん生まれるんですよね。「ここで作られている素晴らしい食材をなるべく使おう」と考えていました。私も阿賀野市の物語を売りたいな、って。
――例えばどんな食材を使っているんでしょう?
鈴木さん:つい先日までは、地元のさつまいもを使った「スイートポテトブリュレシュー」を並べていました。これからは苺ですよね。阿賀野市産の越後姫を丸ごと入れたブリュレシューを作ろうと思っています。他にも、ブルーベリー、メロン、ハチミツ、美味しいものはたくさんあります。
――クリームはどんな仕上がりにしているんですか?
鈴木さん:「chouette」のカスタードクリームは、ねっとり系です。黄身を多めに入れています。「ブリュレシュー」には、さらに多く卵黄を加えていて、味と食感に違いを出しています。たっぷり卵黄が入っていて、炊くのはすごく大変。慎重に作業しないと炒り卵になっちゃいます。
――作り立てをご用意されるということは、何回も、何回もシューを焼くわけですか?
鈴木さん:シューが焼き上がるまでに、2時間かかるんので、「ずっと焼いている」感じです。そうしないとすぐに売り切れてしまうので。

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想像を超えた反響と、
地元愛。
――お店は年明けにオープンされました。反響はいかがですか?
鈴木さん:1日100個くらい売れたらいいかな、という想定だったんですが……。平日は150個、土曜日で250個を用意しているものの、すぐに完売してしまって。たくさんのお客さまに来ていただいているのに、十分に用意できずに、ほんとうに申し訳です。なにぶん、お店の規模にも限りがありますもので。
――「chouette」さんみたいなお店って、あるようでないですもんね。人気の理由がわかるような気がしますよ。
鈴木さん:こんなに反響をいただくなんて思ってもいませんでした。当初は、小学生が小銭を握りしめてシュークリームをひとつだけ買いに来てくれる、みたいなお店を想像していたんです。地域に密着しつつ、市外のみなさんにも、阿賀野市の魅力を伝えられるお店にしたいです。
――鈴木さんの言葉の節々から、阿賀野市愛が伝わってきます。
鈴木さん:出会う人、出会う人、素敵な人ばかりで。阿賀野市に来たばかりの頃、ソフトバレーのチームに入って、最初の交流が生まれました。お店をはじめるときも、大勢の方が応援してくれたんですよね。もう、みんな大好きです。
――その気持ちが、お菓子のアイディアにもつながっているんでしょうね。
鈴木さん:「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」では、石川県のものを積極的に取り入れたケーキ作りをしていました。それが観光でいらっしゃる方にとても評判で、「地場の素材の力」を強く感じていたんです。阿賀野市にも魅力的な素材がたくさんあるのだから、同じようなことが絶対にできる、と思っています。

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