じっくり火入れし、美味しさを引き出す。農家が作る焼き芋、「芋屋 万七」。
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2022.12.24
町中で焼き芋のいい香りがすると、ついつい振り向いてしまいます。今回ご紹介するのは、聖籠町の農家さんが営んでいる焼き芋販売店「芋屋 万七(いもや まんしち)」。取材中、常連のお客さんはもちろん、同僚にすすめられて買いに来たという方、お孫さんを連れたおじいちゃんおばあちゃんなど、たくさんの方が「万七」さんにやってきました。お客さんと店主の高松さんの掛け合いをそばで見ていたら、心が焼き芋のようにほっこりしました。

芋屋 万七
高松 俊昭 Toshiaki Takamatsu
1972年聖籠町生まれ。岐阜の航空専門学校を卒業後、新潟に戻りサラリーマンを経験。30代半ばで農業をはじめる。5年ほど前から自家栽培したさつまいもを焼き芋にして販売するようになり、3年前に「芋屋 万七」の名称になる。

住宅街に響く移動販売の音。いまひとつの反響から状況が好転。
——高松さんは農家さんでもあるんですよね?
高松さん:実家が聖籠の農家なんです。農家になるつもりはまったくなかったんですけど、社会に出てからずっと勤め人としてあくせく働いてきたんで、ちょっとゆっくりしたくて。それで35歳くらいのときに農業をはじめました。
——農業をはじめた頃、どんな気持ちだったか覚えていますか?
高松さん:「このままじゃ先はないかもしれない」って危機感がありましたね。しばらく米作だけをやっていたんですけど、少しでも状況を変えようと思って、5年前くらいからとうもろこしやネギ、さつまいもなんかも作るようになったんです。

——じゃあ、そのときのさつまいもの生産がきっかけで焼き芋屋さんをはじめられたんでしょうか?
高松さん:最初は自家栽培した野菜を直売所で売っていたんです。そこで販売されていた焼き芋を、店長さんが「美味しいから食べてみて」とすすめてくれたことがあって。それがびっくりするほど美味しかったんですよね。家でよく食べていたホクホクした焼き芋と違って、しっとりしていて自分好みでした。それで自分のところで採れたさつまいもを焼き芋にして売ってみようと思ったんです。生のさつまいもの倍くらいの値段で売れるし、お客さんも喜んでくれるかな、と思って。
——お店で売っている焼き芋ってひと味違いますもんね。
高松さん:移動販売からはじめて、最初の半月くらいは「い〜しや〜きいも〜」って音声をスピーカーから流しながら住宅街をまわっていたんですけど、誰も買ってくれませんでした。カーテンを閉められちゃったこともありましたよ(苦笑)。「ダメかな」と思っていたんですけど、妻のママ友から「新発田市役所の中だったらいいんじゃない」と言われて。試しに出店してみたらお客さんにとても喜んでもらえたんですよね。それから毎週木曜日、新発田市役所内の「ヨリネスしばた 札の辻ラウンジ」に出店するようになったんです。
——ママ友さんのひとことで状況が一転したんですね。
高松さん:すごく評判がよくて、それまでお客さんの反応が薄かったのが嘘みたいでした。今は聖籠の「さぶーん」や新発田のコメリ、TSUTAYA、たまに東区のコメリでも出店させてもらっています。

農家さんが栽培した美味しいさつまいもで作る、焼き芋。
——今も自家栽培のさつまいもを焼き芋にされているんですか?
高松さん:自分で作ったさつまいもがほとんどですね。でも生産量に波があるし、美味しい芋なら仕入れてもいいと思っているので、仲間の農家さんから買うこともあります。さつまいもが不作だと「自分ちの芋じゃないとなぁ」って、出店しないこともあったんですけど、それだと商売として成り立ちませんからね。「自分で作った芋じゃないとダメ」ってこだわりすぎないようにしているんです。
——生産量や品質は年によって変わりますもんね。
高松さん:今年は自分のところの芋をだいぶ出せると思いますよ。「べにはるか」はうちの芋だけでいけるかな。さつまいもって10度以下で保存するとダメになっちゃうんですよ。けっこう保存が面倒なので、うちでは専用の保存庫で大切に芋を保管しています。

——今日は「シルクスイート」「塩べにはるか」「安納芋」の3種類がありますよね。他の種類も販売されているんでしょうか。
高松さん:他に「べにはるか」「ふくむらさき」もあって、5種類の中からその日の状況に合わせて3種類を出すようにしています。
——「塩べにはるか」というのは?
高松さん:「べにはるか」を洗って塩水に浸けておくんです。そうすると甘みが増すんですよ。

家では出せない味。お店の焼き芋はどうやってできている?
——自宅で焼き芋を作ってもお店のような味にはなりませんよね。いったいどうやって作っているんですか?
高松さん:70度〜80度の釜でじんわり1時間〜1時間半くらい焼くんです。今使っている釜は京都の工房のものなんですけど、これで仕上げると味がいいんですよね。もう1台あるんだけど、それよりこっちの釜で焼いた方がふっくらするんです。
——やっぱり農家さんがやっているお店だから、味の保証がされているんでしょうね。
高松さん:美味しい芋だけを選んで使っているつもりですが、さつまいもは加工品じゃないですからね。中にはハズレのものもあるでしょうから、本当は1本1本味見して美味しい芋だけ売りたいくらいです(笑)
——さて最後に、目指していることがあれば教えてください。
高松さん:今はカバーしきれていない品種も栽培して、ゆくゆくは全部自分たちの芋で作った焼き芋をお渡しできるようにしたいと思っています。

芋屋 万七
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