住宅街にひっそりと灯る
コーヒーとお酒、甘味の店「オルテガ」
カフェ
2026.04.10
新潟市中央区学校町にオープンした「オルテガ」。出張コーヒーショップ「珈琲オルテガ」として活動していた坂井さんが、準備を重ねてはじめたお店です。出張スタイルのコーヒーショップから実店舗へ。坂井さんがこの場所で実現したかったことについて、お話を聞きました。
坂井 俊平
Shunpei Sakai(オルテガ)
1992年新発田市生まれ。千葉の大学を卒業後、旅行会社に就職。初任地の札幌で8年間暮らす。千葉に転勤し2年間働いた後、2023年に新潟へ戻り出張スタイルのコーヒーショップ「珈琲オルテガ」をスタート。2026年3月に実店舗「オルテガ」をオープン。
惹きつけられたエリア、
学校町で店舗をオープン。
――以前「オルテガ」さんにThingsに登場いただいたのは、2024年の8月でした。あれからどんなことがあって、この度、お店をオープンすることになったのか教えてください。
坂井さん:以前から、いつかはお店を構えることを目標にしていました。2023年から出張コーヒーショップの出店を続けるうちに、いろいろな出会いに恵まれたんですよね。ありがたいことにオープンを後押ししてくれる同業者さんや、「珈琲オルテガ」に足を運んでくださるお客さまがたくさんいらして。自然と「自分の城を構えたい」と思うようになりました。
――確か前回のインタビューでは、お店を出すとしたら新潟市か北海道か、みたいな話をされていたような気がします。
坂井さん:今でも北海道と新潟の2拠点生活は諦めていません(笑)。当時、ぼんやり考えていたのは、古町周辺で営業することだったんですけど、最終的に学校町に落ち着きました。
――どうして学校町を選んだんですか?
坂井さん:今の店舗とは別の物件を見せていただく機会があって、そのとき初めて「学校町」を知りました。静かで穏やかな空気が流れているし、住んでいる皆さんの雰囲気もとても良くて。結局、最初に目星をつけていた店舗とは別の場所を探さなくてはならなくなったんですけど、もう他のエリアは考えられなかったんです。それに「あ、いよいよ具体的に動き出すんだな」ってときに、勤めていた会社で関わっていた事業が終了することになったんですよね。会社を辞めるタイミングで、新たに店舗営業を開始するのも悪くないかなって。
――「オルテガ」さんのお店は、住宅街に囲まれていて、ちょっと意外な場所にあるな、と思いました。
坂井さん:いろいろな方から「よく、この場所を選びましたね」とびっくりされます(笑)。でもそもそも、ひっそりとお店を構えたかったんですよ。周りの住宅に溶け込みながら、穏やかに営業できたらいいな、と思ってました。
――目立つ場所ではないですけど、建物全体の雰囲気も内装もとても素敵です。
坂井さん:ありがとうございます。一丁前なことを言うようですけど、「この感じがいい」と個人的には思っていて。飲食店に限らず、お店ってそれぞれが持つ「空気感」ってありますよね。「『オルテガ』はこういうお店だよ」と伝えたくて、SNSでもしっとりとした感じというか、暗めの雰囲気の写真を発信しています。しかも分かりにくい場所にあるので、お客さまが来店しやすいかというと、たぶんそうじゃないです。ただそのハードルを超えてきていただいた分、ゆったりと豊かな時間を過ごせる空間を用意しているつもりです。

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深煎りコーヒー、蒸留酒、甘味。
しっとり、落ち着ける贅沢。
――開店前からお店のイメージを持っていたと思います。
坂井さん:極端な話をすると「コーヒー店という枠に収めないようにしよう」と思っていました。それで「珈琲」の冠は外して「オルテガ」だけにしました。その理由は、コーヒーの他にも、空間と時間を楽しめるお店にしたいと思ったから。私、喫茶店やカフェが好きで、いろいろ巡ってきたんですけど、今は営業していないとか遠方だからとか、もう行けなくなったお店がいくつもあるんですよね。ふとしたときに、そういうお店を思い出します。それと同じように、来てくださる方の記憶の片隅に「オルテガ」が残っていてくれたらいいな、と思うんです。コーヒーはあくまでツール。届けたいのは、ここで過ごす時間です。
――以前は、お酒も楽しめるお店にしたい、とお話しされていましたよね。
坂井さん:その考えは、変わっていません。豊かな時間を過ごしてもらうために、お酒はコーヒーと同じくらい大事なものだと思っています。揃えているのは、ウイスキーやラム、ブランデーなどの蒸留酒。「オルテガ」の深煎りコーヒーのように少しずつ味わうには、ぴったりです。
――スイーツもあるんですよね。
坂井さん:パティシエではないので、できるものは数種類だけなんですけれども。ブランデーを効かせたチョコレートテリーヌ、酸味が効いたチーズテリーヌが今のところの定番です。コーヒーとお酒に添えるものとして、甘味はもってこいの一皿です。自分もコーヒーだけでも楽しめるタイプですけど、スイーツがあったらついつい頼んじゃいますし。

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思い出の原風景。
メロンソーダや軽食も登場?!
――初日の営業をされて、どんなふうに思いました?
坂井さん:感慨深くなるだろうな、と思いきや、すぐに「明日もある」って切り替えなくちゃいけなかったですね(笑)
――まずは日々確実に営業することを考えているわけですね。
坂井さん:というより、あれもしたい、これもしたいってアイディアがどんどん生まれてきて。内装もメニューも、温めていたアイディアをかたちにできたんですけど、これから実現したいことがまだまだたくさんあるんです。「店舗が完成して終わりじゃない」って、その通りですね。初日は、まだはじまったばかりなんだな、と実感しました。ちなみにお店の看板は、鎚起銅器の職人さんに頼んだもので、昨日やっと掲げることができました。また新しいはじまりを迎えられた、と新鮮な気持ちです。
――坂井さんはバーテンダーとしてのキャリアもお持ちです。お店はバーのような雰囲気もあるし、これまでご自身が積み上げてきたものを「オルテガ」で実現しているんだろうな、と思いました。
坂井さん:自分が今まで見てきたもの、感じてきたもの、好きなものをここで表現したかったんですね。だからお客さまのための空間でもあるし、自分を表現している場所でもある、と思っています。「オルテガ」のジャンルは、コーヒーショップ、カフェ、バーと、いくつかあると思うんですけど、僕は「喫茶店」がいちばんイメージに近いな、と思っているんです。いずれはメロンソーダとかトーストなどの軽食系もメニューに加えたいと思っています。
――むしろ喫茶店とは違うテイストのお店を目指しているのかと思いきや、意外なお話でした。
坂井さん:なんか、ブレちゃいましたか(笑)。やっぱり喫茶店が、「僕の原風景」なんですね。深煎りのコーヒーをネルで淹れて、食器も自分でセレクトしていて、と自分の「好み」をお店に反映していますけど、それを押し付けるつもりはまったくありません。このスタイルが合わない人だっていると思います。万人受けはしないだろうけど、こういう「オルテガ」の空間に居心地の良さを感じてもらえるのであれば、すごく嬉しいです。
――これからどんなふうにお店を育てていきたいですか?
坂井さん:長く営業を続けたいと思っています。建築士さん、木工職人さんなど、たくさんの方に携わっていただいて、自分でも塗装をしたりしたので、続けることには使命感に近い感情があるのかもしれないです。

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