古町6番町で43年の歴史を持つ喫茶店「カフェ・ド・エトアール」が2018年に閉店しました。その4ヶ月後、「エトアール」を支えたスタッフさんたちが同じ場所ではじめたのが「Etoile Plus(エトアールプリュス)」です。どんな経緯で再オープンに至ったのか、店主の枝並さんにいろいろとお話を聞いてきました。
Etoile Plus
枝並 荘次 Shoji Edanami
1957年新潟市生まれ。19歳のときに大手コーヒーメーカーの直営喫茶店で働きはじめ、26歳で「カフェ・ド・エトアール」に転職。35歳から飲食業を離れて材木店に勤め、52歳で再び「カフェ・ド・エトアール」に戻る。2019年に「Etoile Plus」をオープン。
——早速ですが、どういったいきさつで前身の「カフェ・ド・エトアール」を引き継ごうと?
枝並さん:「カフェ・ド・エトアール」は古町で43年間続いた喫茶店でした。前のオーナーが高齢ということもあり、2018年の年末にお店を畳むことになったんです。僕は長く「カフェ・ド・エトアール」で働いていて、前オーナーからは「お店を引き継いでほしい」と言ってもらっていたんですよ。でも僕ももう年ですから。みんなで相談して「残念だけど、店を閉めましょう」となったんです。そのとき、一緒に働いていた娘がいちばん反対していましたね。で、一旦は閉店したものの、現在のオーナーや常連の皆さんから「またお店をやってほしい」とリクエストされて。多少の迷いはありましたけど、「娘のためにも」という思いもあって、再度喫茶店をはじめたんです。
——そうだったんですか。
枝並さん:前のオーナーから、僕がお店をやるんだったら、名前を使っていいよと言ってもらって「Etoile Plus」と名前をつけました。店の設備も雰囲気も前のお店のままですよ。
——長年愛された喫茶店が一旦は幕を閉じたわけですけど、そのときの周囲の反応はどうでしたか?
枝並さん:「カフェ・ド・エトアール」は古町に「あって当たり前」の存在だったんだと思います。この辺りを歩いていると、常連さんが「どうしてやめちゃったの」って声をかけてくるんですよ。「またやりますよ」と言えるようになったときは嬉しかったですね。
——「Etoile Plus」のオープン後はどうでした?
枝並さん:プレオープン期間から、大賑わいでしたね。たくさんの人が再オープンを喜んでくれて、中には「ありがとう」って泣いてくれたおばあちゃんもいました。皆さんがこんなに喜んでくれるんだから「やってよかった」って心底思いましたよ。「エトアール」は本当に愛されていたんですね。
——「Etoile Plus」の人気の理由はなんだと思いますか?
枝並さん:コーヒーにはもちろんこだわっているんだけど、力を入れているフードメニューが受けているんじゃないかな。一番人気は、ナポリタンにピザトースト、サラダ、ヨーグルト、コーヒーか紅茶がセットになっている「デイリーセット」。スパゲティなんかのソースは自家製ですよ。
——お料理は枝並さんが担当しているんですか?
枝並さん:大掛かりな仕込みは僕がやっています。でもこれからはスタッフのみんなにも任せていきたいですね。うちの店のメンバーは全員いい子なので、安心して引き継げると思っていますよ。
——今ってコーヒーのチェーン店もたくさんありますよね。そんな中でも長く支持される秘訣はなんでしょう?
枝並さん:やっぱり落ち着けるお店だからでしょうか。店内ではクラシックを流していますし、「雰囲気づくり」は意識しています。それに時代時代でコーヒーって進化するんですよね。今は甘いデザートみたいなコーヒーも人気があるから、このお店でもいろいろなコーヒーメニューを用意しています。
——ところで、枝並さんはどんなきっかけで「カフェ・ド・エトアール」で働くことに?
枝並さん:もともと19歳のときからUCC系列の喫茶店で働いていて、他のお店がどんな感じなのか知りたくて「エトアール」にも度々来たことがあったんです。「雰囲気のいいお店だな」と思っていたら、知り合いから「スタッフが足りないから来てほしい」と頼まれて、26歳のときに「エトアール」で働きはじめました。
——その頃はどんなお店だったんですか?
枝並さん:昔は喫茶メニューだけのお店でしたけど、とにかく忙しかったですね。高級専門店がブームになっていて、新潟にもサイフォンでコーヒーを淹れる高級志向のお店が増えていた頃でしたね。サイフォンで淹れたコーヒーを一杯ずつお客さまの目の前で注いでいて、接客レベルも高くて、今より敷居が高かったと思いますよ。確かオープン当初は、学生さんの入店はお断りしていたんじゃなかったかな。今はそこまでかしこまる必要はないし、小さいお子さんでも大歓迎ですよ。
——そういえば、娘さんと一緒に働いているということでしたが。
枝並さん:そうそう、まさか娘と一緒に働くとは思っていなかったんですけどね(笑)。僕、10代の頃からずっと喫茶店で働いていたんだけど、それだと土日も仕事だから子どもの行事に行けないじゃない。それで「違う仕事をしよう」と35歳からは材木屋さんで機械いじりの仕事をしていたんですよ。その頃、うちの娘が働き先を探していたから「エトアール」を紹介したんです。結局、僕は17年間材木屋さんで働いたんだけど、社長が亡くなって廃業することになって。「エトアール」のオーナーは「戻ってこい、戻ってこい」と言ってくれるし、50歳過ぎにまた「エトアール」で働くことにしたんです。それで娘と同じ職場になったんですよ。まぁ、これもご縁ですね。
——これからはどんなお店にしようと考えていますか?
枝並さん:前身の「エトアール」のように長く愛されるお店にしたいですね。僕はそこまで長くはやっていけないだろうけど、娘にはできるだけ長くお店を続けてほしいと願っています。うちには僕らが若い頃からお店に通ってくれているお客さんもたくさんいるし、代々来てくれている方も多いんですよ。そんなふうに、今来てくれている若いお客さんが、年配になっても顔を出してくれるといいですよね。
——また40年以上続くお店になるかもしれませんね!
枝並さん:そうなったらすごく嬉しいですね。自分らが若い頃は、何をするにも「古町」だったんですよね。遊ぶにしても、飲みに行くにしても。昔は「エトアール」だって21時まで営業していましたから。それくらい古町は賑わっていたのに、今はちょっと人が少なくて寂しいね。でも、いくらまちの様子が変わったって、「エトアール」はずっと古町のシンボルみたいなお店でいられた。それが嬉しいんですよ。今日も平日の午後なのに、こんなにたくさんのお客さまに来ていただいて、本当にありがたいですね。
Etoile Plus
新潟市中央区古町6-959-1
TEL:025-378-0300
営業時間 平日9:00〜18:00、土日祝日 8:00〜17:00