子どもも大人も“第3の居場所”に。「ふくちゃカフェ」に込めた思い。
カフェ
2020.09.12
地元で子育て支援コミュニティを運営するふたりが開業。子どもへ無料の食事も。
村上市・荒川地区の国道7号沿いに今月、オープンしたばかりの「ふくちゃカフェ」。一見、いたって普通のカフェですが、実はこのお店、他のカフェにはなかなかない様々な機能が備わっています。というのも、同店は、発達が気になる子どもとその家族のために活動している「ふくちゃ部」が開設した「コミュニティカフェ」なのです。家庭でも学校・職場でもない「第3の居場所」として同店がオープンするまでの経緯や具体的なサービス、今後の展望などについて、運営する「ふくちゃ部」の冨田部長と柏櫓副部長に話を伺ってきました。


ふくちゃカフェ
冨田 絵里子 Eriko Tomita
1976年旧荒川町生まれ。発達の気になる子どもとその家族のためのコミュニティ・ふくちゃ部を同級生の親友・柏櫓さんと地元で立ち上げ、部長として運営。管理栄養士で、料理教室「福茶cafe’sキッチン」の主宰もしている。

ふくちゃカフェ
柏櫓 幸子 Sachiko Kashiyagura
1976年旧荒川町生まれ。ふくちゃ部副部長。県内の病院や企業での勤務を経て現在はフリーの保健師で、産業カウンセラーの資格も持つ。新潟市在住。
カフェとして、活動拠点として、コミュニティとして。放課後の自習スペースも。
――オープンおめでとうございます。さっそくですがこの「ふくちゃカフェ」、どんなお店なんですか?
冨田さん:ありがとうございます。基本はどなたでも利用できる普通のカフェです。と同時に、私たちが2018年に立ち上げた「ふくちゃ部」というコミュニティの活動拠点でもあります。また地域のコミュニティカフェとして、例えば学校の放課後の時間は、店内の一画を自習スペースとして子どもたちに開放しています。子どもたちには、大人のお客さんが事前に支払ってくれた「ごちピン」のメニューを無料で提供することができます。
――「ごちピン」? どんなシステムなんですか?
冨田さん:ランチなどの代金に150円上乗せして支払っていただくと、その分が自習スペースを利用しに来る子どもたちの軽食になる仕組みです。150円=ピン1本を店内の掲示板にさし、どれくらい利用できるか分かるようにしています。プレオープン期間中から多くの方に購入していただいて、オープン前からたくさんのピンが貯まっています。ありがとうございます。
――なるほど。「子ども食堂」のような機能もあるんですね。
冨田さん:「ごちピン」は、帰宅後の夕食に差し支えないようなメニューです。おにぎりとか、サンドウィッチとか。あくまで軽食、補食という位置づけですね。
――それ以外のメニューにはどういったものがあるのでしょう?
冨田さん:ランチは2種類用意しています。私は管理栄養士で、自宅で料理教室も開いているのですが、そこでつくるメニューをこちらでも提供したり。基本的には、プロとして栄養バランスを考えるのはもちろん、地元の旬の食材をたくさん採り入れ、その日の気候や時節に合わせたものを提供していきたいですね。例えば今日のようなすごく暑い日は、食べやすくてパワーのつく薬膳料理をベースとしたメニューにしたりとか。

久々の再会以来、十数年来の夢を実現。月イチで会い構想を具体化。
――お店のベースにあるという「ふくちゃ部」について教えてください。
冨田さん:「ふくちゃ部」は発達が気になる子どもとその家族のためのコミュニティで、交流や相談、情報交換の場をつくったり、発達について学びを深めるセミナー、ワークショップを開催したりしています。2018年の春に設立しました。
――設立のきっかけは何ですか?
冨田さん:そもそものところを遡るとすごく長くなるんですけど…(笑)。私たちは元々小学校時代の同級生で、20代後半で再会したところから始まります。私はそれまで関東で働いていて、村上にUターンした際、彼女から連絡があって久しぶりに会うことになって。
柏櫓さん:私はそのころ村上市内の病院で働いていたんですけど、そこで偶然彼女のお父さんに会うと、「絵里子が帰ってきたよ」って。連絡先も教えてもらって。ちょうど病院で管理栄養士を探していたところでもあったので、リクルートの思惑もあって(笑)。会うことにしたんです。
冨田さん:それで実際に会ったら、想像以上に話が盛り上がって。お互い分野の近い仕事をしているってこともあったし、元々親友ですごく久しぶりにじっくり会えたこともあったし。それで「私たち、将来どうしようか」みたいな話になったときに、「いっしょに地元で何かやれたらいいね」というところから始まって、それから月1回くらいの割合で定期的に会って話し合うようになったんです。それでだんだんと話が具体的なものに固まっていった感じですね。そのための貯金もふたりで始めたし。

――貯金、ですか?
冨田さん:何をするにせよ、とりあえず先立つものは必要だろうって。共同の口座を作って、毎月コツコツと。
柏櫓さん:45歳になるまでに形にならなかったら、そのお金は折半してそれぞれ自由に使おう、ってことにして。
――ということは、間に合ったということですね。
冨田さん:そうですね。いま43歳なので、なんとか間に合いました(笑)
――当初からカフェをやる構想だったのですか?
冨田さん:青写真としてはありました。ふたりで創業計画書とか事業計画とかもつくっていましたし。コミュニティカフェという形が、自分たちの専門性を活かして地域のお役に立てると考えていました。ただ30代に入ると、お互いに仕事もプライベートも忙しくなり、住む場所もまた離れちゃったりして……月1回のミーティングは続けていましたが、いっしょに活動するのが難しくなってきてしまって。それでまず私が自宅で「福茶cafe’sキッチン」という料理教室を先行して始めたんです。ふたりで決めた「福茶」という基本コンセプトを先に使って。

心も体も健康にしたい。お互いの専門性を活かし、地域の「福茶」に。
――「福茶」とは何なのですか?
冨田さん:もともとは平安時代に、病床に伏していたときの村上天皇を癒して、当時の京の街で流行っていた疫病も鎮めたという云われのあるお茶のことです。現在でも京都や関西の方では正月や節分、大晦日などに無病息災を願って飲まれています。私たちの活動もこの福茶のように人の心や体の健康に貢献し、人を幸せにできる存在でありたいとの願いを込めて、基本コンセプトにしています。
――料理教室の開催から部の立ち上げまではどんな経緯が?
冨田さん:私が結婚・出産して育児の当事者になったこともあり、子育てにおける家族や地域の支援の重要性を実感するようになりました。また、特性のある子どもを授かったことで、子どもの発達についても関心が高まりました。それで料理教室をやりながら子育てに関する茶話会もやってみると、想像以上に多くの方が参加してくれたんです。私も含め、子育てについて気軽に悩みを相談し合ったり学び合ったりする場をみんな必要としているんだなと痛感して、ならば、とコミュニティを立ち上げました。
――こちらのお店はそのふくちゃ部の活動拠点ともなるとのことですが、どんなお店にしていきたいですか?
冨田さん:部を立ち上げて2年になりますが、まだまだ私たちの活動が必要とする人に届いているわけではないと思うので、このカフェを通じて部の活動について多くの方に知ってもらえたらと思っています。子どもが思いっ切り遊べるほど広くないので店内でセミナーやイベントをやったりするのは難しいかもしれませんが。
柏櫓さん:地域の方々にとって癒される場所と時間を提供していきたいですね。絵里子さんは「食」で、産業カウンセラーでもある私は「対話」で、それぞれ培ってきた持ち味を還元できればいいなと思っています。例えば、学校や職場に行きたくなかったり、家庭に居場所がなかったりする方でも、このお店にだったら来られる、というような存在になれれば嬉しいです。
――表の看板にある「サードプレイス」って、そういう意味なんですね。
柏櫓さん:そうです。家庭でも職場・学校でもない、第3の居場所。本人に自覚がないとしても、子どもから大人まで、様々なライフステージでメンタルに不調をきたしている方は少なくないのが実感です。そういった方の拠り所のひとつとして機能できれば幸いです。
――なるほど。本日はオープン前後のお忙しい中、ありがとうございました。


本日のふくちゃランチ(2種) 850yen
ドリンク各種(コーヒー、焙煎茶、ハーブティー、古代米甘酒など) 各350yen(おかわり200yen)
うぇるかむプレート 650yen
うぇるかむスイーツ 400yen
ごちピン(本文参照) 1本150yen
いずれも税込
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