100万人の笑顔のために。
三条から世界へ「Gelateria COCO」
食べる
2026.03.06
三条市の農産物直売所「ただいまーと」内にある「Gelateria COCO(ジェラテリアココ)」。地元の豆腐店の新事業としてスタートしたこちらのジェラート店は、イタリアで行われたジェラートの世界大会『Coppa d'Oro 2025』で見事優勝を果たしました。200回を超える試作をして大会に臨んだという、ジェラートマエストロの佐久間さんにお話を聞いてきました。
佐久間 康之
Yasuyuki Sakuma(Gelateria COCO)
1982年三条市生まれ。東京の大学を卒業後、都内の警備会社に就職。2011年に地元に戻り家業の豆腐店に入る。2016年、JAえちご中越の農産物直売所「ただいまーと」のオープンとともにテナント店舗「Gelateria COCO」をはじめる。ジェラートの世界大会『Coppa d'Oro 2025』で優勝。
豆腐店の新事業から始まった、
直売所のお店。
――佐久間さんは三条のお豆腐店の後継者として、地元に戻ってこられたそうですね。
佐久間さん:警察官を目指して働きながら勉強していたんですけど、実家から「戻ってこないか」と言われまして。実家の豆腐店「佐久間食品」の売上を上げようとあれこれと力を尽くしていたところ、「ただいまーと」さんがオープンすることを知りました。それですぐに「テナントとして出店したい」と担当課長に直談判したんです。当初は、豆腐や豆乳の加工品をランチやジェラートに生かせそうだ、という考えがありました。
――あくまで豆腐店の新事業としたアイディアだったわけですね。
佐久間さん:でも豆腐屋で働きながらこっちの現場も見ることは、かなり難しくて。2016年のオープンから3年間、私は豆腐屋の仕事をして、「Gelateria COCO」はスタッフに任せていたんですが、経営的にはかなり厳しい状況でした。
――そうだったんですか……。
佐久間さん:経営のノウハウなんてない、素人が数字を管理しているようなものでしたから。来月の支払いができないんじゃないか、というほどギリギリの状態だったので、必要以上の人員をシフトに入れないとか、惣菜の数を調整するとかして、まずは少しでも経費を削減することにしました。
――それで、無事に改善したんでしょうか?
佐久間さん:スタッフ教育や在庫の調整など、できることから着手した中でいちばん大きかったのは、2022年の「ただいまーと」さん館内の改装でした。今はランチとジェラート、ひとつの場所で注文から支払い、提供までできていますが、4年ほど前まではランチとジェラート、それぞれにカウンターがあったんです。私ひとりで両方の様子を把握することもできないですし、今の1.5倍ほどの人数が必要だったと思います。

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原動力は、
美味しかった、ありがとう。
――試行錯誤されたことは、他にもたくさんあるのでは。
佐久間さん:ランチメニューの種類も大幅に絞りましたね。オープン当初は100種類近くあったんですよ。メニュー表に見開き4ページくらい。それをうどん、そば、パスタ、カレーなど6種類にして。それでも今の方が売り上げが安定しています。
――ジェラートは当時から好評だったんですか?
佐久間さん:オープン当初の苦しかった頃から、ありがたいことにジェラートは評判が良かったんです。ジェラートマシンのメーカーさんのレシピがベースとなっていて、それが本場イタリアらしい濃厚な味だとたくさんの方に喜んでいただきました。でも今の「COCO」のジェラートと比べると、食感も味も未熟でしたね。
――大変な中でも、飲食の仕事にやりがいを感じていらしたのでは?
佐久間さん:それはもちろん、楽しかったですね(笑)。じゃないと「やってやろう」って気持ちにならなかったと思いますよ。「COCO」のジェラートとランチを喜んでくれるお客さまがいらっしゃって、自分が作ったものを「美味しい」と言っていただける。それが日々の原動力でした。目の前でお客さまの笑顔を見ることができたから、続けられたんだと思います。
――2025年にジェラートの世界大会では、見事優勝されました。大会への試みはいつ頃からされていらっしゃったんですか?
佐久間さん:今回出場した『Coppa d’Oro』とは違いますが、ジェラートの大会へ参加するようになったのは2022年からです。ずっと独学でジェラート作りを勉強してきたので、大会にチャレンジして技術力を高めたい、と思いまして。私は酪農家でもなければ、果樹農家でも、6次産業に取り組んでいるわけでもありません。バックボーンが何もないから、大会で結果を残してなんとか箔をつけたかったんですね。そうできたのは「COCO」のスタッフ、通称「チームCOCO」のおかげです。頼もしい人材が集まってくれたので、安心してお店を任せられるようになりました。

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試作200回。
そして、世界一へ。
――『Coppa d’Oro』は、毎回課題が設けられているそうですね。
佐久間さん:2025年大会では「マンゴーソルベ」が課題でした。それに向けてゼロから開発したのが、店頭にも並んでいる「マンゴーフロマージュブラン」です。
――大会に向けて、どんな工夫をされたんでしょう?
佐久間さん:『Coppa d’Oro』には、数年前から私の先輩たちが参加をしていました。先輩たちから教えてもらったジェラートの作り方、思いみたいなものが、だんだんと腑に落ちるようになっていたんです。それで毎日、毎日試作を重ねて。200回は試作をしました。素材の選び方、砂糖の使い方、ジェラートをなめらかにするための配合を追求して。まったく経歴のない男ながらに、人一倍頑張った自負はあります(笑)
――評価される自信はありましたか?
佐久間さん:まったくありませんでした。過去の受賞経験者たちは、「この味ならいける」って自信を持った上で大会に臨むと思うんですけど、私には経験がなかったので。『Coppa d’Oro』で入賞したいとは思っていました。でも、優勝を狙おうなんて考えはなくて。正直、今も実感がないくらいです。
――発表の瞬間は盛り上がったんでしょうね。
佐久間さん:「すごい」「嬉しい」って気持ちはもちろん湧いてきました。でもどこか上の空というか、自分のことなんだけど、他人事のような(笑)。「チームCOCO」と家族の支えのおかげですね。

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素材より素材らしい味と、
心をこめたおもてなしが真骨頂。
――「COCO」のジェラートは、どんな特色がありますか?
佐久間さん:素材を多く使って、濃厚な味に仕上げています。ジェラートの世界には「素材より素材らしく」という言葉があります。極端な話、素材そのものよりおいしくなければ、わざわざジェラートにする意味はないですからね。素材「らしさ」を追求した味が評価されたと思っています。
――受賞のニュースが瞬く間に広まって、冬場でもお客さんがたくさんいらっしゃっていますね。
佐久間さん:ジェラート店は夏場が忙しいものですけど、『Coppa d’Oro』で優勝してからは、夏場以上にお客さまが来てくださっています。
――受賞後に、佐久間さんの心境や仕事への向かい方などに変化はありましたか?
佐久間さん:今までは「下から上を追い求めていた」みたいな意識でした。でもこれからは、本場イタリアの人を含めて、横のつながりを広げていきたいな、と思っています。世界の職人さんたちと交流して、もっと高みを目指したいです。限られた人だけが得られるレベルの知識、技術、そして人間性を追い求めたいです。
――次の目標はなんでしょう?
佐久間さん:会社の理念は「100万人の笑顔のために」。お客さまはもちろん、働くスタッフの物心両面の充実も大切にしています。「チームCOCO」のみんなが「ここにいてよかったね」と思えるように、働く環境や給与面をよりよくしたいです。お店がなかなかうまく回っていなかった時期がありましたけど、今は接客レベルが高いスタッフが集まっていて、それでお客さまも喜んでくださるのかな、と思っているんですよね。より美味しいものを提供して、気持ちの良いお出迎えとお見送りをしますので、いつでも「Gelateria COCO」にいらしてください。

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