新潟市西蒲区にある角田・弥彦エリアは、山や海、田園がそろった自然豊かな地域です。そこでミツバチを育ててハチミツを採取している「はちみつ草野」の草野さんから、ハチミツのことをいろいろと教えてもらいました。
はちみつ草野
草野 竜也 Tatsuya Kusano
1986年新潟市西蒲区生まれ。千葉の大学を卒業し、東京の不動産会社に就職。その後は新潟に戻って家業の米農家や土建屋を手伝う。祖父のやっていた「草野養蜂」を2011年より引き継ぎ、2016年に「はちみつ草野」としてリブランディングする。
——早速ですが、草野さんが養蜂業をはじめたいきさつについて教えてください。
草野さん:岩室に帰ってきてから祖父の米農家や父の土建屋を手伝っていましたが、次第に米農家への興味が強くなっていったんです。僕はもともと理系タイプの人間なので、自分でいろいろ考えて試行錯誤することが好きだったんですよ。そんな自分の性格には農業が向いていたみたいで、本格的に米農家の勉強をしたくて「米工房いわむろ」さんで働きはじめました。
——最初は米農家を目指していたんですね。それがどうして養蜂をやることになったんですか?
草野さん:祖父に頼まれて「草野養蜂」の仕事を手伝ってみたら、とても面白かったんです。養蜂には決まったやり方がないので、自分で好きなように考えて試すことができたんですよ。しかも蜂は体が小さいから、試した結果がすぐに現れるのもせっかちな僕向きでした(笑)
——理系の血が騒いだわけですね(笑)
草野さん:そうですね。最初の頃は効率よくたくさんのハチミツを採集するためにいろいろな方法を試してみましたが、なかなか上手くいかなくて3〜4年の間は何度もミツバチを全滅させてしまったんです。
——それは大変でしたね……。原因はなんだったんでしょう?
草野さん:僕の都合をミツバチに押し付けすぎていたんだと思います。ミツバチにも生活のサイクルがあるし、僕が手を掛けなくても自然のなかで勝手に生きているわけです。そのことに気がついたことで焦りが消えて気持ちも楽になったし、ミツバチに合わせるような方法にしてからは養蜂も順調になりました。
——ところで「草野養蜂」が「はちみつ草野」に変わったのはどうしてなんですか?
草野さん:30歳を迎えて養蜂を続けていく覚悟が決まったので、「はちみつ草野」という親しみやすい名前に変えたり、新しいロゴマークを作ったりして、リブランディングを図りました。ロゴマークは花のデザインをベースに、自然の循環をイメージしたものです。
——事務所兼作業場も、ちょっとカフェのようですね。
草野さん:養蜂のことをもっと多くの人に知ってほしいと思っていたので、人が集まれるようなスペースにしたかったんですよ。以前は養蜂体験なんかもおこなっていたんですけど、コロナ禍をきっかけにお休みしたままなんです。いずれはまた開催できたらいいなとは思っているんですけどね……。
——「はちみつ草野」さんでは、何種類のハチミツを扱っているんですか?
草野さん:アカシアをメインに4〜5種類のハチミツを扱っています。アカシアが全体の7割を占めるんですが、ゴールデンウィーク頃の2週間で全て採集してしまうんです。でも、最近は気候の変化で採集のタイミングが合わなくなってきて、5年前の半分くらいしか採れなくなってしまいました。
——自然相手だから難しいことも多いんでしょうね……。アカシア以外にはどんなハチミツがあるんでしょう?
草野さん:「里山の花々」や「海辺の花々」として販売しています。以前は「桜」や「藤」といった単花のハチミツを販売していたんですけど、近頃は自然環境の変化もあってハチミツが混ざってしまうようになったんです。そんななかで単花のハチミツを採集しようとすると、ミツバチにも無理をさせることになってしまうので、おおらかなくくりでハチミツを販売することになりました。
——あれ? でも、全部で3種類しかないですよね。
草野さん:「里山の花々」や「海辺の花々」は、それぞれ春と夏の2回採集するんですよ。その季節によって花の種類も変わるので、それに合わせて味や香りも変わってくるんです。春のハチミツは濃厚でフルーティー、夏のハチミツは酸味があるトロピカルな味を楽しむことができます。
——なるほど。それぞれのハチミツは、どのように使うのがオススメでしょうか?
草野さん:春の百花蜜はクセが強くて濃厚な味わいなので、同じように濃厚なチーズによく合うんです。特にクセの強い青カビ系チーズにかけると、苦手な人でも食べられるようになるんですよ。マスカルポーネチーズやフレッシュオリーブオイルと合わせて作るクリームは、トーストをはじめ生ハムやバジルとも相性抜群です。
——お話を聞いていると試したくなっちゃいますね。夏の百花蜜はどんな使い方がオススメなんでしょうか?
草野さん:グレープフルーツやメロゴールドのような、酸味の強い柑橘系のフルーツにかけてほしいですね。ヨーグルトを合わせても美味しく召し上がれると思います。ただどんなハチミツも味が強いので、入れ過ぎないように気をつけていただきたいです。入れ過ぎるとハチミツの味しかしなくなっちゃいますからね(笑)
——今後やってみたいことがあったら、お聞きしたいと思います。
草野さん:ハチミツの旬をしっかりと知ってもらえるような届け方をしていきたいですね。ハチミツって瓶詰めして売られているからわかりにくいけど、実は生鮮商品なんですよ。どんなハチミツでも採りたてがいちばん美味しいんですが、そこから少しずつ酸化して香りが抜けていって、1年経つた頃にはどのハチミツも同じ味になってしまいます。だから、うちのハチミツは採集日を表記したラベルを貼って管理しているんです。
——いつまでも同じ味のままではないんですね。他にもやってみたいことはありますか?
草野さん:子どもを連れてあちこち遊びに行くようになって、最近ようやく弥彦や角田の素晴らしさがわかるようになってきたんです。今まではハチミツのPRしかしてこなかったんですけど、今後は自然豊かな地域の魅力も含めてハチミツを発信していけたらと思っています。
——ありがとうございました。これからも美味しいハチミツを楽しみにしています。
草野さん:3人の子育てをしていて気づいたんですけど、僕は育てることが好きなんですよ(笑)。ミツバチも我が子と同じように愛情を込めて育てて、皆様に美味しいハチミツをお届けしていきたいと思っています。
はちみつ草野
新潟市西蒲区栄1969-1
090-5809-3838
9:00-16:00
月曜休