松野尾の「はじまり準備室」で知る、
シルクスクリーン印刷の楽しさ。
その他
2025.12.24
西蒲区松野尾にある「はじまり準備室」。ここではシルクスクリーンを使って、様々な印刷物をつくることができます。デザイナーの星山さんは、とある経験がきっかけでこの場所をつくったんだとか。いろいろお話を聞いて、実際にシルクスクリーン印刷を体験してきました。
星山 充子
Atsuko Hoshiyama(はじまり準備室)
1986年宮城県出身。東北芸術工科大学を卒業後、仙台市内で店舗デザインやグラフィックデザインの仕事に携わる。2014年から新潟へ移住し、「HOSHIYAMA DESIGN OFFICE」を立ち上げる。2024年に西蒲区に「はじまり準備室」をはじめ、シルクスクリーン印刷の楽しさを伝えている。趣味でステンドグラスを使った作品づくりをしている。
独立してぶつかった壁からできた、
「はじまり準備室」。
――星山さんは宮城県のご出身です。これまで、どんなことをされてきたのか教えてください。
星山さん:山形の大学で家具や文房具、雑貨などのプロダクトデザインのことを学んでいました。大学卒業後は、仙台に戻って、店舗デザインに携わる仕事をしていたんですけど、リーマンショックで会社の部署がなくなっちゃって。そのあとは、グラフィックデザインをしている会社で働いていました。
――ずっとデザイン関係のお仕事をされてきたんですね。
星山さん:ちょっと細かく言うと、デザイナーとしてではなく、ディレクターやプランナーに近い仕事をしていました。お客さんと直接お話をして、コンセプトやデザインがどんなものがいいか、一緒に考えて、それをデザイナーさんにつくってもらうようなお仕事ですね。
――その後、新潟で住みはじめて、ご自身のデザイン事務所を立ち上げました。
星山さん:プランナーとして、たくさんデザインを見てきたので、「良いデザイン」がどんなものは分かるけど、自分でデザインする技術が足りなくて。独立開業を目指して、子どもを抱っこしながら夜な夜なデザインのことを勉強しました。いろいろなご縁があって、少しずつ仕事につなかがっていきました。
――「はじまり準備室」をつくることになったのには、どんなきっかけが?
星山さん:お仕事をしている中で、飲食店や農家さんのパッケージをつくる機会がたくさんあったんです。パッケージって、2,000部くらいつくらないと単価が高くなってしまって、「今年は200部あれば十分なのに」っていう声をよく聞いていたんです。部数を抑えるためににシールやスタンプ、掛け紙などを提案していたんですけど、「直接袋や箱に印刷するほうが可愛いし、なんとかならないかな」って思っていました。
――ふむふむ。
星山さん:自分の手で印刷するシルクスクリーン印刷なら、小さい数でも袋や箱に直接刷ることができるし、多少のズレやかすれも愛着になっていいかなって思ったんです。それで、大坂の「レトロ印刷 JAM」さんの「SURIMACCA(スリマッカ)」っていう印刷機を導入して、この場所をつくりました。

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やりたいことができるように、
お手伝いする「準備室」。
――そもそもシルクスクリーン印刷って、どんなものなんですか?
星山さん:印刷したい絵柄の部分にだけ、細かい穴を開けたフィルムの「版」をつくります。その上にインクを通して印刷します。シルクスクリーン印刷のよいところは、インクの色や素材を問わず、工夫次第でどんなところにも印刷ができるところです。紙や布、木材、コンクリートなど、インクが定着する素材なら、何でもOK。水性のインクなので、取り扱いも簡単です。ガラスやクリアファイルのようなツルツルした素材は擦ると取れてしまいますが、取れるのも良さ。シーズンごとにお店のガラスにモチーフを入れたりもできますよ。
――印刷するものも、自由度が高いんですね。
星山さん:お客さんの中には、キャップ帽子のような立体的なものにチャレンジしたり、珪藻土のコースターや、コルクなどに印刷される方もいます。ここでは、お客さま自身に印刷をしてもらっていて、私はあくまで印刷するために工夫をする「お手伝い」をしているんです。その意味で、この場所の名前を「はじまり準備室」にしました。
──その理由、詳しく教えてください。
星山さん:通っていた大学に「準備室」っていうのがあって。作品のアイディアで悩んだことがあったり、機械の使い方が分からなかったり、困った時に駆け込めば、親身になって相談にのってくれる助手さんがいる場所でした。私たちのやりたいことがどうしたら実現できるか、一緒に考えてくれて、いろんな工夫を教えてくれたんです。
――学生のちょっとした困りごとを、解決してくれる場所だったんですね。
星山さん:「準備室」みたいに、つくりたいっていう気持ちのお手伝いをして、良いものをつくれるような場所にしたいと思ってこの名前にしました。デザインや印刷はデザイナーにしかできないものではなくて、どんな人にも身近で楽しいものであってほしくて。ここが、ものづくりやデザインの「はじまり」を応援できる場所になってほしいという思いをこめています。


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はじめてのシルクスクリーン印刷。
編集部が、体験してみました。
――実際に印刷をするときは、どんな流れになるんでしょう。
星山さん:まずは、つくるものとデザインを決めます。印刷したいTシャツやトートバッグなどを持ち込んでもいいですし、ここで買うこともできます。デザインも持ち込みOKですし、その場で描いて版をつくることもできます。もし、「どんなデザインにしたらいいか、わからない」っていう方がいれば、その方にあわせたお手伝いをさせてもらっています。
――デザインが決まると、次はインクですね。
星山さん:色が決まっている方は、単体でインクを買ってもいいですし、いろんな色を使ってみたい方は、全色ちょっとずつ使える「お試しインク」がおすすめですよ。インクにも種類があって、もこもこしたものや、ラメの入ったインクもあります。よかったら、ちょっと試してみましょう。
――じゃあ白鳥のイラストを、白いモコモコしたインクで印刷してみたいです。
星山さん:デザインと色が決まったら、次は印刷する場所を選びます。バッグであれば、真ん中なのか、右下なのか、自分の好きな場所を選んでくださいね。これが意外と迷っちゃうんですよ(笑)。場所を決めたらインクを版の上に置きます。何色か使って、自分で色をつくったり、マーブルにしても面白いですよ。
――全部自分で決めて印刷するって、すごくワクワクします。……あっ、インクがうまくついていない箇所ができちゃいまいた。
星山さん:これもまた味って思うのもよいんですが……、せっかくなので、直接描いてみませんか? アクシデントも工夫次第でいい方向に持っていくことができるし、印刷したものにすごく愛着が湧いてきますよ。
――描いてみたら、なんとかなりました!
星山さん:プランナーとして経験させてもらったことが、独立してからとても役立っていて、つくりたいものを何とかして実現させる、工夫の引き出しを増やしてこれたかなと思います。ここで印刷してもらう方には、120%の喜びと驚きを味わって帰ってほしくて。ご自身が思い描いているイメージより、少しでもいいものがつくれるように、いろんな工夫を提案しています。


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シルクスクリーンも、デザインも、
もっと気軽に、もっと楽しく。
――「はじまり準備室」のオープンから1年ですが、やってみていかがですか?
星山さん:とても楽しくシルクスクリーン印刷と向き合えています。ここで印刷をして、笑顔で帰っていくお客さまの数も増えて、すごく嬉しいです。とはいえ、まだまだ認知不足だなと感じるので、より多くの方にシルクスクリーン印刷を知ってほしいなと思います。お手軽なワークショップもあり、予約制でいつでも体験できますよ。
――1枚から、気軽に印刷を体験できる機会もあるんですね。
星山さん:今までワークショップを体験された方は、みなさん「楽しかった」って言って帰られますし、シルクスクリーン印刷は力もそこまで必要ないので、お子さまとも一緒に楽しむことができます。一度やっていただくと、その楽しさは分かってもらえると思うので、気軽に来てもらえると嬉しいです。
――最後に、星山さんの今後の目標を教えてください。
星山さん:「はじまり準備室」のオリジナルグッズみたいなのをつくりたいなって思っています。ここにインクをたくさん置いていますが、実際に印刷したときに、どんな色になるかってわかりにくいと思うんです。シルクスクリーンで印刷したオリジナルのグッズをつくれば、カラーサンプルにもなりますし、色の組み合わせ方も提案できるかなって。皆さんにシルクスクリーン印刷の楽しさを少しでも伝えられるように、いろんなことをやっていきたいです。

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