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遠い国から瓢湖にやって来た白鳥たちへ「三代目白鳥おじさん」の想い。

白鳥おじさんに白鳥や瓢湖について聞く。

阿賀野市にある瓢湖には、毎年5,000羽以上の白鳥が飛来し、冬の風物詩として多くの観光客でにぎわいます。そんな白鳥たちにエサをあげる通称「白鳥おじさん」は、二代目が引退した後20年ものあいだ、担い手がいませんでしたが、6年前から三代目白鳥おじさんが復活。今回は三代目白鳥おじさんの齋藤さんに、白鳥や瓢湖についてお話を聞いて来ました。

 

 

白鳥おじさん

齋藤 功 Isao Saito

1949年阿賀野市生まれ。2003年より旧水原町の臨時職員として瓢湖の維持管理を定年まで続け、2010年より京ヶ瀬中学校の用務員として3年勤めた。2013年に3代目白鳥おじさんに就任。趣味はアマチュア無線、伝書鳩。

 

1日3回のエサやりで白鳥が多いのは朝9時の回。

——白鳥のエサやりお疲れ様でした。今日は白鳥の数が多いみたいですね。

齋藤さん:多い方ですね。今日は天気がよくて風もないですからね。9時、11時、15時と1日3回エサやりをしている中では、9時の回が、白鳥の数が一番多いんですよ。でも、普段は日の出とともに田んぼまでエサ探しに行って、日の入りまで帰ってきませんから…。瓢湖っていうのは白鳥たちにとって冬のあいだのねぐらなんですね。

 

——じゃあ、今日は運がよかったんですね。瓢湖にはどんな種類の白鳥が来るんですか?

齋藤さん:コハクチョウが9割、オオハクチョウが1割ですね。ごく稀にアメリカコハクチョウがいることもあります。くちばしに黄色い部分がなくて真っ黒なのが特徴の白鳥で、1年に数羽いるかいないかっていう瓢湖では珍しい白鳥です。エサやりのときにもらいに来ているのはオオハクチョウだけで、コハクチョウは寄って来ません。とても警戒心が強いので、人間の与えるエサは食べないんです。コハクチョウはオオハクチョウよりひと回り小さめで、くちばしの黒い部分がオオハクチョウより多いのが特徴です。

 

——毎年、瓢湖に来る白鳥の数は同じくらいなんですか?

齋藤さん:いや、天候によりますね。あんまり大雪になると南下してしまう白鳥もいるし、逆に周辺地域から移って来る白鳥もいます。よく田んぼで白鳥の群れがエサを探してる光景を見ますでしょ? あれは越冬地ならではの光景らしいです。北海道とかの中継地では、ああいう光景は見られないそうですよ。

 

瓢湖は江戸時代に作られた人造の湖?

——白鳥の越冬地になった瓢湖ってどんな湖なんですか?

齋藤さん:寛永16年に用水池として作られた湖だそうです。毎年5000羽以上やって来る白鳥の他にもマガモ、カルガモ、オナガガモとかのカモ類、アオサギ、ダイサギ、オオバンとかの野鳥が100種類も確認されているんです。春には桜やレンギョウ、夏にはショウブやハスが咲き誇って、たくさんの草花も楽しめますね。そうしたことから、いろんな保護を受けてますよ。

 

——いろんな保護っていうと?

齋藤さん:昭和29年に白鳥の飛来地として国の天然記念物に指定されたのをはじめ、平成17年に国指定瓢湖鳥獣保護区に指定されたし、平成20年にはラムサール条約の登録湿地に登録されました。ラムサール条約っていうのは、水鳥の住む湿地の生態系を守るための国際条約なんです。

 

——じつはすごい湖なんですね。瓢湖に白鳥が集まるようになったのはなぜなんでしょう?

齋藤さん:昔からたくさんの水鳥がやって来る中に白鳥もいたそうですが、猟銃の普及で徐々に数が減っていって、一時はまったく来なくなったそうです。ところが昭和29年にシベリアの方から再びやって来るようになったんです。

 

——じゃあ、やって来るようになった原因はわからないんですね?

齋藤さん:そうですね。ただ、初代白鳥おじさん・吉川重三郎さんが餌付けに成功したことで、今日まで多くの白鳥がやって来るようになったんだと思います。重三郎さんの後は息子の繁男さんが引継ぎましたが、引退されてからは20年近く瓢湖には白鳥おじさんがいなかったんですよ。

 

エサが風に舞い、橋が凍って滑る?冬のエサやりは大変。

——齋藤さんはどんないきさつで三代目白鳥おじさんに任命されたんですか?

齋藤さん:平成15年から阿賀野市の臨時職員として瓢湖で公園の維持管理を7年間やっていたんです。白鳥おじさんがいないあいだ、白鳥の世話もしたし、クジャクを人工ふ化させたりもしました。たぶん、そのときのことを認めてもらえたんじゃないんでしょうかね。平成25年に三代目白鳥おじさんの依頼を受けたんですよ。

 

——白鳥おじさんを依頼された時はどう感じました?

齋藤さん:いやぁ、1ヶ月くらい悩みましたね。先代の白鳥おじさんが有名ですから、プレッシャーもありましたし。でも、妻の勧めもあって引き受けてみることにしたんです。白鳥に対して愛着もありましたし。当時私は京ヶ瀬中学校で用務員をやっていたので、最初のシーズンは掛け持ちでやらせてもらいました。平日は用務員をやって、土日限定の白鳥おじさんだったんです。

 

——白鳥のエサやりって大変ですか?

齋藤さん:悪天候のときは大変ですね。白鳥のエサって、食パンの耳と「シイナ」っていう未成熟米を配合した、水に浮く軽いものなんですよ。だから、風が強いと吹っ飛ばされて、思うように撒けないんですよね。大雪の日なんかは桟橋に雪が積もって歩けないから、除雪から始まることもあります。橋が凍ってて滑ったりとかね。

 

——冬場の仕事だから天気悪いと大変ですね。エサを撒くコツってあるんですか?

齋藤さん:子どもとかの小さい白鳥を狙って撒くようにしてますね。あと、エサやりの終わり頃に駆け込みでエサをもらいに来る白鳥もいるんです。だから、そういう白鳥を待ってエサをあげるように気をつけてますね。

 

——齋藤さんはいつもどんな気持ちで白鳥と接しているんですか?

齋藤さん:この仕事は白鳥が好きじゃないとできませんね。初代白鳥おじさんの残した「遠い国からはるばる瓢湖にやって来た白鳥たちを、おもてなしの心で喜ばせてあげたい」という言葉があって、私もその意思を引き継いでやっています。

 

白鳥のためにも瓢湖の自然環境を守り続けたい。

——今後、齋藤さんは白鳥おじさんとしてどんな活動をしていきたいですか?

齋藤さん:白鳥が毎年たくさん来続けてくれるように、瓢湖の環境を守っていきたいですね。あと、白鳥たちにエサをあげることができるのも、地元の企業や農家から食パンの耳や未成熟米を提供してもらえるからこそなんですよね。地元の人たちの協力なくしては、できないことなんです。本当に感謝したいですね。

 

二代目引退後、20年のブランクを経て復活した瓢湖の「白鳥おじさん」。三代目白鳥おじさんに就任した齋藤さんはとても礼儀正しく真面目な方でした。白鳥おじさんとして、子どもたちに喜んでもらえるのが何よりもうれしいと語る齋藤さん。この冬、瓢湖で待っている白鳥おじさんと白鳥に会いにいってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

瓢湖

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