素敵な器と出会って日常生活に豊かさを。小さな器専門店「ヒメミズキ」。
ものづくり
2019.09.25
器専門店のオーナーに器の魅力や楽しみ方を聞く。
忙しい毎日に追われ、ついつい日常の暮らしが乱れてしまうこと、ありませんか? 家の中が散らかったまんまだったり、細かなことに気を遣えなくなっていたり…。でも、何かひとつ大切なものと出会うことで、気分がリセットされ、心が少し豊かになったり。皆さんはそんな経験ありませんか。今回は、日々の暮らしをよりよくするきっかけとなる「器」の提案をおこなっている、器専門店「ヒメミズキ」オーナーの小笹さんにご登場いただきました。


ヒメミズキ
小笹 教恵 Norie Ozasa
1982年阿賀町生まれ。ヒメミズキオーナー。幼稚園の先生、インテリアコーディネーターを経て2014年「ヒメミズキ」をオープン。インテリアのみならず建築物に興味があり、古民家から近代建築まで建築物を見ることが好き。わざわざ東京まで建物を見に行くことも。
陶器やガラス、鎚起銅器まで。さまざまな器に出会える店。
——今日はよろしくお願いします。いい感じの器がたくさんありますね。こちらのお店はどんな思いではじめたんですか?
小笹さん:以前、めまぐるしく日々の仕事に追われて、きちんとした生活を送れない時期があったんです。そんなある日、素敵な器をひとつ買ってみたんですね。そしたら、その器を使ってご飯を食べたいという気持ちになって、しっかり食事ができるようになりました。それから、お洒落な花器を買って花を生けてみたら、なんとなく心豊かな生活を送れるようになっていったんです。自分以外の人にもそんな生活を送ってみてほしい、そのお手伝いをすることができればと思い、器のお店をはじめました。
——なんだかわかります。大切な器がひとつがあると、暮らしがよくなる感じ。ところでこちらのお店で扱っている器はどのようにして選んでいるんですか?
小笹さん:作家さんの個展や工房に足を運んで依頼することもありますし、「ヒメミズキ」で個展を開催した際に、作品の中から販売用に買い取らせていただく場合もあります。いずれにしても、とりあえず自分で使ってみて、使いやすさを試した上で依頼するようにしています。その代わり、作ってもらう際にはあまり細かい注文はせず、できるだけ作家さんにおまかせするようにしてるんです。
——使いやすさを試してからというのは安心ですね。たとえば、どんな作家さんの作品を扱っているんでしょうか?
小笹さん:日本各地の作家さんの作品を扱っています。陶器やガラスもあれば鎚起銅器もありますし、材料や製法もさまざまです。個性的な作家さんもたくさんいらっしゃいますよ。たとえば埼玉の岩田智子さん。陶芸というのは焼き上がりまで、どんな風に完成するのかわからない部分があって、自然にできた風合いを楽しむものだったりするんです。ところが、岩田さんの場合は最初にきっちりと形や色などのビジョンを決め、それに近づけていく作風なんです。しかも、道具を使うことなくすべて手でつくるというこだわりもあって、普通だったらロクロを使うような作品も手で仕上げているんです。うちで扱っている花器も鋳物のように見えますが、手で作り出した陶器なんですよ。

——個展という言葉が出てきましたが、お店で個展を開催しているんですか?
小笹さん:陶芸作品などの個展や作品展を開催しています。そのほかにも、お茶会や日本茶の淹れ方教室、正月飾りなど、講師を招いて器にまつわるものや季節を楽しむワークショップを開催しています。まあ、なんだかんだいって自分が習いたいワークショップを開催している感じですね(笑)

お店に自動車が突っ込んだ?「ヒメミズキ」移転の真相。
——「ヒメミズキ」をオープンしたいきさつを教えてください。
小笹さん:「ヒメミズキ」をはじめる前はインテリアショップにいました。そのお店の面接を受けたときに「将来、自分のお店をやりたい」と言っちゃったんですよ。そしたら、いつ頃までに店をやるのかと聞かれたので「5年で退社して自分のお店をやりたい」と答えました。それからというものお店のミーティングのたびに、みんなの前で「5年で退社して自分のお店をやります」と宣言させられ、後に引けなくなってしまったんです(笑)。
——(笑)かなりスパルタな追い込み方ですね。
小笹さん:そうですね(笑)。でも、とても応援していただいて、独立して自分でお店をやるために必要なことをいろいろと勉強させてもらいました。本当に感謝しています。
——なぜ上古町にお店をオープンしたんですか?
小笹さん:最初は西堀通に面した場所にお店があったんです。ところがある夜、お店に自動車が突っ込んだんです。たまたま近くにいた知り合いから連絡をもらって駆けつけたんですけど、店はもちろん商品の器もめちゃめちゃでした。それで、急いで代わりの店舗を探して、現在の場所で営業することになったんです。
——そんな出来事があったんですか…。西堀から上古町に移転して何か変わりましたか?
小笹さん:白山神社の門前通りということで、いい「気」が流れているせいか、移転してからいいことが起こるようになった気がします。あこがれていた作家さんが偶然立ち寄ってくれたりしたんです。

家の中の短い時間でリフレッシュできる。
——小笹さんはいつから器に興味を持たれたんですか?
小笹さん:実用的なアートとして、もともと器やイスが好きだったんです。本格的に器の素晴らしさに気づいたのは、一人暮らしをはじめた頃だと思います。気持ちをリフレッシュしたいとき、海や山などの自然で癒やされるのもいいんだけど、忙しくて時間がないとなかなか行けないじゃないですか。素敵な器でおいしいお茶を飲むのは、家の中にいる短い時間でもできるんですよ。そうすることで、楽しい気分や幸せな気分になれるし、料理に合わせてお皿を替えたりして、毎日の暮らしの中に楽しみを取り入れることもできるんです。
——身近な幸せを楽しむ。いいですね。ちなみに、小笹さんは職業病のようなものってありますか?
小笹さん:職業病ですか…うーん。外食したお店ではどうしても食器をチェックしちゃいますよね(笑)。知っている作家さんや好きな作家さんの作った器だったりすると、テンション上がったりしちゃいます。

器は使ってこそ。心豊かな生活を送ってほしい。
——今後やってみたいことはありますか?
小笹さん:以前、白山神社の隣にある「燕喜館(えんきかん)」でお茶会を開催したことがあるんです。とても楽しかったんですよ。ぜひまたお茶会を開いてみたいと思っています。
——和と器。お茶会って「ヒメミズキ」にぴったりなイベントですね。では最後に、器を買いたいと思っている方にひとことお願いします。
小笹さん:お気に入りの器や値段の高い器など、もったいなくて使えずに飾っておくという人も多いんです。でも、器って使ってこそのものですから、使わない方がもったいないと思うんです。ですから、もったいないなんて思わず、ぜひ器を使って心豊かな生活を楽しんでほしいですね。

使うだけで生活の質が上がるように思えてくる「ヒメミズキ」の素敵な器たち。今回の取材を通して、特別なことをしなくても、お気に入りの器を暮らしの中で使ってみるだけで、気分が楽しくなるということを教えてもらいました。慌ただしく、ちょっと苛々と日々を過ごしている方、ぜひ好みの器をひとつ、買ってみてはいかがでしょうか。
ヒメミズキ
〒951-8063 新潟県新潟市中央区古町通528
025-201-9252
11:00-18:00
火曜定休
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