胎内市の国道7号線を走っていると「こんにゃく店」と大きく書かれた建物があります。でも、その入口には「HUT WALL」の看板が。……ん? 恐る恐る建物の中を覗いてみると、そこはなんと、色とりどりの石(ホールド)が埋め込まれた壁が並ぶボルダリングジムでした。今回は「HUT WALL」のオーナーの池田さんからボルダリングの楽しさや難しさを聞いてきました。
HUT WALL
池田 朋允 Tomomi Ikeda
1979年胎内市(旧中条町)生まれ。スポーツ専門学校のスノーボードインストラクター科でインストラクターの資格を取得した後、東京のスノーボードショップに3年勤務。結婚を機に胎内市に戻りサラリーマン生活を経験し、2015年に「HUT WALL」をオープンする。趣味はスノーボード、サーフィン、スケートボード、モトクロスと幅広い。
——建物に大きくこんにゃく店の名前が入っていたので、この場所でよかったのかと一瞬迷いました……
池田さん:この建物は以前、こんにゃくをはじめ豆腐やところ天を作っていたお店だったんですけど、設備の老朽化に伴って廃業したらしいんです。外観をそのままにしてあるから、ちょっと紛らわしいですよね。でも初めて来る人に場所を説明する目印になっていて便利なんですよ(笑)
——なるほど(笑)。どうしてここでジムを始めることになったのか。そのいきさつを教えてください。
池田さん:僕は元々スノボをはじめ、サーフィンやスケボーっていう横乗り系のスポーツが好きだったんです。スノボに関係した仕事がしたかったから、スポーツ専門学校のスノーボードインストラクター科に入って資格を取ったんですよ。それで東京にあるスノーボードショップで働いていたんです。
——最初はスノボの仕事をしていたんですね。ボルダリングとはいつ出会ったんですか?
池田さん:スノボショップで働いていたときです。僕はモトクロスバイクも趣味で、行きつけだったバイクショップのオーナーがボルダリングジムを始めたんですよ。スノボやサーフィンって、当時住んでいた横浜から行くとちょっとした小旅行になっちゃうんですけど、ボルダリングだったらそのジムで手軽にできるので始めてみたんです。
——とにかくアクティブで多趣味なんですね。ところで新潟にはどうして帰ってきたんですか?
池田さん:結婚して子どもができたので、2010年頃に故郷の胎内市に帰ってきたんです。横浜と違って山も海もあるから、会社勤めをしながらスノボやサーフィンに明け暮れていました(笑)。でも2015年に勤めていた会社を辞めたんです。
——どうして会社を辞めちゃったんですか?
池田さん:自分がやりたい仕事じゃなかったんでしょうね。もっと自分がやっていて楽しいって思える仕事をやりたいって思ったんですよ。とはいえ好きなスノボやサーフィンを仕事にしたくはなかったんですよね。
——それはなぜ?
池田さん:以前スノボショップに勤めていてわかったんです。スノボやサーフィンを仕事にすると、シーズン中は忙しくって自分が遊びにいけなくなっちゃうんですよ(笑)。あと趣味と仕事の距離感がわからなくなってしまうんです。だから趣味で続けたいものは仕事にしたくなかったんですよね。
——それでボルダリングを選んだんですか。
池田さん:はい。以前ボルダリングをやっていたこともあったし、胎内市周辺にはボルダリングジムが無かったので、やってみようと思いました。
——「HUT WALL」はどんな利用者が多いんですか?
池田さん:小学生から大人までいろんな人が来ます。大人は20〜30代が多いですけど、他の年代の方も利用しています。ボルダリングは個人競技ですからひとりで来て黙々と登っている人もいますけど、通っているうちに顔見知りになった人同士でコニュティができるんですよ。仲間ができることで、ジムに来るのが楽しくなってくれるといいですね。
——ところでホールドの下に貼ってあるいろんな色のテープは何ですか?
池田さん:これはレベルに応じた課題のホールドを示したテープなんです。課題ごとにこのテープのルートで登ってもらいます。うちのホールドの配置はちょっと難しめになっています。
——じゃあ上級者向けのジムなんですか?
池田さん:いいえ。ボルダリングってまだ一般的には馴染みの薄いスポーツだから、敷居を下げて初心者の方にたくさん来てほしいと思っているんです。インストラクションやサポートはしっかりやってますので、やったことがない方も安心して遊びに来てほしいんですよね。
——ボルダリングの魅力ってどんなことだと思います?
池田さん:すぐに達成感を味わえるスポーツですよね。僕は筋トレが苦手なんですけど、ボルダリングは地道に筋トレしなければならないというわけでもなく、ゴールが近いのですぐに結果が出るんです。あとはできなかったことができるようになる楽しさがありますよね。
——じゃあ逆にボルダリングの難しいところは?
池田さん:ある程度やっていくと、できないことが出てくるんですけど、何でできないのかわからなくなってきちゃうんですよ。そこで諦めてやめちゃう人もいます。でも誰かと一緒にやっていると、ふとできることがあるんです。「セッション効果」っていうんですけど、無意識に人の動きを見ていて参考にするのかもしれないですね。子どもはできないとすぐ諦めてしまうので、飽きないように達成感をしっかりと味わわせてあげるようにしています。
——上達のコツってあるんですか?
池田さん:もう、やるしかないんですよね。やったらやっただけ上達はします。自分の弱点を知って、それをひとつずつ克服していくしかないんですよ。
——今後はどんなふうに続けていきたいですか?
池田さん:新潟にはまだまだボルダリングが根付いていないですよね。だからボルダリングの楽しさを伝えて、もっと身近なものになってほしいと思っています。
自分が楽しいと思うことを仕事にしたくて「HUT WALL」を始めた池田さん。新潟ではまだ身近ではないボルダリングの楽しさを、たくさんの人に伝えたいと熱く語ってくれました。ボルダリングに興味がある人は「HUT WALL」を訪れてみてください。きっとボルダリングの楽しさを教えてもらえますよ。その際は「こんにゃく店」の建物を目印に。
HUT WALL
〒959-2629 新潟県胎内市中条3210
0254-28-7008
14:00-22:00(水曜18:00-24:00、土曜日曜祝日10:00-19:00)
不定休