実りの秋の味覚といえば、どんなものが思い浮かびますか?ぶどう、栗、梨、柿、きのこ…いろんな味覚が思い浮かぶのではないでしょうか?その中でも忘れてはならないのがサツマイモ。いも掘りや焼きいもなど、秋の風物としても欠かすことのできない旬の味覚です。新潟にも「いもジェンヌ」という名のブランドいもがあります。今回はその「いもジェンヌ」の販売を担当している「JA新潟みらい」の渡邉さんにお話を聞いてきました。
JA新潟みらい
渡邉 辰洋 Tatsuhiro Watanabe
1987年新潟市西区生まれ。JA新潟みらい 営農経済部職員。新潟大学在学中に「いもジェンヌ」ブランド化のプロジェクトに参加、ブランドロゴのデザインもおこなう。2012年よりJA新潟みらいに勤務し、「いもジェンヌ」の販売を担当。映画鑑賞と読書が趣味。
——今日はよろしくお願いします。「いもジェンヌ」って、とってもキュートな名前ですよね。
渡邉さん:本来は「紅はるか」という品種のサツマイモなんです。ちょっとオシャレで上品なんだけど、気立てがよくて親しみのもてる貴婦人のイメージということで「いもジェンヌ」というブランド名をつけました。
——なるほど。女性っぽいイメージなんですね。「いもジェンヌ」にはどんな特徴があるんでしょうか?
渡邉さん:まず鮮やかな紫色の皮や長い楕円形の、いかにもサツマイモといった美しい見た目が特徴ですね。焼きいもにして食べてみると、しっとりした食感の上に甘い味わいを楽しむことができます。
——「いもジェンヌ」はどのようにして生まれたんでしょうか?
渡邉さん:「いもジェンヌ」を作り始めた最も大きな理由は、新潟市西区の特産品だった葉タバコの廃作問題です。タバコの需要縮小で、廃作する農家が増えていきました。葉タバコを作ることをやめた畑で、代わりに何を作るのかということで、地域の農業後継者20〜30代のグループ「わけしょの会」がいろいろな作物を試しました。その結果、水はけがよい砂丘地では、サツマイモの「紅はるか」が栽培に適していることがわかったんです。
——タバコの代わりに始まったんですね。「いもジェンヌ」がここまで広まったのはどうしてなんでしょうか?
渡邉さん:いろんな人たちを巻き込んで、プロジェクトを進めてきたことが原因ではないでしょうか。ひとつは新潟市西区役所、農業委員会などと立ち上げた「新規品目検討プロジェクトチーム」で、何をどう作るかを検討するチーム。もうひとつは、商工会、菓子業者、新潟大学などで構成された「新潟西地域農商工連携協議会(現いもジェンヌ農商工連携協議会)」という、「いもジェンヌ」をどのように売るのかを考えるチーム。農商工官学が一体となって、みんなで新潟を盛り上げようとしたことが成功につながったんじゃないでしょうか。
——「どのように売るのか」というのは具体的には…。
渡邉さん:自然の中で作る農作物にはどうしてもハネモノといって規格外品が出てしまいます。ハネモノはそのままサツマイモとしては販売することができないので、ペーストにしてお菓子業者さんに卸して、「いもジェンヌ」のブランド名を使ったスイーツを作って売ってもらうんです。その商品に人気が出れば「いもジェンヌ」のブランド名も普及し、相乗効果になるわけです。
——なるほど。ちなみに「いもジェンヌ」にはどんな加工品がありますか?
渡邉さん:和菓子や洋菓子など幅広いスイーツに使われています。たとえば、新潟市西区の「にむらや菓子舗 寺尾店」では毎年秋になると季節限定で「芋ジェンヌどらやき」を販売しています。また、新潟市の西堀通にある「菓子舗 田文」では「はるかロール」という芋あんのロールケーキを作っています。いもジェンヌで作った「いもジェンヌ焼酎」も販売されてますよ。
——そのスイーツに使う材料はJA新潟みらいさんが卸しているんですね。他にコラボした商品などはあるんでしょうか?
渡邉さん:山崎製パンと地域活性化ガールズ集団「リリー&マリーズ」の共同開発で甲信越地方限定の「ランチパック」にもなりました。おかげさまで「いもジェンヌ」のブランド名は広まっていきましたね。
——「いもジェンヌ」の食べ頃っていつなんですか?
渡邉さん:12月〜2月の出荷ピークの頃ですね。「いもジェンヌ」は長く置いておくほど糖度が上がっていくんです。保存には13度〜15度が適温で、湿度は90%が理想といわれています。収穫後30日くらい保存すると美味しく食べれますが、店頭で買った場合は早めに食べるのがいいと思います。
——サツマイモとして「いもジェンヌ」を美味しく食べるコツってありますか?
渡邉さん:一番おすすめしたいのは、やっぱり焼きいもですよね。お店で買ってきた「いもジェンヌ」は新聞紙などで包んで1日くらい置いてから食べてみてください。すぐ食べるのとでは蜜が甘く変わってきます。電子レンジを使って加熱すると水分が飛んでパサパサになってしまうので、オーブンでじっくりと焼いた方が美味しく食べることができます。180度くらいの低温で90分くらいかけて焼くといい感じで焼けますよ。石焼いものように遠赤外線でじっくり焼くのが一番美味しく焼けるんですけどね。
——焼きイモのほかに「いもジェンヌ」を使った美味しい料理を紹介してほしいんですが。
渡邉さん:平成27年度、28年度に「いもジェンヌ給食レシピコンテスト」を開催し、優秀作品を新潟西区内の小学校で給食として提供したんです。そのときの入選作品や応募作品をまとめたレシピ集があるんですよ。いまでも新潟市西区のホームページで見ることができます。カレーやひじき煮など個性的なレシピが掲載されてますので、ぜひ見てみてください。
——今後「いもジェンヌ」をどのように展開していきたいですか?
渡邉さん:「いもジェンヌ」の生産者はまだ少ないので、需要があっても出荷量に限界があるんです。今後は県外への出荷も増やしていきたいと思っていますので、生産者をもっと増やして出荷量も増加させたいと思っています。新潟県内の人たちから愛され、県外の人たちにも誇りを持って提供していける新潟ブランドのサツマイモにしていきたいですね。
葉タバコの廃作で増えていく耕されない畑を使って誕生した、新潟ブランドのサツマイモ「いもジェンヌ」。生産者からお菓子屋さんまで巻き込んだプロジェクトは、またたく間に「いもジェンヌ」を有名にしていきました。今後は新潟のブランドいもとして、全国的に有名になってくれるのを楽しみにしたいです。