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1975年から続くクラシック専門のカフェ。新発田の「喫茶2楽章」。

1975年、オーナーが25歳のときに「オーケストラを作りたい」という目的ではじめた、新発田の「喫茶2楽章」。これまでたくさんの音楽ファンや音楽家に愛されてきたお店です。今回は、喫茶店のオーナーという一面だけでなく、バイオリントレーナー、コンサートマスターとさまざまな顔を持つ諏訪さんにお話を聞いてきました。

 

喫茶2楽章

諏訪 重晴 Shigeharu Suwa

1950年新発田市生まれ。1975年に「喫茶2楽章」をオープン。

 

新発田のバイオリン弾きがはじめた、夢を叶えるための場所。

——諏訪さんは、ずっとこの場所で喫茶店を続けられているんですか?

諏訪さん:実家の一部に内装を施してもらって1975年にはじめてから、ずっとここで営業しています。朝から晩までクラシックが聴き放題だし、楽器の練習もできるし、本も読める。ずっと遊んで生きてきました(笑)

 

——どうして喫茶店をはじめようと?

諏訪さん:オーケストラを作りたかったんですよ。そのためにクラシック専門の喫茶店をはじめて、音楽好きを集めようと考えたんです。結果的には30年以上オーケストラを続けています。

 

——じゃあ、諏訪さんはオーケストラの団長さんでもいらっしゃるわけですか。

諏訪さん:喫茶店のオーナーであり、オーケストラの創設者であり、団長であり、トレーナーでもありますかね。雑巾掛けもやるしなんでも自分でします。

 

 

——トレーナーということは音楽を教えることも?

諏訪さん:むしろバイオリンを教えることが主な仕事かもしれません。小さい頃から音楽をやっていたんですよ。小学生の頃はクラッシックギター、若い頃にバイオリンにチェンジして、それから今まで何十年も田舎のバイオリン弾きをしているんです。

 

——そうかぁ。バイオリンの「先生」なんですね。

諏訪さん:いやいや、先生なんて言わないでください。ただの「手ほどき」です。それでも今まで200人くらいに手ほどきしてきましたかね。プロになった人はいませんけど、大学のオーケストラ団員としてやっていた人は何人もいましたよ。みんな真面目だから、卒業してからはちゃんと就職しましたけどね。音楽家なんて不真面目な人しかなりませんから(笑)

 

音楽好きが集まる、クラシック専門の老舗喫茶店。

——ここは喫茶店であり「音楽愛好家の集まる場所」なんですね。

諏訪さん:「クラッシック専門のカフェ」ですからね。クラシックファン、オーディオファン、音楽をやっている人たちがたくさん来ます。その中でも僕は「音楽をやっている人」と出会いたかったんですよ。なんせオーケストラを作りたかったので。

 

——「オーケストラを作る」という夢はいつ叶ったんですか?

諏訪さん:喫茶店をはじめて10年くらい経った頃ですかね。弦楽器中心だったから、バロック音楽をやることが多かったです。管楽器ができるメンバーがいればベートーヴェンを演奏することもあったし、プロのフルート奏者が在籍していたときにはフルートとバッハの組曲もやりました。でもみんな下手っぴだから綺麗なアンサンブルを弾けるようになるまで容易ではないんです。

 

——ということは玄人メンバーばかりではなかった?

諏訪さん:店の中にはいっぱいサインが書かれているでしょう。これは有名人がお店に来たときのもので、普段僕たちがコンサートをやるときはただのアマチュアメンバーでやるんです。だから玄人はほとんどいないんですよ。

 

 

——好きなことが同じ者同士でオーケストラを組むなんて、さぞかし楽しいでしょうね。

諏訪さん:「コンコルディア・ムジカ合奏団」というオーケストラでね。若い頃は東京から先生を呼んで毎年合宿をしたもんです。でも店内で流れているクラシックのようなレベルではありませんよ。こんなふうに弾けるようになるには100年かかっちゃう。

 

——もしかしてクラシックファンの中ではとても有名なお店だったりして。

諏訪さん:クラシック好きだったらびっくりする有名人が来店したこともありますよ。ウイーンオーケストラのコンサートマスターとかね。実は音楽之友社が出している『名曲喫茶探訪』という雑誌にも紹介されたんです。(雑誌を開いて)日本地図が書いてあるページを見てみて。新潟県にポツンと印が付いているでしょう。それが我が「2楽章」です。

 

——きっとお店のオーディオもすごい機械なんでしょうね。

諏訪さん:古いタイプの真空管アンプとスピーカーを揃えているくらいですよ。僕はそんなにオーディオマニアではないけど、マニアが来ると大変な騒ぎになります。「買いたいけど買えない」「家には入りきらないから羨ましい」ってね。

 

——ファンにはたまらない喫茶店なんですね。

諏訪さん:最近はSNSで「2楽章」を知って来てくれる若い女性グループもいるんですよ。写真を撮って宣伝してくれて、今度はそれを見た人が来てくれるんだよね。こんな古い喫茶店のどこがいいんでしょうね、おかしいね(笑)

 

長く音楽をやってきたからわかる、プロの技。

——クラシック談義がはじまったら、店内はとんでもない熱量になりそうですね(笑)

諏訪さん:話が尽きなくて、「外に出たら明るくなっていた」なんてこともあったな。上達する秘訣を聞き出そうって魂胆もあって、プロを招いて新発田市民会館とかこのお店だとかでコンサートを開催してね。でも誰も「本当のこと」は教えてくれませんでした(笑)。それでも印象深い教えがありまして。僕が35歳のとき、ある方から「バイオリンが上手くなる秘訣は、バイオリンをちゃんと持つことだ」と言われたんです。それを聞いたときはよく意味が分かりませんでしたけど、70歳を過ぎて「確かにその通りだ」と思うようになりましたね。音が出る場所を作るようにバイオリンを持たないとダメなんです。最近は子どもたちに教えるときも「ちゃんとした持ち方」がいちばん大事だと伝えています。

 

——普通の喫茶店だと思ってお邪魔したのに、とんでもない音楽の名店でびっくりしました。

諏訪さん:特別なことをしているわけじゃないんですよ。ただ自分の好きなことをしているだけだから。こういう人生を過ごすにはいい奥さんをもらわないといけません(笑)

 

——これから何か計画されていることはあるんでしょうか。

諏訪さん:最近北区にもオーケストラができて、うちの楽団からそちらに行っているメンバーも多いんですよ。だからしばらく連中とコンサートをするのは難しいかもしれないな。それでもコンサートは続けていきたいですけどね。それと、手ほどきをしている子どもたちには小さいアンサンブルでもいいから体験してもらいたいと思っています。今の子どもたちはバイオリンだけじゃなくて塾もあるし忙しいからなかなか予定が組めないこともあるんだけど、小規模でも毎年発表会を開催したいですね。

 

 

 

喫茶2楽章

新発田市中央町3-8-5

<TEL> 0254-24-1260

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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