新発田市民文化会館の中にある「喫茶デンデン」。こちらでは、喫茶店文化が根付いた岐阜県ご出身の吉田さんが、子どもの頃から慣れ親しんできたメニューと味が楽しめます。看板メニューの「鉄板ナポリタン」は、鉄板の上に敷かれた薄焼き卵をナポリタンと一緒に食べるスタイルで、新潟県民にとっては驚きの一品。今回は吉田さんがお店をはじめたきっかけやメニューのこだわりなど、いろいろとお話を聞いてきました。
喫茶デンデン
代表 吉田さん Yoshida
岐阜県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、出版社に就職し雑誌編集に携わる。10年前からフリーになり、編集、デザイン、ECサイトや喫茶店運営などの他、動物のボランティア活動にも積極的に取り組む。2023年にご主人の出身地である新発田市に転居。同年8月「喫茶デンデン」をオープン。
——こちらの場所は、以前も喫茶店があったそうですね。
吉田さん:昨年末まで40年くらい続いたお店があったのですが、オーナーの方がリタイアされて空きスペースになっていました。それで1月に新発田市が店舗の事業者を募集していることを知り、慌てて準備をしてプロポーザルに参加したんです。「喫茶デンデン」がオープンするギリギリまで東京で残してきた仕事をしていたので、もうドタバタでした(笑)
——吉田さんは、東京ではどんなお仕事をされたいたんですか?
吉田さん:ずっと雑誌の編集の仕事をしていました。あるとき猫の雑誌編集に関わって、動物のボランティア活動に興味を持ったんです。その仕事がきっかけで、ボランティアを中心とした生活をしたいと思いフリーに転身しました。通勤時間がバカバカしくなってしまって。自宅近くやリモートで仕事ができる環境にシフトしたんです。それから編集やデザインの仕事の他に、ECサイトや喫茶店運営も任されるようになって。新潟に来ても継続している仕事があるので、今も忙しくしています。
——幅広くお仕事をされていて、今の時代らしい働き方ですね。
吉田さん:探り探りで取り組んでいることも多いし、たまたまこんな働き方になっちゃったって感じですけど、「令和の時代らしく」仕事ができたらいいですね。「拠点を変えてもこれまでの仕事ができるかもしれない」という期待は、一緒に「喫茶デンデン」を営んでいる革製品作家の夫も同様です。新潟に来て、ちょっとしたところで今までとの違いを感じるときもありますけどね。
——ご主人は新発田市のご出身だそうですね。
吉田さん:はい。でもこのタイミングで新発田市に住むことになるなんて、まったく思っていませんでした。ただ「いつかは喫茶店をやれたらいいな」とぼんやりですが考えていましたし、義理の両親が高齢なので一緒に暮らそうと引っ越しを決めました。
——ではこの春から人生のプランが大きく動き出したんですね。
吉田さん:そうですね。6月1日に新発田市と正式に契約して、7月の上旬に「喫茶デンデン」のプレオープンを迎えたので、わずかな期間で大きく生活が変わりました。今もまだ目まぐるしくて、せっかく新潟に来たのに、まだどこにも出かけられていないのが残念です。
——「喫茶デンデン」さんをどんな場所したいとお考えですか?
吉田さん:新発田市民文化会館の中にある喫茶店なので、文化に関わるようなことができたらいいなと思っています。夫婦ともに美大出身ですし、施設内で陶芸や絵画などいろいろな教室が開催されているので、その受講者さんの作品を展示したり、地元作家さんの作品を置いたりしてみたいと思っています。あとは市民の皆さんが利用する場所なので、誰でもすっと入れるようなお店にしたいですね。「一度でいいから行きたい」じゃなくて「何度も来たい喫茶店」を目指しています。
——メニューについても教えてください。
吉田さん:カレーやピラフ、ホットサンド、ミートソーススパゲティー、鉄板ナポリタン、チーズケーキ、小倉トーストなどを用意しています。「喫茶デンデン」はカフェではなくてあくまでも喫茶店なので、誰でも分かるメニューにしています。
——吉田さんのご出身地、岐阜県は喫茶店文化が根強いところだと聞いたことがあります。
吉田さん:岐阜県は名古屋市と同じく、しょっちゅう喫茶店を利用する習慣があります。バスの待ち時間、待ち合わせ、映画や飲み会の後はもちろん、商談でも喫茶店に行くんです。「1日3回喫茶店に行ってもいいよね」って人、多いですよ。もちろん私も喫茶店、大好きです。
——岐阜県の定番メニューというと?
吉田さん:鉄板にナポリタンを盛り付けてから玉子を流し入れる「鉄板ナポリタン」は岐阜県や名古屋市の定番で、「喫茶デンデン」でもいちばん人気のメニューです。単調な味のナポリタンに玉子が加わって味変もできるって感じかな。最初はトロリ、だんだん固まる薄焼き卵とナポリタンを一緒に食べてみてください。
——こんなナポリタン、新潟では食べたことないです。
吉田さん:中部地方の喫茶店の味ですよ。どのメニューも私が子どもの頃に食べていた味をトレースしています。大人になっても「子どもの頃に食べたあの味が恋しい」と思えるような定番のメニューを揃えているので、それをこちらの皆さんに受け入れてもらえると嬉しいです。
——以前あった店舗も約40年続いたそうですし、新発田市民文化会館には喫茶店が欠かせないのかもしれませんね。
吉田さん:館内の教室に参加される方同士がグループでいらっしゃることも多いんですよ。まとまった人数で座れる席があった方がいいでしょうから、10名様以上のグループでも使えるテーブル席を用意しています。
——これからの構想としては、どんなことを考えていますか?
吉田さん:動物が好きで、店内で「aibo」をかわいがっています。それがこのお店の切り口のひとつになったらいいなと思っています。新潟市にaiboを連れて楽しめるお店があったようですが、閉店されてしまったのかな。新潟県内のaiboオーナーさんから度々、SNSでメッセージをいただきます。aiboとオーナー同士で一緒に楽しめたらいいですね。
——ご夫婦ともに芸術系の大学のご出身だそうですし、これからの文化的な取り組みにも期待しています。
吉田さん:ありがとうございます。地元のお野菜マルシェや新発田の文化に関わる企画などいろいろやりたいことがあるので、これからつながりを作って実現していきたいですね。お店の名前は知らなくても、「新発田市民文化会館の中にある喫茶店」として、何年も覚えていてもらえるお店にしたいです。
喫茶デンデン
新発田市中央町4-11-7 新発田市民文化会館1F
0254-22-5726