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まずはパスタを食べてもらいたい「手打ち生パスタの店frasca」。

計画を立てて進んだ、イタリアンシェフとしての道。

1990年代に放送された料理番組の金字塔「料理の鉄人」。料理人同士のハイレベルな戦い、よだれが滴るほどにおいしそうな料理の数々、いくつもの名シーンを送り出してきたこの番組に心を動かされ料理人を志したひとりの男がいます。現在、イタリアンシェフとして活躍する「手打ちパスタの店frasca(フラスカ)」の富田さん。料理人になるまでのこと、手打ち生パスタをお店の主力とした理由など、いろいろお話をうかがってきました。

 

手打ちパスタの店frasca

富田亮介 Ryosuke Tomita

1984年新潟生まれ。新潟商業高等学校を卒業後、武蔵野調理師専門学校へ進学。都内やイタリアでの修行を経て、2018年10月「手打ち生パスタの店frasca」をオープン。料理に対してストイックで熱いシェフ。

鉄人に感銘を受けた小学生の夢は料理人。

――富田さんは、どうして料理人になろうと思ったのですか?

富田さん:昔、「料理の鉄人」ってテレビ番組があったじゃないですか?あれを小学生のときに観ていて。その場で出されたお題にたった1時間で料理を作り上げるっていう。パスタを打つところからはじめるイタリアンシェフがいたり、道場六三郎なんてお品書きまで書いちゃったりして。そんな姿を観て、純粋に料理人ってかっこいいなと思ったのがはじまりでした。

 

――「料理の鉄人」からはじまったんですね。

富田さん:特にイタリアンシェフに憧れて、今があります。大人になって、編集をしているから1時間で作り上げている、と分かりましたが、子どもには衝撃でしたからね。

 

――そうなると、小学生から料理をスタートしたのですか?

富田さん:卒業文集って将来の夢を書くじゃないですか?そこには料理人とは書いていました。でも親の手伝いがてら料理を教えてもらったりしたのは中学生からです。

 

 

――まずは憧れからだったんですね。高校生になってからは?

富田さん:そもそも中学生時代にイタリアンシェフになりたいと決めていたので、高校の進学は将来を視野に入れて選んで、新潟商業高校へ行きました。商業高校といっても国際教養科があり、2年生でオーストラリアに行けると知ったので選びました。いずれはイタリアに行きたいと考えていたので、英語ぐらいは話せたら何かの役に立つかと思って。

 

――中学3年生でそこまで将来の計画を立てられるなんて凄いですね。僕なんて、遊ぶことしか考えていませんでしたよ(笑)

富田さん:目標やゴールに対して逆算して考えていくのが好きだったんですよね。高校卒業後は東京の池袋にある武蔵野調理師専門学校へ進みました。親にはめちゃくちゃ反対されましたが、仕送りなしを条件にどうにかOKをもらったんです。

 

一歩ずつ、着々と。夢のイタリアへ向けて。

――仕送りなしでの生活って、学校もあるのに大変じゃないですか?

富田さん:それが、学校が提携している店舗があったり、寮もあったので働きながら学校へ通うことができたんです。しかも、お世話になっていた寮は水道・光熱費込みで月3,000円だったんです。驚きですよね(笑)

 

――え??3,000円ですか?格安ですね!

富田さん:お陰で生活費を最小限に抑えることができて、イタリアへ行くための貯金も専門学生のうちに貯めることができたんです。

 

――いやぁ、順調に夢に向けた準備が整っていますね。すごいです。

富田さん:卒業後は1年間だけイタリアンレストランで働きました。やっぱり日本でアレンジされたイタリアンではなく、本物を見て、現地の人たちがどんなモノを食べているのかを知りたかったので、夢だったイタリアへ飛びましたね。

 

――ついにイタリアへ。南イタリア、北イタリアなど、地域によって食文化が異なると聞きますが、富田さんはどちらへ?

富田さん:昔からパスタをはじめとした麺類が好きだったので、手打ちパスタが主流の北イタリアのボローニャへ行きました。この都市は日本でもよく食べられているボロネーゼをはじめ、おいしい食事がたくさんあります。ワインも有名ですしね。

 

――富田さんは麺類が好きなんですね。イタリアで得たものは何ですか?

富田さん:料理のレシピや盛り付けの技術より、イタリア人の懐の深さです。バスが遅れてもイライラしないし、ゆったりとした心を持っていることに多くの学びがありました。とてもいいなと思いましたが、日本にいるとどうしても忘れてしまいますよね(笑)

 

もうひとつ。イタリアから持ち帰ってきたコト。

――「frasca」では、どうしてメインが生パスタなんですか?

富田さん:生パスタって、イタリアの家庭ではよく作られていたんですよね。もちろんレストランでも学びましたが。パン作りや粉など、何もないところからカタチにする作業が昔から好きで。小麦粉から作るパスタに魅力を感じて自分に合っているなって。それで生パスタのおいしさを広めたいと思い、メインに考えました。

 

――そうなんですね。でも、何種類もあるパスタを打つって大変じゃないですか?

富田さん:正直、大変です。睡眠時間を削って仕込みをしていますから(笑)。でもSNSなどが普及してどんなモノが食べられるのか、どんなお店なのかがすぐに分かってしまう時代だからこそ、「マネできるならやってみろ」とプライドを持ってやることが大切だと思っています。

 

 

――お店では、何種類の生パスタが楽しめますか?

富田さん:生パスタは大きく分けて、小麦、水、オリーブオイルから作る中~南イタリアで主流のモノと、そこに卵を加えた北イタリアで主流な2種類があります。それらを種類に合わせて打っていて、常時8種類程度を提供しています。

 

――8種類もあるんですね。ちなみに、富田さんが好きな生パスタの種類は何ですか?

富田さん:蕎麦に近い食感のある細麺のタリオリーニですね。コシがありながらもパキっと歯切れも良くて。人気のパスタ「佐渡産ベニズワイガニとネギとカラスミのタリオリーニ」に使用している生パスタです。

 

――最後に、「frasca」でのこだわりを教えてください。

富田さん:食材は、あえて新潟産にはこだわっていません。その時々の旬を伝えられるように全国から食材をしいれ、非日常も感じてもらえるようにとイタリア食材も積極的に取り入れています。あとは特別な料理や空間を味わえるのがレストランの醍醐味だと思っているので、そのことを大切に日々のおもてなしをしています。

 

 

日々成長していきたいから。そんな願いを込めて。

店名である「frasca」の意味をうかがうと、「昔、イタリアのレストランには看板がありませんでした。その代わりに目印とされていたのが店前の植物なんです。その植物をfrasca(フラスカ)と呼んでいました。そしてもうひとつ、これから成長していく過程という意味もあります」と富田さん。看板としての意味と、自分自身とお店がこれから日々成長していきたいとの思いが込められた店名でした。そんな素敵な話を、帰り際にさらっと話してくれた富田さんの飾らない人柄。もちろん、誠実で職人気質な料理人。頂いたパスタから、感じ取ることができました。ご馳走様でした。

 

 

手打ち生パスタの店frasca

新潟県新潟市西区寺尾東6-12-34

025-369-5032

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※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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