骨董といえば、掛け軸や壺、置物といったものを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。西蒲区旧中之口村に今年オープンした「古美術たけうち」には、そういった、いわゆる「骨董品」に加えて、海外のアンティーク雑貨や昭和レトロな食器、ピンバッジなどのお手頃アイテムもたくさん揃っています。店主の竹内さんにお店をはじめたきっかけや古物への思いなど、いろいろとお話を聞いてきました。
古美術たけうち
竹内 悟 Satoshi Takeuchi
1982年新潟市生まれ。高校卒業後は建設業に就く。その後、妻の実家が経営する骨董品店で働き、2023年に独立。2025年、地元の旧中之口村に「古美術たけうち」をオープン。
――竹内さんが古美術に興味を持ったきっかけを教えてください。
竹内さん:昔から海外の雑貨や家具を「かっこいいな」「おしゃれだな」と思っていて。『開運! なんでも鑑定団』は、大好きなテレビ番組で、「鑑定人という仕事があるのか」と気になっていたんです。でも、最初は建築業に進みました。それから30代になって、妻の実家の古美術店を手伝うようになりまして。露店や骨董市へ出店するうちに、あらためて「この仕事は面白い」と感じるようになったんです。
――どんなところに魅力がありますか?
竹内さん:今の時代、新しいものはすぐに手に入るし、不用品はすぐに捨てられてしまいます。でも、何百年も前からあった「もの」に、考えられないようなすごい技術が生かされていることもあります。そういう「もの」と出会えることが単純に嬉しいし、別の誰かの手に渡ったあとも大切にされていると知ったときには、そのものに対しても人に対しても「よかったね」と思えるんです。
――しばらく経験を積まれて、その後、独立されたわけですね。
竹内さん:義両親のもとで、8年間ほど修業をさせてもらいました。「そろそろ、自分で商売をはじめてみたら」と後押しされたのもあって、2年前に独立したんです。
――目利きの技術は、どうやって磨いていくものなんでしょう?
竹内さん:本を参考にすることもあるし、知識のある同業者さんから教わることも多いです。古物の市場では幅広いジャンルの品物を鑑て、日々勉強しています。
――今まで鑑定したもので、特に印象に残っているものは何ですか?
竹内さん:新潟の作家さんの古い作品に遭遇すると、毎回「すごいな」と思います。例えば、燕の鎚起銅器。あらゆるところに職人の細かな仕事の形跡があって、自分のすぐ近くにこれほどの技術があったのかと驚きます。
――では、鑑定が難しいものは?
竹内さん:特にないんですが、私の場合はあまりブランドアイテムの鑑定をしないので、そういったものは別の業者さんに判断してもらいます。
――鑑定人さんにはそれぞれ得意分野があるということでしたが、竹内さんの得意なジャンルはなんでしょう?
竹内さん:最初に勉強したのは時計関係です。特に、懐中時計が好きです。と言っても、時計の修理ができるわけではないんですが。
――時計が好きな人は多いですよね。
竹内さん:分解すると、時計の精密さがよく分かります。日本の懐中時計なんて100年以上前のものであっても、少し手を加えるだけで動くんです。信じられない技術ですよね。
――「古美術たけうち」さんに品物を持ってくる人って、骨董品類のコレクションをしているような人たちですか?
竹内さん:いえいえ、ほとんどが一般の方です。「蔵にあるものを見に来て欲しい」といった依頼もあります。掛け軸、骨董品、雑貨などは、専門業者が集まる市場で仕入れてくることが多いですね。
――古美術のお店ってそれほど多くないと思うんですが、店舗を構えたいというお考えは以前からあったんですか?
竹内さん:これまではお客さまに「お店はどこにあるの?」と聞かれても、答えることができませんでした。それではお客さまの信頼につながりません。この商売は、何よりも「信頼」が大事です。「小さくてもいいから店舗を持ちたい」とずっと思っていました。
――どんなお店にしたいと思っていましたか?
竹内さん:「入店しやすいお店」にしたかったですね。古美術、骨董品を扱うお店って古臭いイメージだし、若い方は足を踏み入れにくいんじゃないかと思って。なので、洋雑貨や小物類も多く置くようにしています。
――まったくの素人ではあるんですが、掛け軸や絵画などは、想像しているよりも手頃な値段だなと思いました。
竹内さん:「ちょっと背伸びすれば手が届くかな」という価格の品を置こうと意識しています。何百万円もする骨董品は、どうしても欲しくてたまらないって方でないとお買い求めにならないでしょう。手頃な価格の品物を揃えている方が、お客さまも見ていて楽しいのかなと思っています。
――お店の品物は、量産されている商品とはやっぱり違いますよね。選ぶ楽しみがありそうです。
竹内さん:すべてがそうではないんですが、お店にあるものは「ふたつとない」「数が多くはない」ものばかりです。そこに味わい深さがあると思います。それと「あれだけ昔によくもまぁ、こんなものが作れたものだ」と感心してしまう技術力が詰まったものも。
――最近増えている空き家にも、お宝があるかもしれませんよね。
竹内さん:「空き家にあったものは、すべて捨てられた」とよく聞きます。それはすごく、もったいないですね。こういう商売をしているから「もったいない」んじゃなくて、「次の人に受け継げるものだってあるのにな」と思うからです。今作ろうとしても作れないものが、ひっそりと放置されていても不思議じゃありません。処分しなくてはいけない事情はわかるんですが、「日本のいいものがなくなっていってしまう」という寂しさを感じます。
――さて最後に、これからどんなお店にしていきたいかお考えを教えてください。
竹内さん:もともと工場だった場所を店舗にしたので、まだまだ使える敷地があるんです。先の話になるかもしれませんけど、アンティーク家具を展示するスペースを設けて、店舗を大きくしたいですね。ここは田舎なので、若い方に足を運んでもらうのは簡単じゃないかもしれませんけど、雑貨類もたくさんあるので、ぜひ覗きに来ていただきたいです。
古美術たけうち
新潟市西蒲区中之口728-1
025-311-8809
営業日はInstagramで、ご確認ください。