インターネットを利用した通信販売やキッチンカーなど、店舗を持たない飲食業はたくさんありますが、店舗を「間借り」することで営業する飲食店も増えてきました。今回紹介する「間借飯店(まがりはんてん)」もそのひとつ。店主の白井さんに「間借り」という営業スタイルについてや、今後の夢についてお話を聞いてきました。
間借飯店
白井 武人 Taketo Shirai
1992年湯沢町生まれ。新潟調理師専門学校卒業。老舗料亭やフレンチレストランで経験を重ね、2023年より「間借飯店」をはじめる。「シャボン玉協会 泡人」に所属するパフォーマーでもある。
——今はこちらの「アジアン料理 ミルチリオ」さんの店舗を借りて営業しているんですよね。
白井さん:はい、「アジアン料理 ミルチリオ」さんがお休みの火曜と水曜に、店舗の間借りをして営業しているんです。オーナーの江口さんにはとても感謝しています。
——白井さんは料理の仕事をはじめてから長いんですか?
白井さん:調理師専門学校を卒業してから、ずっと料理の仕事ひと筋でやってきました。僕の父親は湯沢の観光ホテルで長い間料理長を務めてきたので、調理場に入っては料理人の仕事を見てきたんです。その影響で3〜4歳から料理人を目指していました(笑)
——それは早い(笑)。じゃあ、最初はお父さんと同じように和食の道に進んだんでしょうか。
白井さん:はい、老舗料亭で調理見習を4年間やりました。おせち料理や百貨店の仕出し作りなんかで年中忙しくて、労働時間も長くてきつい仕事でしたね。調理場の上に数人で寝泊まりしていたので、プライベートもないような生活を送っていました(笑)。でも、見習いとしていろいろな持ち場についたおかげで、和食の基本をひと通り覚えることができましたね。
——老舗料亭の修業スタイルっていう感じがしますね。その後もしばらくは和食の仕事を?
白井さん:洋食の素材を使った創作和食をやってみたいと思っていたので、洋食の勉強をしたくてフレンチレストランで働きはじめたんですよ。料理長が仕事に厳しい方だったので、今度はメンタル的に辛かったですね。その後はカウンター割烹で和食を提供する仕事をしてきました。
——料亭やフレンチレストランで修業をしてきた白井さんが、チャーハンのお店をはじめたのはどうしてなんでしょうか?
白井さん:ずっと自分のお店を持ちたいという気持ちがあったんですけど、和食やフランス料理より、もっと気軽に親しまれている料理で勝負しようと思ったんです。そのときに思いついたのが、僕の好きなチャーハンだったんですよ。
——白井さんが好きな料理だったんですね(笑)。でも、チャーハンを作ったことはあったんでしょうか?
白井さん:ラーメン店で働いていた時期があって、そのときにチャーハンを作っていたんです。ラーメンも提供しようと思っていたんですけど、「ミルチリオ」さんの並びにはラーメン店もあるので、チャーハンだけを提供することにしました。でもメニューを絞ったことで「チャーハンの店」として認知してもらえるようになったので、結果的には良かったのかもしれないですね。
——「間借飯店」という店名で、堂々と間借りを宣言していますけど、どうしてこの営業スタイルを取ることにしたんでしょうか?
白井さん:少ない開業資金でお店をはじめるにはどうしたらいいのか考えて、最初はキッチンカーをやろうと思っていたんです。ところがキッチンカーが難しくなって、間借りさせてくれる店舗を探すことになりました。なかなか見つからなかったんですけど、共通の知り合いに紹介していただいて「アジアン料理 ミルチリオ」の店舗をお借りできることができたんです。
——「そういう営業の仕方もあるんだな」って思う人も多いんじゃないでしょうか。
白井さん:大都市では流行っていますけど、新潟ではまだやっているところが少ないですよね。食材価格や税金の高騰で店舗を構えるのが難しい時代ですから、こういう方法でお店をはじめることもできるというのを示したいんです。
——確かに新しい営業スタイルのひとつですよね。でも、間借りする上で大変なことってあるんじゃないですか?
白井さん:毎回食器や食材を持ち込んで準備をするのが大変ですね。あと、「アジアン料理 ミルチリオ」のスタッフさんにお手伝いいただいているんですが、基本はひとりで営業しているので、どうしてもお客様をお待たせするのが申し訳ないんです。
——この席数をひとりで回すのは大変でしょうね。ところで、どんなチャーハンが食べられるんでしょうか?
白井さん:「たまごチャーハン」と「チャーシューチャーハン」をメインにしていますけど、インスタグラムのストーリーズで告知している、フォロワーさんだけが知ることのできる裏メニューもご用意しているんです。
——へぇ〜、どんなメニューなのか気になりますね。料理を作る際に気をつけていることってあるんですか?
白井さん:どんなに忙しいときでも必ず味見をして、クオリティの低いものはお客様にお出ししないようにしています。せっかく足を運んでくださったお客様をがっかりさせたくないので、中途半端なものを出さないように気をつけていますね。当たり前のことですけど、徹底するようにしています。
——なるほど。今後はどんなふうに営業していこうと思っていますか?
白井さん:間借り先を増やして、いろんなエリアで営業していけたらいいなと思っています。近々、新潟市西区の店舗を間借りして営業をはじめる予定もあるんですよ。イメージとしてはキッチンカーに近いでしょうか。あちこちで営業して、いろんなお客様に食べてもらいたいですね。あと、いずれはラーメンの提供もはじめたいと思っています。
——それは楽しみですね。
白井さん:最終的には実店舗で営業したいんです。そして自分と同じく飲食店にチャレンジしたい人に、今度は自分が間借りをさせてあげたいですね。
間借飯店
聖籠町東港7-861-2 アジアン料理ミルチリオ内
11:00-15:00
月木金土日曜休