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木の良さを伝えたい。三条の木工所「マサコー山口木工」が香水を開発。

  • ものづくり | 2024.01.27

三条市にある木工所「マサコー山口木工」が昨年、「木工所の香り」と「燕三条の香り」の2種類の香水を発売しました。木工所が作る香水とはいったい……? 香水を発売することになった経緯や、開発に込めた思いについて、「マサコー山口木工」2代目の山口将門さんと、香水の発案者である妹の明歩さんにお話を聞いてきました。

 

 

株式会社マサコー山口木工

山口 将門 Masakado Yamaguchi

1983年三条市生まれ。ダイニングバーなどの飲食店で働いた後、22歳のときに家業である「マサコー山口木工」に入る。2021年に父親の跡を継ぎ、木工所を法人化。代表取締役を務める。

 

株式会社マサコー山口木工

山口 明歩 Akiho Yamaguchi

1987年三条市生まれ。様々な会社で事務や経理の仕事を経験した後、約3年前に家業の「マサコー山口木工」に入る。常務取締役兼経理・総務を担当。

 

木柄の製作を得意にしてきた、長年続く木工所。

――「マサコー山口木工」さんは、どういう製品を作られている会社なんですか?

明歩さん:主に木柄の製作を得意にしている木工所です。1977年に父が創業して、令和4年に法人成りして兄が社長になりました。燕三条は金物の町なので、柄はその相棒と言いますか。基本的には金物屋さんやアウトドアメーカーさんから依頼を受けてOEM受注しています。最近は柄の部分にちょっと特徴を持たせて、道具自体のアイデンティティにしたいという会社さんが多いので、そういった個性的な柄が得意です。

 

――へ〜、アウトドア用品の柄も作っているんですね。

将門さん:父の代のときは鍬とか斧とか、主に農耕具の柄を作っていたんですけど、今だと注文の3分の1が農耕具で3分の2がアウトドア用品ですね。

 

明歩さん:兄が社長となる5〜6年前に大きなキャンプブームが来て、ハンマーやナイフ、薪割り用の斧とかの注文が増えたんです。そんな中で、うちはうちでブランドを作っていきたいなと思って「無名 -mumei-」という自社ブランドを立ち上げました。今回作った香水も、そのブランドから出しました。

 

 

――おふたりはいつからこちらの木工所で働かれているんですか?

明歩さん:私が入ったのは3年前、コロナ禍真っ只中のときでした。総務や事務の担当で入社したんですけど、「いずれは入るだろうな」と思っていたので、前職でもそういう仕事を極めていましたね(笑)

 

将門さん:僕は22歳のときに入ったので、20年近く働いています。以前はダイニングバーとかで働いていて、昼夜逆転の生活を送っていました。父がこの会社の事業規模を縮小せざるを得なくなって、僕が入ることになりました。

 

――子どもの頃からお父さんのお仕事は見ていたと思いますが、実際に働きはじめてから感じたことはありますか?

明歩さん:私が入ったときには「ナラはどういう素材か」とか、それぞれの木の特徴を兄がまとめてくれていたんですね。香りや温かみとか、いろいろな種類があると知って、木をすごく魅力的に感じたんです。そこからいろんな商品ができていくところを見て、どの会社にも事務の仕事がある中で、自分が「応援したい」と思えるところで事務ができているなって嬉しく思います。

 

将門さん:妹ながらいいことを言うな(笑)。木って100種類以上あるんですよね。100円ショップとかでものを買うと「素材:天然木」って書かれていることがあるんですけど、同じ木でも全部性質が違うので、木の価値が正しく伝わっていないなと思っていました。あるとき他の木工所さんを見学したら、いろんな種類の木のサンプルが置いてあったので、うちでも標本を作って置くことにしたんです。

 

 

――サンプルがあると、お客さんもいろいろな木を見たり触ったりして比べられますね。

将門さん:お客さんから「こういうものを作ってほしい」といういろいろな要望が来るんですけど、そのものにいちばん合った木を提案してあげた方が喜ばれるし、長く使ってもらえると思うんです。うちが作るものは打ち付けるような用途のものが多いので、そういうときは「カシ」という堅い木を使います。この板、持ってみてください。

 

――ずっしりしていますね。これは頑丈そう。

将門さん:カシといちばん比較しやすいのが「キリ」ですね。次はこっちをどうぞ。

 

――すごく軽い! 木ってこんなに個性があるんですね。

 

燕三条や工場の「香り」を持ち帰ってもらう。

――今回発売した香水は、どなたの発案で作られたんですか?

明歩さん:私です。木の良さや特徴をもっと広めたいっていう思いがありました。コロナ禍が終わりかけて、これからはみんな観光の方に目が行くだろうなというときで、観光面で私たちができることって何だろうって考えて。それで「香り」を持ち帰ってもらえたら、帰った後も楽しめるんじゃないかなと思ったんです。

 

――「香りを持ち帰ってもらおう」と思いつくきっかけが何かあったんでしょうか。

明歩さん:「燕三条 工場の祭典」というイベントがあって、そのときに来られたお客さまから「木のいい香りがする」というお声が多かったんです。「香りで木の良さを伝えるっていいな」と思って、具体的に考え出したのは昨年の4月です。

 

――そんな明歩さんのアイデアを聞いたとき、将門さんはどう感じましたか?

将門さん:工場ごとにいろいろな香りがあると思うんです。ここなら木だし、鉄工所だったら鉄だし。そういう嗅覚の部分を持ち帰ってもらえる香水って面白いかもしれないと思って、賛成しました。

 

 

――「NENRIN(ネンリン)」と「GINIRO(ギンイロ)」の2種類があるそうですね。

明歩さん:「NENRIN」は木工所の香り、「GINIRO」は燕三条の香りをそれぞれイメージしています。「NENRIN」の方は私たちが普段嗅いでいるような香りがしたり、三条市の市の木が五葉松なので、最初に松の香りがしたり、本当に馴染み深い、愛着ある香りです。香水をOEMで作っている会社さんに作ってもらったんですけど、「GINIRO」はイメージを伝えるにも難しくて、メタリックな香り、でも燕三条ってもうちょっと渋みがあるよなとか、試行錯誤しました。

 

――実際に嗅いでみると、どちらの香りも雰囲気が違って素敵ですね。香水が入れられている箱も凝っていますね。

明歩さん:「NENRIN」の箱に描かれている模様は、五葉松の葉と木くずが舞っているところをイメージしていて、「GINIRO」の模様は火花と雪の結晶をイメージしています。

 

 

――この箱も「マサコー山口木工」さんで作られたんですか?

明歩さん:箱はうちではなくて、ほんの数軒先にある「栗山物産」さんという、桐箱や桐たんすなどが得意な会社さんに作っていただいています。「木工」と言っても、いろいろな分野に細分化されていて、それぞれが得意な工場があるっていうのもこの地域の特徴かなって思います。うちは香水のキャップの部分を作りました。

 

――キャップには何の木を使っているんですか?

明歩さん:「ヤマザクラ」です。他の木と比べて赤みがあってかわいらしいっていうのと、加工がしやすいんですね。部分によってぜんぜん色が違ったり木目が違ったりするので、ひとつひとつに個体差が出やすいんです。それが香水のキャップになると、「自分だけのもの」っていう感じするかなって。あとヤマザクラは私が推している木なんです(笑)

 

木の個性や魅力が伝わる商品を作り続けたい。

――香水はどちらで購入できるんでしょうか。

明歩さん:オンラインストアで販売しているのと、これから「道の駅 庭園の郷 保内」さんと「燕三条地場産業振興センター」、あと燕三条駅の中にある「燕三条Wing」に置かせていただく予定です。

 

――観光で燕三条を訪れた方が、香水を手に取ってくれたらいいですね。

将門さん:こういうことをしている木工所があるって知ってもらいたいですね。あとはこの地域の素晴らしさというか。桐箱や内箱のウレタンですとか、梱包用の段ボール、デザインや印刷は、すべて三条市と燕市で作ってもらったものなんです。開発しようと思ってアクションを起こすと、ちゃんとものが生まれる「素晴らしい地域だな」と、今回の開発を通じて思いました。ぜひ燕三条に来ていただいて、まずはこの香りを試していただけたら嬉しいです。

 

――今後も新しいものづくりに挑戦していく予定なんでしょうか。

明歩さん:本業である木工の方で、木の良さをちゃんと伝えることが本来の道かなって思っています。商品化はまだ先なんですけど、いろいろな木を使ったチョコレートのような見た目のマグネットとか。そういうふうに、木の良さを直接的に伝えていけるような商品を作っていきたいですね。

 

 

 

マサコー山口木工

三条市下保内264

TEL:0256-38-5662

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