新潟市南区の住宅街の一角に「麺亭こがね」というラーメン店があります。「こがねらーめん」という淡麗醤油ラーメンをはじめ、豊富なメニューが揃っていて、中には「ソースらーめん」というあまり聞き覚えのない名前のラーメンも(笑)。今回は店主の星さんを訪ねて、お店やラーメンについての思いを聞いてきました。
麺亭こがね
星 和浩 Kazuhiro Hoshi
1981年新潟市南区生まれ。地元の調理師専門学校を卒業。割烹や道の駅で和食の仕事を経験。その後子どもの頃からの夢を諦めきれずにラーメン屋を目指し、いろいろな店で修業を重ねる。2014年に「麺亭こがね」をオープン。とにかくラーメンが好きで、店をはじめる前はラーメンの食べ歩きをしていた。
——星さんはどうしてラーメンの仕事をはじめたんですか?
星さん:僕の両親は割烹を営んでいて忙しかったので、なかなか家族で出かけることができなかったんです。そんな中、家族でラーメンを食べに行くのが唯一のレジャーだったので、僕の中ではラーメンを食べることが何よりの楽しみで、幸せの象徴になっていったんですよね。だから僕も「人に楽しみを提供して幸せを感じてもらえるような仕事をしたい」と思って、子どもの頃からラーメン屋になりたかったんです。
——星さんにとって、ラーメン屋さんは幸せの象徴なんですね。じゃあ、最初からラーメン屋さんを目指して仕事をしてきたんですか?
星さん:ところが地元の調理師専門学校でひと通りの料理を学んで、その後はラーメン屋ではなく割烹や道の駅で和食の修業をしてきたんです。「ラーメン屋になりたい」と思いながらも、「両親の割烹を継がなければならない」とも考えていたんですよね。でも和食の経験はラーメンの出汁の取り方に生かせていますので、無駄にはなりませんでした。
——ラーメン屋をやりたい、その夢はあきらめられなかった、と。
星さん:そうなんですよ。しばらく和食の修業を続けていましたけど、どうしてもラーメン屋への夢があきらめきれなくて、いろいろな店で経験を重ねましたね。最後は地元でアルバイトをしながら、出店準備を進めて、2014年に「麺亭こがね」をオープンしました。
——「麺亭こがね」は住宅街の中にありますけど、新潟市の中心部とか国道沿いでオープンしようとは思わなかったんですか?
星さん:地元の南区でお店をやりたいという思いが強かったんです。国道沿いは家賃が高かったのであきらめました。知り合いの土地を売ってもらって店舗を新築したんですけど、最初の1〜2年は店の場所がよくわからないって言われることが多くて、遠くから来たお客さんが辿り着けずに帰ってしまうこともありました。
——まるで隠れ家のようなお店ですね(笑)。お客さんはどんな人が多いんですか?
星さん:昼は近所にある工業団地や自動車屋で働いている方が多いですね。夜や祝日には近所に住んでいる方が家族連れで来てくれます。歩いて来られる方も多いんですよ。
——ずいぶんいろいろな種類のラーメンがあるんですね。おすすめのラーメンはどれですか?
星さん:看板メニューは「こがねらーめん」ですね。昆布や煮干しの魚介系と動物系の出汁を別々にとって、ひとつに合わせた淡麗系スープのあっさりラーメンです。あっさりしている分トッピングは多めにして、チャーシューは豚バラ、鶏、燻製鴨の3種類を楽しんでもらえます。最後まで飽きずに食べることができて、毎日でも食べられるラーメンだと思うんですよ。
——「ソースらーめん」もかなり気になるんですが……。
星さん:居酒屋でアルバイトをしていたときに考えたラーメンなんです。焼きそばをそのままラーメンにしたようなもので、居酒屋のメニューに加えてもらえて人気があったので自分の店でもメニューに入れました。そのまま食べていただいても美味しいですけど、トッピングした目玉焼きや紅しょうが、テーブルのカレー粉で味変もお楽しみいただけます。食べることを楽しんでほしいと思って考えたラーメンですね。
——一度食べてみたいと思わせるラーメンですよね。星さんはラーメンを作るときにこだわっていることってありますか?
星さん:とにかくお客様には、ラーメンを食べることを楽しんでもらいたいんですよね。僕にとっては何十杯も作っているラーメンのうちの一杯でも、お客様にとってはたった一杯のラーメンですから、忙しくてもしっかりと綺麗に作ったラーメンを提供しています。
——でもメニューの種類が多いから作るのが大変そうですね。
星さん:お客様に楽しんでほしいと考えているうちに、どんどん増えてしまったんです(笑)。この他に季節限定メニューなんかもあるんですよ。オペレーションやロスのことも考えると、メニューの数を絞りたいんですけどねぇ……(笑)。でもお客様のことを考えると、なかなか絞ることができないんですよ。
——とにかく「お客さんに楽しんでほしい」という思いが強いんですね。
星さん:そうですね。もちろん儲かったら嬉しいですけど、儲けたいというよりは、そっちの気持ちの方が強いですね。でも、コロナ禍や戦争の影響もあって、経費は上がっているのに売上が下がっているっていう厳しい状況で、メニューを値上げするべきかどうかという葛藤に日々悩まされています。
——なるほど。お客さんが以前のように戻って来れば、値上げも回避できるかもしれないんですよね。
星さん:僕としてはお店が続けられて、お客様の喜ぶ顔が見られればいいんです。経営者としては失格なんでしょうけど、料理人はみんな同じ思いなんじゃないでしょうか。僕が子どもの頃に感じたラーメンを食べる幸せを、お客様にも感じていただけたら嬉しいですね。
麺亭こがね
新潟市南区大通黄金2-7-4
025-201-6077
11:30-14:00/17:00-20:30
日曜休