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港町を活性化させたい。地域の声からできた交流場「みなと図書館」。

全国に約90ヶ所ある、一箱本棚オーナー制度のシェア図書館「みんなの図書館」。本が好きな人の交流の場やまちづくりの拠点としてなど、地域でそれぞれの役割を果たしています。新潟市東区のコンサルティング会社「株式会社 MiKUMARi」が作った「みなと図書館」は、今年の9月末にできた同区初の「みんなの図書館」です。今回は図書館を運営する、白岩さんと岸田さんのおふたりに、オープンまでの経緯や思いを伺ってきました。

 

株式会社 MiKUMARi

白岩 麻衣 Mai Shiraiwa

1988年京都府生まれ。大学卒業後、新潟市でラジオパーソナリティーとして活動したのち、フリーアナウンサーとして活動する。おすすめの本は『ライオンのおやつ』。

 

株式会社 MiKUMARi

岸田 一志 Kazushi Kishida

1988年 大阪府生まれ。大学卒業後、大手自転車チェーンに勤務したのち、白岩さんとともに「株式会社 MiKUMARi」を立ち上げる。おすすめの本は『わすれていいから』。

 

地域の声からはじまった、図書館計画。

――今日はよろしくお願いします。白岩さんが京都のご出身、岸田さんが大阪のご出身なんですね。新潟に来られた理由はどういったのもなのでしょうか。

白岩さん:私はラジオ業界で働きたくて、大学に通いながら、アナウンサースクールに通っていました。その後「FM NIIGATA」に就職して、ラジオパーソナリティ―として新潟で働き始めたんです。

 

岸田さん:僕は自転車の販売店で働いていて、関西や関東の店舗で働いたあと、店舗の立ち上げのために新潟に転勤してきました。

 

――全く違う経緯で、新潟で働くことになったんですね。おふたりはどうやって知り合ったのでしょうか。

岸田さん:FP(ファイナンシャルプランナー)の資格の勉強をふたりともしていて、そこから共通の知人を通して知り合いました。僕は、新潟の店舗の店長として働きはじめたとき、傷病手当や社会保障みたいな国の制度とか、お金のこととかを、従業員に説明できなかったんです。そこからFPの勉強をはじめましたね。

 

白岩さん:私はラジオ局を退社して、フリーのアナウンサーをはじめたときに、お金のことは会社に任せっきりだったことに気づいたんです。給料明細で引かれている金額が何なのか、自分がフリーになったら何をしなきゃいけないのかを知らなくて。1年目は大失敗をしたんです。

 

 

――立場や雇用のかたちが変わるとお金に関して知らなきゃいけないことが多くなったんですね。

白岩さん:経済大学出身なのに、学んだことが何にも役に立ってなかったなって(笑)。そこからFPの勉強をはじめて、岸田と知り合ってから、地元が近いっていうのもあって仲良くなりました。

 

――その後どういった経緯でこの図書館を作ることになったのでしょうか。

白岩さん:「株式会社 MiKUMARi」というコンサルティング会社をふたりで立ち上げました。地元企業とやり取りをしている会社なので、ここは気軽に立ち寄れる場所ではなかったんです。でも誰でも立ち寄れる場所を作りたくて、最初はテイクアウトのコーヒーの提供をはじめました。

 

岸田さん:コーヒーのテイクアウトをやっていく中で、地元企業だけではなく、地域の方の声も拾える機会が増えました。そのなかで、東区ってゆっくり座ってコーヒーを飲んだり、集まって話せたりできる場所が少ないよねっていう声が寄せられたんです。

 

 

――会社をやっているだけでは聞こえなかった声が耳に入ってくるようになったんですね。

岸田さん:企業さんのなかにも、地域でやりたいことがあるけど、どう実践したらいいかわからないと悩む企業さんも多かったんです。そういった企業さんも一緒に巻き込んで、地域でやりたいことを実現させていけたらいいなと思って、ここを作りはじめました。今思えば、コンサルティング会社だからこそできることだったかもしれないですね。

 

県内でも有数の本棚数。「みんなの図書館」ならではの個性豊かな本。

──こちらの内装はDIYによって作られたそうですね。

岸田さん:電気と水道以外は自分たちでやりました。4月頃にこの物件を借り始めたんですけど、業者さんとのやり取りがうまく進まなくて、内装は7月ごろから自分たちで取り掛かりはじめました。

 

白岩さん:以前は印刷屋さんだったんですけど、昔に建てられたのもあって、寸法のちょっとしたズレが多かったんです。壁を張ろうとしても理屈上ではぴったりなのに、いざ始めてみると数センチ足りなかったりして。そこを細かく詰めるのが大変でしたね。

 

――簡単にはいかなかったんですね。完成した図書館の特徴はどんなところにあるのでしょうか?

白岩さん:本棚が170個あることですね。県内の「みんなの図書館」の中でも多い方だと思います。絵本やビジネス書、料理本、小説など、個性的な本が置いてあります。なかにはJANコード(本のカバーについている本を識別するコード)のない古い漫画とか、オーナーさんの書き込みの入った本なんかもあります。

 

 

――おお、びっしりと書き込みが。高校時代の現代文の問題を解いている気分になります(笑)

白岩さん:公立の図書館には置いていないような本に出会えるのも「みんなの図書館」ならではの魅力だと思っています。あとは、本棚にファンがつくのも面白いところですね。今は料理の本が集まった棚が人気で、本に載っている料理を作るために、圧力なべを買った方もいるんです。

 

――ここにある本が新しいことに挑戦するきっかけになっているんですね。おふたりの考える、本の魅力とはどんなものなのでしょうか?

岸田さん:その時々の自分に合わせてフィットする本が変わってくるところですね。あとは、本をじっくり読むことで、先人たちが作ったヒントを頭に入れることができるのも魅力のひとつだと思っています。

 

白岩さん:私は子どものころ、図書館で毎回5冊借りるくらい本が好きでした。本を読むのはもちろん、本屋さんや図書館みたいな、本がある空間が好きですね。ここにもそんな空間を作れたらいいなと思っています。

 

地域の人が自然と集まって、交流ができる場所に。

――改めて、この図書館のコンセプトを教えてください。

白岩さん:地域の交流拠点になるような場所にしたいと思っています。以前はここも映画館が3つもあるような栄えた場所だったんだそうです。そこから徐々に人が減って、でもまた新しい住宅街ができて、人が増えはじめています。うちにも、最近住みはじめた本棚のオーナーさんがいます。新しく住み始めた人と地元の人がつながれるような拠点になったらいいなと思っています。

 

――新たに住みはじめた方にも早速利用されているんですね。

白岩さん:ほかにも、学校から帰ってきた小学生がここで本を読みながらコーラを飲んだりとか、近所のおじいちゃんおばあちゃんがここに集まって、おすそ分けをしていたりとか、自然に集まれる場所になっています。年齢もシーンも問わず、気軽に来ていただけているのはすごく嬉しいですね。

 

 

――どんな人でも交流できる場にしたいんですね。今後はイベントが行われたりもするのでしょうか。

岸田さん:イベントをやりたいっていう声はオーナーさんからも上がっています。交流の場が地域にできたとしても、最初入るのに勇気がいると思うんです。気兼ねなく来てもらえるきっかけとしてイベントもやっていきたいですね。ただ、図書館として本を楽しみたい方もいると思うので、本も楽しめるようなちょうどいいバランスのイベントを開催できたらいいなと思っています。

 

──最後に、今後の目標を教えてください。

白岩さん:沼垂商店街や横浜の商店街みたいに、この港町を活性化できるといいなと思っています。この近くの商店街には「くらしの綜合デパート ワダ」さんや、「ないものはない」の「西田屋」さんみたいな、ちょっと変わっているけど長く続いているお店も多いので、そんな港町全体をまとめるプロジェクトをここから発信したら面白いなと思います。まだ願望でしかないんですけど(笑)

 

岸田さん:その願望は図書館のロゴをふたりで決める段階から話してましたね。ここがうまくいけば、別の場所に新しく交流の場を出したいとも考えています。それもあって図書館内でカフェをはじめたり、植物のブランドラインを作ったり、これからもいろんな人が交流できるきっかけを作っていきたいですね。

 

――今後が楽しみです。ありがとうございました!

 

 

 

みなと図書館/おとなりカフェFu.

新潟市東区長者町15-25

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