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新しいコミュニティが生まれる場、私設図書館「みんなの図書館ぶくぶく」。

2021年11月に燕市にオープンした私設図書館「みんなの図書館ぶくぶく」。この施設は、民間が運営する公共スペースとして、地域コミュニティの活性化や新しいコミュニティの創出に貢献する図書館です。館長の白鳥さんにオープンまでの経緯や私設図書館についていろいろお伺いしてきました。

 

みんなの図書館ぶくぶく

白鳥 みのり Minori Shiratori

1994年三条市生まれ。普段は「玉川堂」社員で、地域活動としてみんなの図書館ぶくぶくの館長を務める。趣味は山登り。最近は落語を聞きに行くのにはまっている。

 

新潟県初の私設図書館。

――まずは「みんなの図書館ぶくぶく」のオープンまでの経緯を教えてください。

白鳥さん:きっかけは、同僚が旅行関係の会社を立ち上げる構想を持っていたことでした。その会社の事務所としてこの場所を使うことを考えていたんですけど、事務所を商店街のど真ん中に置くのなら、せっかくだからもう少し人が入ってくる機能も持たせたら面白いんじゃないかという話になって、その結果、この図書館を開くことになったんです。

 

――でもなぜ私設図書館だったんですか?

白鳥さん:私は本を集めるのが割と好きなんです。でもどんどんたまっていくだけで自分では読み切れないし、人に紹介したい気持ちもずっと持っていたんです。なので自宅の一角で細々と私設図書館みたいなのをやろうかなとか漠然と思っていて、そんなときにちょうど事務所の話が持ち上がったので、私のやりたいことを提案させてもらいました。

 

――ところで私設図書館とは具体的にどういった仕組みなんでしょうか?

白鳥さん:この私設図書館は、各本棚に月額2,000円でオーナーさんを募集して、オーナーさんが自分の好きな本や紹介したい本を置きます。だからひとつひとつの棚は全部違うオーナーさんのスペースなんです。借りたい人はその本を無料で借りることができる、っていう仕組みです。新潟県では初めての試みになります。

 

 

――県外ではこういう取り組みをけっこうやっているんですか?

白鳥さん:ここに「町の小さな図書館」というパンフレットがあって、いちばん最初に私設図書館を始めた静岡県焼津市の「みんなの図書館さんかく」が載っています。その活動に共感した人たちが全国で広がっていっているようなかたちなんです。今ではもう18館にまでなっています。

 

――白鳥さんはこの活動のどんなところに魅かれたんですか?

白鳥さん:公共の場って聞くとまず行政がやっているものっていうイメージが浮かぶと思うんですけど、でも「公共って必ずしも行政がやる必要はない」っていうのが一号店を開いた方の問題提起なんです。公共の場として提供するかたちであれば、来店された方から料金をもらわずに運営することができる仕組みが面白いなって思ったんです。そうすれば民間でも、地域のコミュニケーションが醸成されるようなところを作り上げることができるっていうところに魅かれました。あとは本を置く人がお金を払うってすごい仕組みだなって思いましたね。実際に静岡県焼津市と沼津市の2館を見に行かせてもらいました。

 

 

――そのとき、どんな感想を持ちましたか?

白鳥さん:そこで見学していたときに、お店は休みだったんですけど、店内にいる私たちが見えたようで親子連れのお客さんが入ってきたんです。そこで普通の図書館のように本を返して、また新しい本を借りていったんですよ。あまりにも普通に地域の中で民営の図書館が機能しているのが結構衝撃でした(笑)。「あ、こういうふうにできるんだ」って利用者の方を見て実感がわいたし、私もこういうことができたらいいなって思いました。

 

オープン前から地域の方々と協力して作り上げたスペース。

――オープン当初の周囲の反応はどうでしたか?

白鳥さん:この店舗は数十年前まで家具屋さんだったんです。閉店するときに二階に行く階段とかも潰されていて、今回、一からレイアウトやデザインを考えました。そうしたら、「ちょうど棚をいっぱい捨てるからもらってくれ」っていう建築事務所の方が現れたり、ペンキ塗りしていたらいろんなところから助っ人が現れてみんなで塗ったり(笑)。そういった意味でオープン前から地域の皆様と作り上げたっていう感じがありましたね。

 

 

――じゃあけっこうウェルカムな感じのスタートだったんですね。

白鳥さん:みんな応援してくれる気持ちからか、すぐに棚のオーナーさんも見つかって。割と普通に受け入れてくれたなって思います。私も変な仕組みだなって思っていたので、どうなのかなって思いながら始めたんですけどね(笑)

 

――実際、棚にはどんな本が置かれているんですか?

白鳥さん:ひとつひとつの棚が本当に個性豊かなんです。本のチョイスはもちろんですけど、並べ方だったり本を交換する頻度だったりも人によって全然違いますね。あとは本にめちゃくちゃ付箋が貼ってあったり、線が引かれていたり。あと、ちょっと恥ずかしい感じのメモが挟まっていたりとか(笑)。言うと外されちゃうのでこっそりまた元に戻すんですけど(笑)。内容だけなら、どこで借りても買っても同じ本なんですけど、こういうふうな仕組みでやっているとそこに人間味が表れてきて面白いですね。

 

私設図書館ならではの、自作の本を置いている棚。

――ちなみに、白鳥さんの気になる棚はありますか?

白鳥さん:そうですね。どれも個性があって面白い棚だなと思いますけど。ひとつ挙げるならこの棚ですね。この棚のオーナーさんは絵を描くのがすごく好きな方で、自作した新潟にかんするガイドブックを置かれているんです。本当に新潟県内をまわって自分で作っているんで、ただただすごいなって(笑)。でも、こういう使い方は、この図書館ならではの使い方だと思うし、借りる人にとってもここにしかない本だから。今後はこんなかたちが増えてくると面白いなと思いますね。

 

 

――オーナーさんたちの感想は?

白鳥さん:そんなにまとまって聞くことはないんですけど、いちばん多い反応は「私の本、借りられている」っていう喜びですね。それも面白いなって思うんです。だってお金を払って棚を借りて、しかも知らない人に本を借りていかれて、返ってこないリスクだったり傷んでしまうリスクがあるのに、それでも嬉しいって感じるんですよ。不思議じゃないですか?

 

――ですね(笑)。借りる側の人たちの反応はどうですか?

白鳥さん:珍しい本がいっぱいあるわけではないので、他人の本を借りるっていうのはとても特殊ですよね。たまたまある棚のオーナーさんが来ていて、身の上話とか本の紹介とかが始まったりするんです。そうなってくるともう本屋さんで見る本とはまったく別のものになるんですよ。それで普通だったら借りないような本を借りて帰る方もいらっしゃいますね。

 

 

――どんなところにやりがいを感じますか?

白鳥さん:ここがなかったら会話することがなかったであろう、最近ここに移住してきた子と、近所の昔から住んでいるおじいちゃんが話しているのを見たりとか。あとは前から知っている子がオーナーになってくれて「あ、この子こんな本も読んでるんだ」みたいな発見から新しい会話が生まれたりすることですね。本があることでそれがすごくしやすくなっているんだろうなって思います。ただ場所があって興味あることについて自由に話してくれってなったら、なかなか会話なんて生まれないと思うんです。ここはまず第一に本を借りにくるっていう共通目的みたいなものがあるので自然と会話が生まれやすいですね。

 

――今後の目標は?

白鳥さん:基本的にイベントで集客みたいなことはしないので、集客数とかではなくて、週何回か開ける中でそこに人が来てくれて新しい関りが生まれていくことが存在する意義だと思うので、もっとコミュニケーションが活発になればいいなと思います。今考えていて、もう利用者さんが勝手に始めていることではあるんですけど、本の感想なんかを書いてもらったりっていうのもいいかなって思っています。オーナーの方も引き続き募集中なので気軽に立ち寄ってください。オーナーさんは高校生から60代の方までいます。高校生は店番をすることでオーナー料が無料になるシステムもあるので、気になった方はお声がけくださいね。

 

 

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