ここ数年、国内でのキャンプ人気がとても高まっているようです。県内でこだわりのキャンプアイテムを扱っているネットショップのひとつが「村の鍛冶屋」。運営している三条市の「株式会社山谷産業」には、社屋に併設したショップがあり、キャンプ用品をはじめ燕三条で作られた金属製品が多数販売されています。今回は「株式会社山谷産業」の代表取締役社長・山谷さんに、機能的でスタイリッシュなキャンプアイテムをいろいろ紹介してもらいました。
株式会社山谷産業(村の鍛冶屋)
山谷 武範 Takenori Yamatani
1972年三条市生まれ。東京の工業大学を卒業後、都内の機械部品メーカーに就職し技術やセールスエンジニアとして働く。2007年に新潟に戻って「株式会社山谷産業」に就職。2012年に社長に就任する。サッカー、ゴルフ、ジョギングと身体を動かすことが好き。
——いろんなキャンプ用品や金属製品が並んでますね。こちらは「村の鍛冶屋」のショップなんですね。
山谷さん:そうです。私が代表を務める「株式会社山谷産業」でインターネット通販の「村の鍛冶屋」を運営していて、その実店舗として2017年の「燕三条工場の祭典」というイベントの開催に合わせてオープンしました。厳選したアイテムを手にとってご覧いただけます。
——なるほど。実物を見たり手にとったりすることで、使い勝手も想像できますよね。
山谷さん:そうですね。それに商品を見るだけじゃなくて、包丁で野菜を切ったり、コーヒー豆を挽いてドリップポットでコーヒーを淹れたり、テントを固定するペグやハンマーを使ったり、斧や鉈で薪を割ったりといった体験もできるんです。
——へー、実際に使ってみると使いやすさがわかりますね。
山谷さん:気に入った商品はショップでお買い上げいただけますし、ショップにない商品でも地場産センターやファクトリーショップといった販売場所をご紹介しています。
——ところで「株式会社山谷産業」ってどんな会社なんですか?
山谷さん:以前は「山谷商会」として営業していて、1979年11月に「株式会社山谷産業」として創業しました。もともとは金属製の漁具を扱う会社なんです。
——ん、「漁具」って何ですか?
山谷さん:漁師さんが漁で使う道具ですね。魚を引っ掛けるカギ、網を直す時に使う細針、船の上で使う包丁、牡蠣ナイフ、ホタテ剥き……。それまで漁具は鉄製が主流だったんですけど、錆びないステンレス製に変わった時期だったんですよ。工場に発注して作ってもらったものを漁協に卸売りしていたんです。
——なるほど。それからどうして「村の鍛冶屋」を始めることになったんでしょうか。
山谷さん:20年くらい前に私の母親が病気で体調を崩しまして、父親が遠くまで出張できなくなってしまったんです。それでインターネットを使った通信販売を始めることにしたんですよ。でも漁具だけでは間口が狭いと感じたので、燕三条の職人が作った包丁、ナタ、カマ、ハサミ、クワを一緒に販売することにしたんです。でも当時はホームセンターが全盛だったので、インターネット通販がなかなか理解してもらえなかったようです。
——まだ今みたいにネット通販が一般的じゃなかったんですね。
山谷さん:はい。でも1軒の工場から商品を売ってもらえるようになってから、少しずつ周りの理解も得ることができて、包丁からキッチン用品、ガーデニング用品へとアイテム数を増やしていったんです。
——ネットショップの売れ行き自体はどうだったんでしょうか?
山谷さん:最初は全然売れなかったみたいです(笑)。でも沖縄の離島の漁師さんとか、遠方のお客様を中心に少しずつ売れるようになっていきました。
——「村の鍛冶屋」って、今ではアウトドアアイテムで有名ですよね。いつ頃からそういうアイテムを扱うようになったんですか?
山谷さん:「村の鍛冶屋」自体は少しずつ大きくなってきたんですけど、Amazonとかの大手ネットショップには脅威を感じ続けていて。それで、もっとオリジナル商品を開発しようと考えて、キャンプ好きの専務のアイデアでオリジナルペグの開発をすることになったんです。
——ペグってテントを設営するときに使うペグですよね。
山谷さん:はい、設営したテントやタープが風で飛ばないうようにしたり、ロープを張って固定したりするために地面に打ち込む杭のことです。
——どんなペグを開発したんですか?
山谷さん:一般的なペグは正円なんですが、当社のペグは楕円形になってるんです。正円だと土の中で回転して抜けてしまうことがあるんですけど、楕円形になっているので回転しにくいし抜けにくいんです。その反面、地面から抜くときには回してやると土の中に隙間ができるので抜けやすくなります。あとカラフルにすることで、地面や草むらの中でも見つけやすくて無くしてしまうことが少ないんです。
——あー、なるほど。使いやすそうですね。ペグひとつとってもいろんな工夫があるんですね。
山谷さん:ペグの後はそれに合うようなペグハンマーを作りました。持ちやすさを考えたカーブの柄になっているので、女性でも子どもでも持ちやすいし、使いやすいものになってます。それからハンマーについているツノや穴を使うことで、簡単にペグを引き抜くことができるんです。
——ところでこちらにある「TSBBQ」っていうブランド名は何の略なんですか?
山谷さん:ひとつは「Try! Stylish BBQ(トライ!スタイリッシュバーベキュー)」。お洒落でスタイリッシュなバーベキュースタイルを提案するブランドという意味です。もうひとつは高品質なものづくりをしている「燕三条」という街の頭文字です。ロゴマークにも意味があって、三条の「三」を表す3本線の上を「燕」が飛ぶことで、バーベキューの金網が浮かび上がるんですよ。
——おお、ほんとだ。いろんな意味が込められたブランドなんですね。
山谷さん:三条市が主催する「コト・ミチ人材育成事業」っていうセミナーの一環で、デザイナーと企業がコラボして商品を作ることになって、当社もアートディレクターやプロダクトデザイナーとコラボして「TSBBQ」を立ち上げて、第1弾商品として「ローストスタンド」を作ったんです。
——「TSBBQ」ではほかにどんな製品を作っているんですか?
山谷さん:お洒落でコンパクトな「ペグコンロソロ」っていうバーベキューコンロがあります。Instagramのフォロワーにアンケートをとって、いただいた意見をまとめながら製品として具体化していきました。コンパクトにバーベキューや焚き火を楽しむことができて、簡単に解体して持ち運びができるんです。試作品をモニターのお客様に使っていただき、意見をフィードバックして作っていきました。
——お洒落な上に使いやすそうですね。この「ホットサンドメーカー」はどんな特徴があるんですか?
山谷さん:従来の「ホットサンドメーカー」で作ったホットサンドは、端に隙間ができて具材がポロポロこぼれて、食べにくかったんです。この「ホットサンドメーカー」は端に段差をつけることで、パンの端がしっかりとくっつくようになっているので、具材がこぼれにくいホットサンドが作れるんです。発売してから3年しか経ってないのに6万個も売れた人気商品です。
——今後やってみたいことってありますか?
山谷さん:燕三条の高品質なプロダクトをもっと盛り上げていきたいですね。今までもやってきたんですけど、燕三条の職人をめぐるツアーをこれからもっと開催していきたいと思ってます。あと、空き家を利用した宿泊施設や民泊で燕三条に来たお客様が長期滞在できるようにしたいんです。全国や全世界からお客様を呼べるようになるといいですね。
使い勝手が良く、見た目もお洒落なキャンプアイテムは、キャンプやバーベキューをより楽しくさせてくれそうです。私もいろいろなアイテムを見ているだけで、キャンプに出かけたくなってきました。キャンパーの皆さん、そしてキャンプに興味のある人は、ぜひ「村の鍛冶屋」をチェックしてみてください。
村の鍛冶屋SHOP
〒955-0053 新潟県三条市北入蔵2-2-57
0256-38-5635
10:00-17:00(土曜10:00-16:00)
日曜祝日休