10月も終わりに近づき、急に肌寒くなってきましたね。そんな季節には、ほかほかの温かい食べものが恋しくなります。おでんや肉まん,たい焼きなどいろいろなホットフードがあるなかで、たこ焼きもそのひとつ。今回ご紹介するのは、キッチンカーで米粉を使ったたこ焼きを販売している仲良し姉妹です。
にいたこ
小泉 亜由美 Ayumi Koizumi
1986年南蒲原郡田上町生まれ。アパレルショップ、歯科医院、旅館、寿司店といろいろな職場を経験。19歳のときにはワーキングホリデーを利用してカナダやアメリカで1年間生活する。2021年にキッチンカーでたこ焼き専門店「にいたこ」をオープン。趣味は晩酌で頭のなかはおつまみのことで一杯。
にいたこ
鈴木 真美和 Mabika suzuki
1982年南蒲原郡田上町生まれ。お菓子工場やタイ料理店、給食センターなど様々な職業を経験し、妹のはじめた「にいたこ」を手伝いはじめる。漫画が好きで少年漫画から少女漫画まで幅広く読む。
——こちらのキッチンカーは姉妹で営業されているんですよね。
小泉さん:私が姉を誘ってはじめました。主に私が焼き手を担当して、姉には売り手をお願いしています。
——以前はどんなことをされてきたんですか?
小泉さん:アパレルショップ、歯科医院、旅館、寿司屋……いろんなところで働いてきました。音楽やダンスをやりたくてカナダやアメリカへ行ったこともあるんですよ(笑)
——本当にいろんな経験を積んできたんですね(笑)。カナダやアメリカでの話が気になります。
小泉さん:ワーキングホリデーを利用して1年間暮らしていたんですけど、中2レベルの英語力しかなかったので大変でしたね(笑)。英語が話せなかったために1週間でクビになった職場もありました。それからはあまり会話を必要としない、ガーデニングの仕事をしていたんですよ。
——それは大変でしたね。それで、音楽やダンスはどうだったんですか?
小泉さん:ライブハウスで歌ったり、ダンサーのオーディションを受けたりしましたけど、夢を諦めて日本に帰ってきました。帰国後にはじめて飲食店で働いてみて、自分らしく働くことができるのが飲食業だと気づいたんです。
——ようやく自分の道を見つけたわけですね。お姉さんの鈴木さんは、今までどんなことをされてきたんですか?
鈴木さん:工場スタッフ、事務員、サービススタッフ……私も妹と同じくいろんな仕事をしてきました。早く自立したかったので、高校を卒業したらすぐに家を出て、ひとり暮らしをはじめたんです。それからは引っ越して住む場所が変わるたびに転職していました。
——飲食業は経験していなかったんでしょうか?
鈴木さん:タイ料理の店ではじめて飲食業を経験して、接客の楽しさを知りました。でも人と接する仕事の難しさを感じて、いろいろ考えていたら疲れちゃったんですよ。もう二度と接客の仕事はしたくないと思ったので、給食センターで働きはじめました。
——そんなに嫌になってしまったんですか?
鈴木さん:妹は夢見がちで楽観的なタイプなんですけど、私は現実的で突き詰めて考えるタイプなんです。何かトラブルがあったりすると、考えに考えて最後は「明日地球が爆発すればいいのに」というところに落ち着くんですよ(笑)
——たこ焼きのキッチンカー「にいたこ」をはじめたのはどうしてなんですか?
小泉さん:たこ焼きが好きだったから(笑)
——直球ですね(笑)
小泉さん:会社員じゃなくって自分でできる仕事を探してきたんですよ。たこ焼きはみんなが慣れ親しんでいる食べものなのに専門店は少ないんです。特に地元の田上町にはまったくなかったんですよ。そこでたこ焼きの専門店をやってみようと思って、新潟市にあるたこ焼き店で修業しました。
——そこでたこ焼きの焼き方を学んだんですね。
小泉さん:たこ焼きは家でもよく焼いていたので、焼き方は独学なんですよ(笑)。ただ、たこ焼き専門店としての営業を学ばせていただきました。スタッフ同士の仲も良くて楽しい職場だったので、なかなか辞められなくなっちゃったんです。いつまでも独立準備をはじめない私を見かねて、姉から注意されてしまいました(笑)
——鈴木さんは、どのタイミングで手伝いはじめたんですか?
鈴木さん:妹がキッチンカーをはじめてすぐ「週末は忙しくて手が回らないから手伝ってほしい」と誘われて、タイ料理店のときに経験した接客の楽しさを思い出して手伝うことにしました。
——バリエーション豊かなたこ焼きメニューが並んでいますね。
小泉さん:いろんなメニューを開発したんですけど、選択肢が多いとお客様が迷って大変だと思ったので、とりあえず10品に絞ったんです。そこからはどれも残したくて迷ってしまったので、友達や家族に試食してもらった上でアンケートをとって5品に絞りました(笑)
——厳選されたメニューのなかで人気があるのはどれでしょう?
小泉さん:いちばん人気があるのは「岩塩マヨ」ですね。生地の味がしっかりしていて、ソースの味に負けていないんです。「和風あんかけマヨ」も人気があってリピーターが多いんですよ。他にも店頭に掲示していない、インスタグラムのフォロワーさんだけが知っている裏メニューもあります。
——お話を聞くだけでも美味しそうですね。たこ焼きのこだわりってあるんですか?
小泉さん:新潟らしいたこ焼きにしたかったので、生地に県産コシヒカリの米粉をブレンドしています。その分原価はかかるんだけど、そこにはこだわりたかったんですよ。あと私は柔らかいたこ焼きが好きなので、外はふんわり、内はとろっとろのたこ焼きになっています。ひっくり返せる限界まで柔らかくしました(笑)
——キッチンカーで営業をはじめたのはどうしてなんですか?
小泉さん:はじめたのがコロナ禍の頃だったのと、開業資金が少なく済むというメリットを考えたからです。今ではキッチンカーでよかったと思っています(笑)
——でもキッチンカーって、店舗営業と違って不便なことも多いでしょう?
小泉さん:傾斜があると生地が偏ってしまって、うまく焼けないですね。一度すごい傾斜の坂道で出店したことがあって、そのときは石を集めてコンロの下に敷いて平行にしました。でも私は同じ場所で同じことをするよりも、毎回違う場所で営業するキッチンカーの方が向いているみたいです(笑)
鈴木さん:私も毎回出勤場所が違って新鮮に感じています(笑)。お客様はもちろん、他の出店者さんや美味しいものとの出会いも楽しいですね。お休みの日には知り合いのキッチンカーがどこに出店しているのかを調べて、わざわざ食べに行ったりもするんですよ(笑)
——鈴木さんはどんな接客を心掛けているんでしょうか?
鈴木さん:マニュアル通りにはならないよう、心を込めた接客をするようにしています。特にお子様にはお菓子をプレゼントしたりして、気を使うようにしていますね。
——なるほど。それにしても、おふたりとも仲がいいですね(笑)
鈴木さん:子どもの頃からずっと仲がいいので、営業中もお腹を抱えるほど笑いあったりしています(笑)
——お互いに相手をどんなふうに思っています?
小泉さん:姉は口に出して言わなくてもわかってくれて、してほしいことをしてくれるんです。あと、いつもメイクがキマっているのを見習いたいですね(笑)
鈴木さん:私はお客様と接するから、少しでも印象に残るようにメイクを派手めにしてるの(笑)
——では、鈴木さんから見た妹さんは?
鈴木さん:手間のかかるでっかい赤ちゃんですね(笑)
にいたこ