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駐車場でマルシェを開催している、見附市今町「割烹柳屋」の女将さん。

見附市今町の老舗「割烹柳屋(かっぽうやなぎや)」。その女将さんが中心となり、「今Coco!マルシェ」という割烹の駐車場を使ったイベントを開催しているという噂を聞きつけ、さっそく女将の味方さんにお話を聞きに行ってきました。

 

 

割烹柳屋

味方 貴久恵 Kikue Mikata

1976年大分県生まれ。静岡県熱海市の国際観光専門学校に通いながら老舗ホテルで働いているときにご主人と出会い、結婚。ご主人の実家である見附市の「割烹柳屋」で女将となる。2021年4月からは割烹駐車場を利用した「今Coco!マルシェ」を開催。最近は時間ができたのでパン作り教室に通っている。

 

九州から雪国新潟にやってきて感じたギャップ。

——「割烹柳屋」さんはどのくらい歴史のある割烹なんですか?

味方さん:寛政6年 ……つまり230年近く前に先代が旅籠を始めたのが起こりです。当時の今町には舟航路の船着場がいくつもあって、その周辺に料亭や割烹料理店が集まっていたそうです。あと、古くから繊維産業が栄えていたので、全国から商人が集まってきたんです。彼らを満足させるために、見附の料理人たちは腕を磨いてきたんですよ。

 

 

——230年の歴史ってすごいですね。ちなみにご主人は何代目なんですか?

味方さん:9代目になります。東京で3年、静岡の熱海で4年修行してから見附に戻って柳屋で働き始めたんです。私とは熱海の老舗ホテルで働いていたときに出会ったんですよ。

 

——おお、そうだったんですね。ちなみにそのとき女将さんは何をしていたんですか?

味方さん:私は九州の大分県出身なんですけど、観光関係の仕事をしたくて熱海にあった国際観光専門学校に入学しました。どうしてわざわざ熱海の学校に行ったのかっていうと、その学校はホテルや旅館の仕事を紹介してくれて、実際に働きながら勉強することができたからなんです。私は学校から派遣されたホテルで、お客様の食事係をしていました。

 

——それでご主人と出会って、ご主人のご実家のある見附で暮らしはじめたわけですね。大分と新潟はだいぶ離れていますけど、生活面などでギャップを感じることはありましたか?

味方さん:調味料の味が大分とはまったく違ったんですよね。あと雪が積もるのが珍しかったです。

 

——やっぱり九州では雪が積もらないんですよね。

味方さん:そうですね。だから新潟に来たばかりの冬は、1時間でも2時間でも窓の外を見て、雪が積もるのを観察してましたね(笑)。あと翌日に熱が出るほど頑張って雪の中で雪だるまを作ったりね(笑)。逆に困った点でいえば、長靴とかアノラックとか、子供衣類の冬支度に戸惑ったり、雪道を自動車で運転するのが怖かったりしました。

 

——話す言葉とかも少し違ったりしますよね。

味方さん:この地域の方言がよくわからなくて、ニュアンスによっては怒られているように感じることもあったんです。だから最初の頃は怖くて電話に出れなかったですね(笑)。今では方言にも慣れたし、きつい言葉でも温かい人が多いことがわかりました。友達もたくさんできていろいろ助けていただいています。

 

出しゃばらず飽きのこない料理と、フレンドリーなおもてなし。

——柳屋さんのこだわりを教えてください。

味方さん:料理を作っている主人からよく聞くのは、「とにかく料理だけは譲れない」という言葉です。旬の食材にこだわっているので、その日の仕入れによって献立を決めるようにしているんです。それから出汁へのこだわりが強くて、季節によって味を変えています。夏はあっさり、冬はこってりしたダシを使っているんですよ。私もわりと最近知ったんです(笑)

 

——とても細かい気配りをしているんですね。目指しているのはどんな料理なんでしょうか。

味方さん:出しゃばり過ぎず、飽きのこない味を目指しています。店の内装も料理も見た目はシンプルなんだけど、味で感動してほしいと思っているんです。

 

——なるほど。そんなこだわりで作るおすすめの料理を教えてください。

味方さん:「ごどうふ」っていう、豆腐を葛で練り固めた料理です。元は「有田焼」で有名な佐賀県の有田に伝わる「呉豆腐」っていう郷土料理なんです。

 

——てっきり今町の郷土料理なのかと思いました(笑)

味方さん:店舗を改装するために8ヶ月間割烹をお休みした時期があったんです。そのとき私の里帰りも兼ねて九州旅行をして、佐賀県にある有田焼の窯元にも立ち寄ったんですよ。そのときに食べたのが「呉豆腐」でした。主人が目指している味にとても近かったので、リニューアルオープンした柳屋の名物にしようということになったんです。

 

——豆腐っぽいのに、ねっとりした濃厚な食感もあって美味しいですね。女将さんがお客さんのおもてなしで気をつけていることも教えてください。

味方さん:柳屋は店内に時計を置いていないんです。それは「俗世間から離れて、時間を気にせず居心地よく過ごしてほしい」という思いがあるからです。だから自分の家みたいに寛いでいただきたいと思っています。お客様にもよりますが、私はできるだけフレンドリーに接するようにしていますね。

 

割烹の駐車場で開かれる「今Coco!マルシェ」。

——女将さんは「今Coco!マルシェ」というイベントを開催していますよね。こちらはどんなイベントなんですか?

味方さん:柳屋の駐車場スペースを使って毎週土日に開催しているマルシェです。ハンドメイド雑貨、焼菓子、パン、お惣菜の販売をしたり、ワークショップを開いたりしています。

 

——どんないきさつで始めたんでしょうか。

味方さん:新型ウィルス感染症の影響で割烹の営業が1年間止まってしまったんです。何とかしなければと思って、最初は昔からやりたかったカフェをやろうかとも考えたんですが、時間もお金も余裕がなかったんですよ。そんなときに柳屋のガレージに停めてあった送迎バスを売却することになって、広いスペースができたんです。それで今年の4月から知り合いに声をかけてマルシェを始めてみました。

 

 

——そういういきさつだったんですか。やってみてどうでした?

味方さん:最初は告知に慣れていないせいもあって、集客がうまくいきませんでした。でも回を重ねるごとに人が集まるようになってうれしかったですね。ただ客層や客数がまったく読めないんですよ。快晴なのにお客様が来なかったり、雨降りなのにたくさん来たり、暴風雨の日に限って惣菜にお客様が並んで品切れしたりしていました。

 

——客数が見込めないと商品数も計算できないんですね(笑)。逆にやってみてメリットはありましたか?

味方さん:今は人との出会いが難しいご時世ですけど、いろいろな人とつながることができたのはよかったと思います。私は大分から新潟に来て、親戚も幼なじみもいない土地で暮らしてきたんですけど、子どものママ友さんやご近所さんと仲良くしていただくことで何とかやってこれたんです。そういった人のつながりはこれからも大切にしていきたいですね。

 

——では、これからも「今Coco!マルシェ」を続けていくんですね。

味方さん:そうですね。ただ、会場になっている駐車場には電気も水道もないので、夏場は食べ物を扱うのが心配なんですよ。ですから、暑い夏の間は一旦お休みさせていただいて、涼しくなった秋頃に再開する予定なんです。今はどんなかたちで再開しようか構想中です。

 

 

南国の大分県から雪国の新潟県にやってきて、老舗「割烹柳屋」の女将を続けてきた味方さん。今年からは駐車場を使った「今Coco!マルシェ」を開催して、人とのつながりを大切につなぎ続けています。残念ながらしばらくはお休みになってしまいますが、秋にはパワーアップして再開するそうですので、その日を楽しみに待ちたいですね。

 

 

割烹柳屋

新潟県見附市今町1-1-8

0258-66-3166

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