築140年以上の歴史をつなぐ、
犬も人も心地よい「二ノ荘」
カフェ
2026.01.12
「古民家」と「犬」が好きな方におすすめのお店を発見しました。2024年に三条市にオープンした「二ノ荘」は、明治14(1881)年に建てられた蔵を含む古民家を改装した、犬と人のための複合施設です。お店を運営するのはトリミングを担当する山本さんと、カットを中心に担当する実のお姉さんのおふたり。大規模なリノベーションを経てオープンした背景や、お店への想いを聞いてきました。
山本 翠
Midori Yamamoto(二ノ荘)
1988年三条市生まれ。県外の大学を卒業後、トリミングの専門学校に通う。Uターンで地元に戻り、ペットショップや動物病院での勤務を経て、2024年春に実姉とともに「二ノ荘」をオープン。店舗では主にトリミングを担当している。大河ドラマをみるのが趣味。
犬も人も過ごしやすい空間を目指して。
――以前は電気がつくロゴ看板だけだったと記憶していますが、”DOG FRIENDLY“と書かれた看板が増えましたね。
山本さん:通り沿いではあるんですが、場所が分かりにくいらしくて、迷われる方が多いんですよね。何屋さんか分からないと言われることもあって、一目で伝わるように看板を足しました。
――たしかに、分かっていたのに私もよく通り過ぎてしまいました(笑)。「二ノ荘」さんは、ドッグカフェということで合っていますか?
山本さん:トリミングをやっていたり、ドッグランを併設したりしていますが、ドッグカフェという括りではありません。“DOG FRIENDLY”という言葉の通り、お店として犬を歓迎していて安心して過ごせるようにしていますが、犬を連れていない人のご利用も大歓迎です。
――通常のカフェ利用ができるのですね。カフェのメインは何でしょうか?
山本さん:カフェではランチの提供をしています。メニューは週替わりで、定番の二ノ荘プレートの内容はその時々で変わりますが、ハンバーグやチーズカレードリア、漬け丼などを季節のお野菜とともにお出ししています。台湾紅茶やオーガニックのルイボスティーをセットにしていて、身体に優しいランチです。
――確かアイスクリームも添加物不使用のものでしたよね?
山本さん:極力自然なもの、余分なものが入っていないものがよくて、無添加を選んでいます。アイスの提供をしているのは、私たちも含め犬と暮らしている人にアイス好きな方が多いからなんです。ワンちゃんと過ごすのはものすごいパワーと体力を使うため、おでかけのついでに手軽に、外でも食べられるアイスは人気があります。
――カフェ以外にも、2階は犬と一緒に泊まれる宿になっているんですよね?
山本さん:1日1組限定で、 愛犬と泊まれる町宿として営業しています。利用される方は、長距離ドライブの途中の方もいます。ゆっくり足を伸ばして一緒に眠れる場所があることを喜んでもらえるのが嬉しいです。


Advertisement
先祖の想いを受け継ぎ、建物を再利用。
――店内の内装や古箪笥を利用した什器がとても素敵ですが、ここは築およそどのくらいの古民家なのでしょうか?
山本さん:築140年以上になると思います。内装やコンセプトに関しては姉が今までの経験を活かして進めてくれたので、お任せしています。
――現代風のおしゃれなカフェではありつつ、昔の面影もしっかり残っていますよね。
お姉さん:店舗の入口からまっすぐ奥にあたる部分が床の間で、床柱という家の中心になる柱をそのまま活かしています。この場所は書院造になっていて、床脇の違い棚もありますし、ベンチにしているところは正面に明かり取りの窓がついた付書院と呼ばれる文机でした。
――確かに、言われてみると床の間の雰囲気がわかります。古民家でお店を開くことにしたきっかけは何だったのでしょうか?
山本さん:ここは私たち姉妹の母の実家なんです。人が住まなくなってからしばらく経って、古い建物だしどうにかしないといけないよねと家族で話していたのですが、私も姉もそれぞれ仕事をしていたので、ここでお店をやろうとはまったく考えていませんでした。
お姉さん:最初は賃貸に出すつもりで、三条市の空き家活用プロジェクトさんにお願いして募集していました。立地的に街中で、広さもあり古い蔵もあるため、内見にはたくさん来ていただけたんです。ただ、実際に利用するためには手直し必要な箇所もあったので、結局借り手つかずで……。
――そこからどのような流れで姉妹でお店をやろう、と決意されたのですか?
山本さん:昔から、動物も一緒に過ごせる場所をつくるのが家族の夢だったんです。具体的に何か考えていたわけではなかったんですが、いつかは、みたいな想いはありました。
お姉さん:私たちは小さい頃から動物と過ごすことが当たり前でした。でもこの辺りって、そういう場所がまだ少ないですよね。この子たちと生きやすい場所を増やしたくて、妹はトリマーとしての専門技術を持っているので、「じゃあ私たちがやろうか」と。そこからはトントンとご縁がつながって、自然にお店を出す方向に進んでいきました。

Advertisement
原体験はスイスのまち。
動物に優しいまちづくりをしていきたい。
――賃貸でもなかなか借り手がつかなかったとおっしゃっていましたが、ここまで改装するのは大変ではなかったですか?
山本さん:とっても大変でした。竣工の一ヶ月前まで大工さんから「本当にやるの?」「やめるなら今だよ」って毎回言われたくらい、手間暇を惜しまず(笑)。大工さんにはかなりご苦労をおかけしたと思います。
――それでも辞めなかったのはなぜでしょうか?
お姉さん:私も妹も一度決めたら曲げない性格なのもあるんですが、やっぱり小さな頃から遊びに来ていた祖父母の家がなくなってしまうのが寂しかったのだと思います。今だともう作れない建具や欄間の美しさ、柱にも歴史が詰まっているので。
――住んでいた場所をお孫さんがお店として使ってくれるなんて、きっと嬉しいでしょうね。
お姉さん:喜んでくれているといいな、と思います。金物屋の初代だった私たちの高祖父にあたる方は、とってもワンコ好きだったので、後押ししてくれたのかなと感じています。
――これからの目標や、やりたいことはありますか?
お姉さん:お店の目標として、「ニノ荘があるから三条に行ってみよう!」と、うちが三条を訪れる理由になれたらいいねとふたりで話しています。あと、原体験になっている光景があって、それが家族旅行で訪れたスイスです。スイスでは普通に犬と一緒に電車に乗れて、お店にもほとんど一緒に入ることができました。犬と人の垣根がないというか、家族だから当たり前に一緒だという雰囲気がまちとしてあったんです。
――補助犬だけじゃなくってことですよね。それは日本とは全然違いますね。
山本さん:犬と人が当たり前に共存している風景がずっと頭に残っていて、自分たちの暮らすまちもそうであったらいいなと。当然、動物が苦手な方やアレルギーなどの心配はあるので配慮は必要ですが、動物に優しいまちは人にとっても優しいまちになると思っています。そんなまちをつくるきっかけや、要素のひとつになれたら嬉しいです。

Advertisement


