「見る人を強制的にほっこりさせたい」というコンセプトで、ネコやキリン、ゾウなど動物のイラストを描いているイラストレーター「西山りっく」。人の数だけ物語があるように、動物の数だけ物語を描いている、というりっくさんの絵は、片隅にちょこんと登場するだけの一匹の動物にすら、「コーヒーを飲んで喜んでいる」「あの動物と話している」といった物語が設定されているから驚きです。今回は彼女の描く動物たちの魅力を聞いてきました。
西山りっく
イラストレーター・絵本作家。2015年よりイラストレーターとしての活動を開始。新潟市観光課「新潟駅から始まる6つのストーリープロジェクト(2019年)」、JR東日本「現美新幹線5thANNIVERSARY(2020年)」のイラストを担当。家具職人とのコラボブランド「mofmok」も展開。
――りっくさんの絵って、どれも動物が主役ですよね。
りっくさん:そうなんですよ。ワニやネコ、イヌ、キリン、ゾウ……とにかく動物が好きで。いや、カエルや深海魚も好きかな(笑)。うん、動物がメインだけど、生き物全般が大好きで描いています。
――ちなみにどんなところが好きなんですか?
りっくさん:造形や仕草ですね。あくまで見た目が好きなんです。スコティッシュ・フォールドがどうとか、そういう品種とかの難しい名前は覚えられないし、私、ネコアレルギーなんで(笑)
――ネコアレルギー……。なるほど、あくまで見た目、なんですね。
りっくさん:そうそう。さぁ、絵の話でもしますか(笑)
――そうしましょう。えっと……描いている絵にコンセプトってあるんですか?
りっくさん:「見る人を強制的にほっこりさせたい」というコンセプトがあって、人の数だけ物語があるように、動物の数だけ物語を描いています。よく見てもらうと1枚の絵に描かれているちょっとした動物にも「誰かを待っている」とか、それぞれのシーンが必ずあるんですよ。
――それぞれのシーン? なんか、人間っぽい感じがしますね。
りっくさん:人間くさい動物を描いているから、その通りです。絵を描くときに自分の脳内で物語の世界を作って、端っこにいる動物でも何をしているかを決めていくというか、決まっているというか……。だから何をしているのか、どんなことを考えているのか、それぞれ物語が設定されているから、人間っぽい生々しい絵になっているんだと思います。
――りっくさんは、どんなキッカケで絵を描くことを仕事にしようと思ったんですか?
りっくさん:昔、飲食店を経営していたときがあったんです。でも、いろいろあって暇で。そんなときに「ただスマホをいじっていても……」と思って、昔から好きだった絵を描いて売ってみたんです。ポストカードサイズの原画を500円でね。
――ふむふむ。売れ行きはどうでしたか?
りっくさん:それが売れたんです。昔から絵を褒められることはあったけど、天狗になっちゃいそうだからまともに受け止めていませんでした。でも売れた事実があったから「これをやってみよう」と思えて、飲食業から転身する決意をしたんですよね。
――そんなキッカケがあったんですね。
りっくさん:昔は、褒めてくれる気持ちに対して自己肯定感がとても低かったんですよ。ストイックをこじらせ過ぎているというか。でも、受け入れられたからこそ、今では絵を描くことを仕事にできていると思っています。
――この仕事をはじめてから、苦労ってありましたか?
りっくさん:苦労というか、はじめは何をしたらいいのかわからなくて、フリマでポストカードを売ったり、イラストをアクセサリーにしたりしていました。でも、このままだとイラストレーターじゃなくて、ハンドメイド作家になってしまうと思って困惑していた時期はありましたね。
――イラストレーターって、展開していくのが難しそうですよね……。
りっくさん:ですね。でも、知人とライブペイントのイベントを開催したのをキッカケに、西蒲区の野外音楽フェス「いわむロックFESTIVAL」に関わったり、アーティストのCDジャケットを描かせてもらえるようになったり、仕事が発展していって。
――おお!、じゃあ、それからはいろんな依頼が?
りっくさん:そうですね。ちょこっと仕事をさせてもらえるようになったときに、ある企業の人が私の絵を目にしてくれたんです。それで気に入ってくれて、仕事の依頼が来て。新潟市観光課「新潟駅から始まる6つのストーリープロジェクト(2019年)」、JR東日本「現美新幹線5thANNIVERSARY(2020年)」とかのイラストを担当させてもらう、大きな仕事に巡り合うことができたんです。
――かなり大きな仕事じゃないですか。すごいです。ちなみにりっくさんには、いつか描いてみたい絵ってあるんですか?
りっくさん:ん~……、スライムみたいなレベルの幽霊やおばけが、どうやったら貞子級のレジェンドになれるのか。そんな物語ですね。
――え、動物じゃないんですね(笑)
西山りっく