コマ回しや凧揚げ、お手玉と並んで、昔から伝わってきた遊びのひとつに「けん玉」があります。最近はそのけん玉も様変わりをし、よりアクロバティックな技を楽しむようになっているんです。今回は昨年の「けん玉ワールドカップ」女性の部で優勝した、中学3年生の山田希羽さんにお会いし、けん玉の魅力やこれからの夢を聞いてきました。
山田 希羽 Nowa Yamada
2009年新潟市生まれ。小学2年生の頃からけん玉をはじめ腕を磨く。2023年に開催された「けん玉ワールドカップ」女性の部で優勝し、世界チャンピオンに輝いた。けん玉の他に洋楽を聴いたり絵を描いたりすることも好き。
——「けん玉ワールドカップ」女性の部の優勝、おめでとうございます。どんな大会だったんですか?
希羽さん:けん玉発祥の地として知られる広島県の廿日市(はつかいち)市で昨年の7月に開かれた大会で、17の国や地域から876人が参加してけん玉の技術を競いました。
——大きな大会だったんですね。そもそも、どうしてけん玉にハマったのか教えてください。
希羽さん:小学2年生のときに通っていた学童クラブの押し入れで、けん玉を見つけて遊んでみたのがきっかけでした。初めてお皿に玉が乗ったことが嬉しくて、その後もけん玉で遊ぶようになったんです。
——早速けん玉を買ってもらったとか?
希羽さん:お母さんに「誕生日のプレゼントにけん玉がほしい」とリクエストしたら「すぐに飽きるからダメ」って却下されたんです(笑)。だから仕方なく、叔母さんにお願いして買ってもらいました。
——そんなに飽きっぽかったんですか?(笑)
希羽さん:お母さんにはそう思われていたみたいです(笑)。その後、学校の参観日に「昔あそび発表会」というイベントがあったんです。そのイベントでけん玉を披露することになったんですけど、お母さんを驚かせたかったので、当日までけん玉の練習をしているところを見せないようにしていました。
——可愛いですね(笑)
希羽さん:お母さんは思った通り、私がけん玉に飽きたと思っていたみたいです。でも参観日の「昔あそび発表会」で披露したけん玉を見て、知らないうちに上達していてびっくりしていました(笑)
——サプライズは大成功だったわけですね(笑)。その後も、けん玉にどんどんのめり込んでいったと。
希羽さん:「CUT IN PARK(カットインパーク)」っていう、ダンスやスケボー、ストリートバスケといったカルチャーを紹介するイベントでおこなわれたけん玉の大会で、初めて「昔あそび」とは違った空中技やジャグリングを見て、いつか自分も「CUT IN PARK」に参加したいと思うようになり、それから本格的にけん玉の練習をするようになりました。
——どんなふうに本格的な練習をはじめたんでしょう?
希羽さん:けん玉教室に通って基本を学びながら、子どもだけじゃなく大人とも一緒にけん玉を楽しむようになりました。私の所属していたけん玉チームはストリートブランドを扱うセレクトショップが主催していたので、お洒落な大人が多かったんですけど、皆さんあたたかくてすぐに馴染むことができました。けん玉のストリート技なんかもたくさん教えてもらいましたね。
——とてもいい雰囲気だったんですね。
希羽さん:けん玉をやっている人って、みんなフレンドリーなんですよ。簡単にできるような技でも初めて成功した人がいたら、自分のことのように喜んでくれるんです。なかなか上手くできなくて諦めようとしたときも、「絶対できるから、もうちょっと頑張ろう」ってポジティブに励ましてくれました。そのおかげで諦めずに挑戦するようマインドを持てるようになりましたね。
——本格的にけん玉をはじめたことで、それまでとは変わったんでしょうか?
希羽さん:新潟にはけん玉のイベントが少ないので、母から県外のイベントに連れて行ってもらうことが多くなりました。イベントで出会った人と仲良くなったり、けん玉テクニックを教わったりして、より一層広く深く楽しめるようになったんです。
——どんどん世界が広がっていきますね。
希羽さん:インスタグラムに投稿されているけん玉動画を見るだけじゃなく、自分のけん玉動画も投稿するようになったんです。それを見た方からアドバイスをいただくこともあって、遠くに住んでいるけん玉プレイヤーとも交流していました。外国の方からも英語のコメントをいただいたりして、反響は大きかったみたいです(笑)
——外国の方まで見てくれるんですね。
希羽さん:そのおかげでアメリカのチームに所属することができて、スポンサーになっていただけました。そこの製品を使ったけん玉の技をインスタに投稿して、感想をレポートしたりしています。
——へぇ〜、それはすごい。このたび「けん玉ワールドカップ」女性の部で優勝したわけですけど、他にはどんな大会に挑戦したんですか?
希羽さん:けん玉を本格的にはじめた1年後に、最初の目標だった「CUT IN PARK」のけん玉大会に出場して、ビギナーの部で初優勝することができました。
——技がなかなか成功しないときは、諦めたくなりませんか?(笑)
希羽さん:何時間チャレンジを続けても成功できないときは辛いですね(笑)。でも、その分成功したときの達成感は計り知れないものがあるんです。けん玉をはじめて身についたことは「諦めずに挑戦し続ければ、必ずできるようになる」ということです。
——そこもけん玉の魅力なんでしょうね。
希羽さん:コンパクトで持ち歩けるので、いつでもどこでも気軽に楽しめることも魅力ですね。あと老若男女問わず誰でも楽しむことができるし、いろんな世代の人と幅広く交流を楽しむこともできます。
——気軽にはじめられて、どんどん世界が広がっていくんですね。これからは、どんなことを目標にけん玉を続けていこうと思いますか?
希羽さん:もっと多くの人たちの前でけん玉パフォーマンスを披露して、決して昔の遊びではなく、今風にかっこよく楽しめるものだということを伝えていきたいですね。そして、いつかは私のけん玉モデルができたらいいな(笑)
山田希羽