Things

お腹と心を満たすおもてなしの店。大皿料理の「おばんざい家 卯」。

新潟駅前の「おばんざい家 卯」で味わえるのは、カウンターにずらりと並ぶ大皿のおばんざい。どれも特別なお料理ではなく、普段の食卓に登場するもの。飽きずにホッとする味を届けている女将の坂井さんは、ずっと前から「いつか母親と家庭料理のお店を」と夢見ていたそう。お店をはじめるきっかけやおばんざいメニューの味付けの秘密など、いろいろとお話を聞いてきました。

 

おばんざい家 卯

坂井 弥由紀 Miyuki Sakai

1975年五泉市生まれ。高校卒業後、キャディーとして就職。飲食業や営業、モデル活動、フランス手工芸教室の講師などを経て、2023年11月に「おばんざい家 卯」をオープン。女将さんを務める。

 

いつものお料理で、身体を元気に。

――「おばんざい家 卯」さんがどんなお店なのか教えてください。

坂井さん:大切にしているのは「口から入るもので身体はできる」という考えです。季節の食材に愛情と真心をたっぷり込めて、お腹と心を満たすおもてなしをしたいと思っています。昨今はアレルギーを持っている方も多いですし、添加物などの影響で身体に不調をきたすといったこともありますよね。そんな中で、手は加えるけれどもなるべく添加物は加えない食事をお出ししたいと思っているんです。きっと身体は喜ぶし、長生きができて「みんなハッピー」になるんじゃないかしら。

 

——その通りですよね。ただ若い頃はあまり食事を意識していなかったです(笑)

坂井さん:ですよね(笑)。私も。そうすると吹き出物ができたりしてね。身体を重く感じたり、体調が優れなかったりするんですよね。今になって、食に関する知識を得てみると「あぁ、だからあのとき調子が悪かったんだな」って、点と点が結ばれる感じがします。

 

 

——食べ物に気をつける習慣は、小さい頃からありました?

坂井さん:子供の頃から母が私に添加物を極力抑えたお料理を作ってくれたから、今も健康でいられるんです。それって宝ですよね。でもひとり暮らしをはじめた頃なんか、料理が面倒で作らないってことはありました。でも結局、体調が良くないときは自分で作ったご飯を食べると回復するんです。「やっぱり手料理って身体にいいんだな」って実感しましたね。

 

——そういう思いもあって、お店ではお手製の料理を出されているんでしょうか?

坂井さん:できるだけ旬のものを、そして、素材そのままを美味しく召し上がっていただけるように意識しています。季節感も大事にしていますかね。ただ私は手の込んだ料理ができるわけでなく、主婦の延長線上みたいな感じで、皆さんがご家庭で作るようなお料理をお店で作っているんです。やっぱり母にはかないませんね。煮物だとかは母の味がやっぱり美味しい。同じ工程で作ってもなぜかそうなんですよ。主婦の熟練の技なんでしょうか。

 

20年来の夢を叶えた今、支えは「美味しかった」の言葉。

——メニューはカウンターに並んでいる大皿料理以外にもあるんですか?

坂井さん:大皿のおばんざいは日替わりで5、6品用意しています。それ以外にグランドメニューがありますよ。

 

——ちなみに今日のおばんざいメニューは?

坂井さん:肉じゃがと鶏の照り焼き、デリ風サラダ、わらびの醤油漬け。他にもう何品かが今日のおばんざいです。

 

——仕入れに合わせて作るものを変えているんですかね?

坂井さん:お買い物に行って、旬のものが安かったりするじゃないですか。それを見て「美味しそうなレンコンがあったからレンコンのきんぴらにしよう」とか、そういう感じで決めています。

 

——人が作った家庭料理ってまた格別なんですよね(笑)

坂井さん:コンビニも含めて外で食事を済ます人って多いですよね。お勤めされている方は、飲み会の機会も増えているでしょう。だからこそ、うちでは「なんかお袋の味みたいだな」「家に帰ってきたみたいだな」って思ってもらえるお食事を提供したいんですよね。そういう味って、すごく大切ですから。「これ、この前お母ちゃんが作ってた」「お母ちゃん思い出した」とか言われると、最高に嬉しくなっちゃう。

 

 

――お店はお母さまと営んでいらっしゃるんですよね。

坂井さん:20年くらい前でしたかね。飲み屋さんで働いていたこともあって、お酒をたくさんいただくから身体を壊してしまって。それで「いつか身体にいいものを食べてもらえるお店ができたらいいよね」って母と話していたんです。もう遥か先の夢みたいに思っていたんですけど、だんだん私も母も歳を重ねて、「実現できるとしたら今なのかも」「早くしないと」と思うようになりました。いろいろなタイミングとご縁、人様の協力に恵まれて、去年「おばんざい家 卯」をオープンすることができたんです。

 

——長年の思いが詰まっているお店ですね。

坂井さん:母とふたり、「あれもやりたい」「このメニューもいいね」って夢を膨らませていましたけど、実際、毎日の仕事となると大変ですね。それでも「美味しかった」「また来ます」とお客さまに言っていただくと、「このお店をはじめてよかったな」って思うんです。

 

——坂井さんのお料理は「主婦の延長上」なんてお話がありました。でもやっぱりお仕事で作る料理はまたちょっと違うのでは?

坂井さん:それはもちろん違います。日々勉強ですし、日々改善です。家族だったら「ちょっと今日はしょっぺかったわ。ごめんね」で済みますけど、お店ではそうはいきませんから(笑)

 

——料理を仕事にされている方は、心から「すごい」と思っています。

坂井さん:私も料理を作る立場になったのは今回がはじめてなので、「すごい」だなんて、とんでもないです。自分が作ったお料理でお金を頂戴するプレッシャーを感じています。「美味しかった」と言われると、「これで大丈夫だ。よかった」と思えてね。お客さまの「美味しかった」は魔法の言葉ですね。

 

ちょっと濃いめ。おつまみにぴったりの味付け。

——「おばんざい家 卯」さんらしい味ってありますか?

坂井さん:「普通の味」ではあるんですけど、お酒を楽しんでいただく場でもあるので、おつまみになるようにちょっとだけ濃いめの味付けにしています。

 

——オープン後の反響はどうですか?

坂井さん:「新潟駅前にこんなお店があるんだね」という声がけっこう多いかな。大皿料理を出すお店って、古町や万代にはポツポツあるんですけど、駅前は珍しいみたいですね。だんだんと常連さんが増えてきている実感があります。おひとりで来られる女性の方も多いですよ。

 

 

——お母さまと一緒に働くことについてはどうでしょう?

坂井さん:やっぱりね……面倒ですよ(笑)。すべて思い通りにはいきませんけど、「親子で仕事をすると決めたのだから」とお互い割り切っているところはあるかもしれないですね。

 

——これからもたくさんの人に家庭の味を届けてくださいね。

坂井さん:ありがとうございます。オープンしてからまだ1年経っていませんし、お客さまの声をお聞きしてできる限りリクエストに応えていけたらいいなと思っています。体力の限り、営業を続けていくつもりです。

 

 

 

おばんざい家 卯

新潟市中央区東大通1-6-8 ヨルビル2F⁡

⁡tel/025-288-1342⁡

⁡営業時間/17:00〜22:00⁡

⁡定休日/日・祝⁡、その他不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP