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海を見下ろす丘の上のパン屋さん「パンといす」。

小高い丘から柏崎の海を見下ろす「借景ベーカリー」。

新潟県内には素晴らしい景色を楽しめるスポットがたくさんあります。今日ご紹介する「パンといす」は、小高い丘の上に建ち、晴れた日には青い空と青い海が目の前に広がるのを眺望できる、まさに「借景ベーカリー」。オーナーの中島さんにパンについてのこだわりや、店名の由来にもなっている椅子の話を聞いてきました。

 

 

パンといす

中島 由紀夫 Yukio Nakajima

1956年柏崎市生まれ。長年続けてきた小学校の教員を早期退職し、若い頃からの夢だった家具作家の道に進む。その傍ら2018年7月に地元柏崎で奥さんと共にベーカリー「パンといす」をオープン。趣味は水彩画。

 

小学校の先生から家具作家、そしてパン屋さんに。

——中島さんはパン作りを始めてから長いんですか?

中島さん:いえ、パンを作るようになってからまだ間もないんですよ。私は24年間、ずっと小学校の教員をやってきたんです。新潟県内の下越から上越までいろんな小学校に行きました。でもずっとやりたかった夢があったんで、50歳くらいで早期退職したんです。

 

——なるほど。その夢っていうのはパン屋さんになることですか?

中島さん:それが、木工作家なんですよ。若い頃から椅子に興味があって、そのうち自分の手で作ってみたいと思うようになったんです。家族に反対されましたけど、ずっとその夢をあきらめきれずにいました。小学校を退職してからは、岐阜県高山市にある木工の専門学校で1年間、機械加工や手加工の基礎を学びました。それから中古の木工機械を少しずつ買い足していって、試行錯誤しながら家具作りを続けたんです。

 

——じゃあ、どこかで修行したわけじゃないんですね。

中島さん:そうですね。失敗を繰り返しながら独学で作ってました。椅子の他にも、机、キャビネット、皿などの小物を作りました。作った家具はクラフトフェアとかのイベントに出店して販売してました。東京のクラフトフェアに出店したとき、有名な家具作家さんに声をかけていただき、新宿の家具店を紹介してもらったんです。そこは全国の家具作家の作品を集めて展示販売している店で、私の作品も販売してもらえることになったんです。ただ、東京だとなかなか自分の目が届かないので、地元でお客様の顔を見ながら家具を売りたいという気持ちもずっと持ち続けていました。

 

——家具作家からパン屋さんになったのはどうしてなんですか?

中島さん:家具ってそうそう売れるものじゃないんですよ。家具だけでは生活していけないんですよね。

 

どうしてこの丘でパン屋さんを始めたのか?

——そこでパン屋さんを選んだというのは…。

中島さん:最初は私が作った椅子を展示販売しながら、カフェをやろうと思っていたんです。でもカフェだと席数も必要だし、それなりにスペースも広くなりますよね。あと注文を受けてから料理を作るので、お待たせせずにちゃんと対応できるのか、っていう不安もありました。何ができるのかを消去法で考えていったら、広いスペースも必要なくて、商品もあらかじめ作っておけるパン屋がいいんじゃないかと思ったんです。

 

——海が見渡せる、とても眺めのいい場所ですけど、この場所はすぐに見つかったんですか?

中島さん:ここは元々私がよく来て海を眺めたり、趣味の水彩画を描いたりしていた場所だったんです。ある日「売地」の看板が立っていたので不動産会社に土地代を聞いてみたら、思っていた以上に安かったんですよ。だから思い切ってなけなしのお金を叩いて買ってしまいました。イートインスペースでは日本海を眺めながらお買い上げのパンをお召し上がりいただけます。

 

——このイートインスペースの窓が絵画みたいでいいですよね。ここにある椅子も中島さんの作品なんですか?

中島さん:そうです。自分が作った家具を店に置いて、気に入ってもらえたらオーダーしてもらおうと思っていたんです。

 

——そのわりに、椅子からあまり商売感が感じられないんですが…。

中島さん:オープンしてみたらパン屋の方が忙し過ぎて、椅子を作ってる時間がなくなっちゃったんですよ(笑)。もう少し落ち着いてきたら椅子作りも再開したいと思ってます。

 

秋田名物の漬物「いぶりがっこ」をサンド?

——パンは毎日どのくらいお店に並ぶんですか?

中島さん:最初の頃は10数種類でしたけど、今では35〜40種類は並びます。おかげさまで週末になると420個のパンが1時間で売り切れることもあるんです。

 

——それはすごいですね!パンを作るときはどんなことにこだわってるんですか?

中島さん:とにかく生地が美味しいことです。基準は自分たちが美味しいと思えること。生地は何種類か使い分けてパンを作っています。全粒粉を使った生地はもちもちした食感があって味わい深いパンになります。バターや牛乳を使わずに粉、塩、水だけを使ったシンプルな生地は、外側はパリパリで中身はもちもちのハード系パンになるんです。

 

——生地も使い分けてるんですね。他にもこだわりがあるんですか?

中島さん:ひとつのサイズが小さくて、惣菜パンの種類が多いのもこだわりですかね。サイズが大きいと1〜2個食べただけでお腹いっぱいになっちゃうんですよ。それだと色々な種類を食べることができないから、うちはサイズを小さくしていろんなパンを少しずつ味わってもらいたいと思ってます。女性には喜んでもらえますね。

 

——では、おすすめパンを教えてください。

中島さん:はい。まずは「食パン」ですね。試行錯誤しながら分量を調整して生み出しました。サクサクした軽い食感の美味しい耳が自慢です。

 

——「食パン」はシンプルなだけに難しそうですよね。

中島さん:それから「バナナブレッド」も人気があります。バナナを練りこんだ生地にクルミを混ぜてあります。発酵させずに作っているので、少し時間が経っても美味しいまま食べられるんです。

 

 

——噂では、たくあんを使ったパンがあるって聞いたんですが…。

中島さん:「たくあんとクリームチーズ」ですよね。でも最近は「いぶりがっことクリームチーズ」の方が人気ありますね。大根を燻製して作る漬物の秋田名物いぶりがっこを使っています。最初はいぶりがっことクリームチーズだけだったんですけど、改良を重ねて今では神楽南蛮味噌と大葉も加わった、より奥深い味になってます。

 

これから作ってみたいのは和風なパンと痩せるパン?

——今後作ってみたいパンってあったりしますか?

中島さん:まだ漠然としか考えていないんですけど、「痩せるパン」っていうのを作ってみたいんですよ。カロリーを気にせずに、食べても太らないようなパンが作れたらいいなって思ってます。あと「いぶりがっことクリームチーズ」みたいに漬物を使ったり、梅干しや納豆を使った和風なパンも作ってみたいですね。苦心して作ったパンの人気が出るとうれしいです。

 

 

椅子を展示販売できるお店にしようとしていたのに、パン作りが忙しくて椅子が作れなくなってしまった中島さん。眺めのいいイートインスペースでは、中島さんが作った座り心地満点の椅子がお客様を待っています。その椅子でゆったりくつろぎながら、日本海の美しい眺めと美味しいパンを味わってみてはいかがでしょうか?

 

 

 

パンといす

〒945-0853 新潟県柏崎市番神2-9-56

0257-37-2969

11:00-15:00(パンがなくなり次第終了)

月曜火曜水曜休

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