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旦那さんがパンを、奥さんが世界観を作る「ぱろぱとBAKERY」。

新発田市の住宅街に「ぱろぱとBAKERY」というお洒落なパン屋さんがあります。店の中ではかわいいイラストや、温かみのある手書きのプライスカードが、パンをより美味しそうに彩っています。とてもいい感じの雰囲気のこちらのお店、いったいどんなパン屋さんなんでしょうか。オーナーの嶋田さんにお話を聞いてきました。

 

 

ぱろぱとBAKERY

嶋田 敦 Atsushi Shimada

1980年福岡県生まれ。地元の工業大学で物理を学んだ後、音楽活動のためにバンド仲間と共に上京。バンド解散後は都内の有名パン店で修行し、シェフとして店を任されるようになる。2019年に奥さんの実家がある新発田市へ移住し「ぱろぱとBAKERY」をオープン。趣味は音楽をはじめ、DIYやアクアリウムなど、ものを作ることが好き。

 

イースト菌まで自作? 食費節約のために始めたパン作り。

——なんかパン屋さんっぽくない、すごい音楽が流れていますね(笑)

嶋田さん:すみません(笑)。僕は音楽が好きで、いろんなジャンルのものを聴くんですよ。以前は自分でも音楽をやっていたんです。

 

——へ〜、楽器は何を?

嶋田さん:ドラム、ギター、ベース、パーカッション……わりとなんでもやってました。アフリカのジャンベとかインドのタブラとか、マニアックな楽器もやっていたんですよ(笑)

 

——もしかして実はミュージシャンなんですか?

嶋田さん:福岡の工業大学を卒業して、音楽をやるためにバンド仲間と一緒に東京へ出たんです。とはいってもメジャーになろうと思っていたわけではなくて、いろいろな人と一緒に音楽を作り上げるのが楽しかったんです。もともと「ものを作る」っていうことが大好きだったんですよね。

 

 

——でも、どうしてパン職人になったんですか?

嶋田さん:音楽活動をやっていたときはとにかく貧乏だったので、食費節約のために自分でパン作りをしていたんです(笑)。イースト菌も買えなかったので、古本屋で自家製酵母の作り方が書いてある本を買って勉強しました。その本にはどんな植物からでもイースト菌が作れると書いてあったので、道ばたの雑草やバナナの皮を使って作っていたんです。薄力粉は100円ショップで買ってました。それがパンを作り始めたきっかけです。

 

——おお、生活のためにパンを自作していたとは!

嶋田さん:なかなかうまく作れなかったんですけど、だんだんパン作りが楽しくなってきたんですよね。それでバンドを解散することになったのを機に、東京で人気のあるパン屋で働き始めたんです。僕の中でパン屋っていうのはやわらかい仕事っていうイメージがあったんですけど、やってみたら全然違って、科学者と土木作業員をミックスしたような仕事だったんです。朝4時から夜11時まで働き通しな上に、荒っぽい先輩も多かったですからね。

 

——科学者と土木作業員のミックスって、面白い例えですね(笑)。けっこうキツかったと。

嶋田さん:働き始めた頃の僕はひょろひょろだったので、体力がついていかなくてキツかったです。工房の中も窯がある上に冷房が効かないので暑いんですよ。毎日トイレで吐いてましたね。でもパンを作る上で必要な物理の知識とか、使っている機械の修理とか、工業大学で学んだことがそのとき役に立ちました。焼いているときの音でパン生地の状態が判断できるので、音楽をやっていたことも役に立ったんです。今までの経験が無駄にならなくて嬉しかったですね。自分と同い年の店長に追いつきたいという思いでがんばって、なんとかシェフとして店を任せてもらえるようにまでなりました。

 

こだわりを持たないことにこだわった、パン作り。

——新発田で「ぱろぱとBAKERY」をオープンしたのはどうしてなんですか?

嶋田さん:結婚して子どもが生まれたんです。僕の地元よりは奥さんの地元で暮らした方が、子育てもやりやすいんじゃないかと思ったので、奥さんの実家がある新発田に移住してきたんです。それでいつも子どもと一緒にいられるように、自宅に併設した店舗で「ぱろぱとBAKERY」を始めることにしました。

 

——新発田に来てみて、どんなふうに感じましたか?

嶋田さん:僕の地元の福岡では、思っていることをズバズバいう人が多いんですよ。でも新発田の人は気を遣ってはっきり言わない人が多いので、相手の思っていることを汲み取ることが大切だと感じました。あと雪の降らない土地で生まれ育ったので、今年の大雪は除雪で苦労しましたね(笑)。でも、皆さん温かい人ばかりで、とても住みやすい街だと思います。

 

——きっと福岡と新潟ではかなり風土が違いますよね。さて、「ぱろぱとBAKERY」はどんなお店なんでしょうか?

嶋田さん:パン作りは僕がやっていますけど、お店のイメージ作りはイラストレーターの奥さんがやってくれています。店内やグッズのイラスト、ロゴマークはもちろん、パンのネーミングも奥さんが担当しています。

 

 

——見て見ると擬人化されたパンが多くて、みんなかわいい名前ですね。ちなみに嶋田さんのパン作りのこだわりは?

嶋田さん:僕はできるだけこだわりを持たないようにしているんです。こだわりを持たないことがこだわりっていうか……。強いこだわりを持った職人さんもいらっしゃるんですけど、お客様が喜んでくれなければそれは職人のエゴでしかないと思うんですよ。強いて挙げれば、どの客層にでも食べてもらえるようなパン作りをしています。

 

——誰もが食べやすいパン、っていうことですね。

嶋田さん:そうですね。でもその一方で、他店とは違ったパンも作っていきたいと思っています。相反することだと思うんですけど、それをやっていくのがパン職人としての腕の見せどころだと思うので、どんどん挑戦していきたいですね。

 

——じゃあぜひ、おすすめを教えてください。

嶋田さん:個人的にイチ推しは「デュカバター」。中東のスパイスやナッツを錬り込んだ生地にバターを練りこんで、香ばしく焼き上げたものです。ナッツのうま味やスパイスの香りが楽しめます。地元の酒蔵「金升酒造(かねますしゅぞう)」の酒粕を使った「ブリオッ酒」もぜひ食べてみてほしいですね。

 

人と人がつながる活動を通して、自らも人とつながっていきたい。

——今後、やってみたいことってありますか?

嶋田さん:料理教室を開いたり、音楽を使ったイベントを開催したりして、子どもを中心にした、人と人がつながっていくような活動をしていきたいですね。新発田に多くの人が集まるように、拠点になるスペースを作りのお手伝いなんかもできたらいいなって思っています。そういった活動を通して、新発田の人たちともっとつながりを作っていけたらいいですね。

 

 

取材の間もひっきりなしにお客さんが訪れていて、お店の人気がうかがえました。でもそんな人気店のパン作りのきっかけが、まさか食費節約のためだったとは驚きです(笑)。皆さんも機会があったら新発田にある「ぱろぱとBAKERY」を訪れてみてください。美味しいパンだけじゃなく、音楽好きな嶋田さんとイラストレーターの奥さんの、センスのよさも感じることができると思います。

 

 

ぱろぱとBAKERY

新潟県新発田市城北町2-5-5

0254-37-3358

10:00-18:00

日月火曜他休(売切れ次第修了)

 

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