日常にちょっとした喜びをくれる「Pâtisserie Solange」のフランス菓子。
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2023.11.03
新潟市中央区学校町通の一角にたたずむフランス菓子店「Pâtisserie Solange(パティスリー ソランジュ)」。ガトーバスクやカヌレといった焼き菓子や、季節の食材を使ったケーキなど、本場フランスでも学んだという店主こだわりのお菓子が並びます。今回は店主の三善さんがフランス菓子のお店をはじめた経緯や、お店に置いているお菓子について聞いてきました。


Pâtisserie Solange
三善 悠 Yu Miyoshi
新潟市生まれ。高校卒業後、京都の大学へ進学しフランス語を専攻。大学卒業後は新潟へ戻り、約2年間事務職を経験。京都へ移住し数件のパティスリーやカフェで経験を積む。その後フランスへ渡りフランス職業訓練校や現地の製菓店で学ぶ。一時帰国した後に再度渡仏し、現地の老舗菓子店に勤務。2017年に新潟市中央区で「Pâtisserie Solange」をオープン。
フランスで触れた、伝統菓子や地方菓子を新潟に。
――三善さんはやっぱりお菓子が好きで、お菓子屋さんを目指されたんですか?
三善さん:お菓子が好きで、とりあえずお菓子屋さんになりかったんです。パティシエに憧れていたんですよ。
――きらきらしていて、一度は憧れる職業ですよね。
三善さん:なので高校を卒業したら製菓の専門学校に行きたかったんですけど、周りのすすめで京都の大学に進学しました。「大学を出たらケーキ屋さんに就職したいな」と思っていたんですけど、それも周りから「一度社会に出て会社員として働いてみない?」と言われて、新潟で2年だけ会社員をやっていたんです。
――そのあとはついにお菓子に関わるお仕事を?
三善さん:京都に戻って、ケーキ屋さんで働きました。でも製造に空きがなくって、販売のアルバイトをしながらカフェでも働いて、製造に空きが出るのを待っていましたね。

――「Pâtisserie Solange」はフランス菓子のお店ですよね。フランス菓子とはどこで出会ったんですか?
三善さん:京都で働いたケーキ屋さんが、カヌレなどフランスの様々な地方の焼き菓子を作っているお店だったんです。新潟にいるときはただ漠然とお菓子が好きで、そういうお菓子があることも知りませんでした。
――カヌレって今では日本でもかなり浸透しましたけど、もとはフランスのお菓子なんですね。
三善さん:あとはタルトもそうですし、エクレアも。いろんな国のお菓子を食べた中で、自分が「これだっ」って思うものはフランス菓子が多かったんです。漠然とした「お菓子を作りたい」という気持ちから「フランス菓子を作りたい」と思うようになりました。
――じゃあその京都のお店をきっかけに、フランス菓子にのめり込んでいったわけですね。現地でもお菓子の勉強をされたんですよね?
三善さん:大学でフランス語を勉強して、そのときにフランス自体を好きになりました。でも学生のときには留学の機会がなかったので、いつか長期で滞在してみたいと思っていたんです。製菓学校で勉強した経験もなかったので、そのふたつを叶えられる環境がないかと探して見つけたのが、フランス職業訓練校でした。

――実際に行ってみて、フランスのことがより好きになりましたか?
三善さん:そうですね。生活しながら現地の人と交流したり、お金を握りしめてお菓子を買いにいったり、 現地の材料でお菓子を作ってみたり……転機でした。
――その頃には「自分のお店を持ちたいな」と思っていたんでしょうか。
三善さん:学生ビザが切れるタイミングで日本に帰ってきて、そのときには「お店をやりたいな」というのが目標としてありました。作りたいお菓子を好きなように作るには、独立しかないのかなって。そのまま独立しようかなとも思ったんですけど、もうちょっといろいろ経験したかったので、もう一度フランスへ行きました。
――次はどんなところで勉強されたんでしょうか。
三善さん:バスク地方にある老舗のお菓子屋さんで働かせてもらいました。フランスの地方菓子が好きだったので、地方に行って勉強がしたくって。
――もしかしてお店に並んでいる「ガトーバスク」って、バスク地方のお菓子ですか?
三善さん:バスク地方の伝統菓子です。クッキー生地の間にカスタードクリームが入っているものと、さくらんぼが入っているものの2種類がスタンダードです。現地だと小さい丸型で焼いているところもあればホールで焼いているところもあって、いろんなサイズで売っていましたね。私もいろいろやってみたんですけど、今はホールで焼いたものをカットして出しています。この形がいちばん美味しいかなと。ガトーバスクとカヌレがもともと好きだったので、お店を出すときにはこれをメインにと思っていました。

1個だけでも買いに来てもらえる、気軽なお菓子屋さんを目指して。
――どんなコンセプトで「Pâtisserie Solange」をはじめられたんでしょうか。
三善さん:コンセプトは「アトリエから、“日常”に贈るフランス菓子。」です。フランスではお菓子を日常的に食べる習慣があって、生活に根付いているんです。クリスマスなどの宗教行事でケーキを食べるのは当たり前だし。ちょうど日本でお彼岸におはぎを食べるみたいな感じですね。
――お菓子屋さんに行くことが日常の一部になっているんですね。
三善さん:そういうふうに誕生日や記念日以外でも、例えば自分へのご褒美にとか、「ちょっと元気がないから甘いものを食べよう」って、1個だけでも気軽に買ってもらえるお店にしたくてこのコンセプトにしました。

――ショーケースには季節のくだものを使ったケーキが並んでいますね。
三善さん:今の季節だと「モンブラン」や、「タルト・タタン」というリンゴのケーキを作っています。このリンゴ、自分で採りに行ったものを使っています。
――どれも美味しそう……。お菓子の見た目や味は、三善さんが現地で触れたものを意識しているんでしょうか。
三善さん:最初に働いた京都のお店で勉強したことが土台になっていて、そこにフランスで感じたことが合わさっている感じですかね。現地のものも時代によって変わってきていますけど、大ぶりで甘くてダイナミックなところがあると思います。このお店で出しているものはどちらかというと繊細、とまでは言わないけど、食べやすさはあるんじゃないかな。あまりぼんやりさせたくないので、甘さとか大きさのバランスをとって、できるだけメリハリが出るお菓子を作っているつもりです。

お店に来るお客さんと、お世話になった人たちに支えられて続けている。
――先ほどからお客さんが来る様子を見ていると、販売スタッフさんはいますけど、三善さんも接客に出られるんですね。
三善さん:お店をつくるときに「私自身もできるだけ接客に出られるように」って要望して、こういうお店のレイアウトにしてもらいました。実際に買ってくださるお客様の顔が見えないとやる気がでないタイプなんです。ずっと厨房にいるスタイルが合わないのもあって独立したので、来てくださるお客様の姿を見るのがモチベーションです。
――厨房から店内が見える窓があるのも、そういう理由なんですね。他にもお店をやっていて嬉しいときってありますか?
三善さん:美味しいものができたときですかね。特に季節のものはその時期にしか作れないので、美味しくできたら「今年も無事作れたな」って思います。失敗すると本当に落ち込みます(笑)

――お店を続ける中で三善さんの軸になっているのは、どんな思いなんでしょうか。
三善さん:「お世話になった方に恥じないように」という思いですね。最初に雇ってくれたお店のシェフや、カフェで働いていたときのオーナーもすごくかっこいい方で。その方たちに恥ずかしくないようなものを作りたいです。それと、最初にフランスに行ったときのホームステイ先のマダムのファーストネームをそのまま店名にしていて。だからソランジュのことを考えますね。
――素敵なお店の店名になって、ソランジュさんも嬉しいでしょうね。
三善さん:会社員をやっていたときの同僚の方も、今でもお菓子を買いに来てくれるんです。嬉しいですね。高校生のときは「お菓子屋さんになりたい」っていう進路を周りに反対されて、親も「普通の仕事をしてほしい」と思っていたと思うんですけど、今はいろんな面で応援してくれていて。そうやって周りの方々に支えられて続けられているんだなと感じています。

Pâtisserie Solange
新潟市中央区学校町通3番町523
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