新潟市中央区の鳥屋野潟公園近くにある結婚式場「リージェンス・ウェディングマナーハウス」。今年7月、その式場に併設して「R+cafe(アールカフェ)」というカフェがオープンしました。こだわりのコーヒーや揚げたてのチュロスが楽しめることに加えて、テラス席ではワンちゃんと一緒に過ごせるということで、愛犬家にも喜ばれているんだそう。お邪魔すると、社長の葦原さんがドッグカフェの店長である愛犬クロスケくん(通称クロ店長)と一緒に迎えてくれました。
リージェンス・ウェディングマナーハウス
葦原 樹 Tatsuru Ashihara
1968年富山県生まれ。上越市で育つ。「リージェンス・ウェディングマナーハウス」代表取締役。2001年に新潟市初のゲストハウス型結婚式場として「リージェンス・ウェディングマナーハウス」が誕生。2023年7月に「R+cafe」をオープン。
――まず、結婚式場である「リージェンス・ウェディングマナーハウス」さんがカフェをはじめたきっかけを教えてください。
葦原さん:もともと結婚式の列席者の方向けに、お茶を飲める場所はあったんですよ。でも結婚式場って式があるときに来る場所で、一般の方が来る機会がなかなかなかったというのがひとつ。それから……私がやりたかったんですよ(笑)。カフェというか、いろんな方が来られる場所を作りたかったんです。
――それはどうしてなんですか?
葦原さん:結婚式って地域文化の象徴のようなところがあるので、どなたでもお気軽にお越しいただけるスペースを作りたいと思いました。だからカフェじゃなくてもよかったんです。
――そこでカフェをはじめることに決めたのには、どんな理由が?
葦原さん:私はコーヒーが好きで、かれこれ40年くらい飲み続けているんです。水感覚で飲みやすいものなので、コーヒーがいちばん触れ合いやすいのかなと。でもここは周辺に図書館や公園などもあって自然が豊かな反面、決して人通りの多い場所ではないので、目玉になるものを作りたいなと思って、それでチュロスを置くことにしました。
――チュロスを置いているカフェって珍しいですよね。というか、チュロスを食べられるお店自体があんまりない気がします……。
葦原さん:数年前、スペインやポルトガルに行ったときにチュロスを食べて、すごく美味しかったんです。でも日本で「美味しいチュロスを食べたいな」と思って人に聞いても、ほぼみんな「ディズニーランドのチュロス」って言うんです。それで「本場のチュロスの美味しさを皆さんに知ってもらいたい」という思いもあって、コーヒーとチュロスのカフェをはじめることになりました。
――葦原さん自身がお好きなものを、いろんな人に楽しんでもらえるお店になったわけですね。
葦原さん:なおかつ、私はご覧の通り犬が好きでして。お隣りの公園は散歩コースになっているようで、犬がよく来るんです。だからそういう方も楽しめて、ワンちゃんと共生できる場所を作りたいなと思ってはじめました。平日と、結婚式のない日であれば週末もテラス席ならワンちゃん連れでもOKにしています。今後はこのスペースをもっと広げていきたいですね。
――ところで「R+cafe」の「R」って、どこからきているんですか?
葦原さん:「リージェンス」の「R」からきています。結婚式場をはじめたときに「リージェンス」にはいろんな思いがあったので、店名に入れようと思いました。それから「Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」の「3R」の「R」でもあります。
――じゃあ、環境に配慮した取り組みもされているんですね。
葦原さん:鳥屋野潟の豊かな自然に囲まれているので、「環境に優しい、LOHAS(ロハス)なカフェにしたい」というコンセプトがありまして、食器はなるべくプラスチックを使わずに、エコカップを使っているんです。ドッグカフェが落ち着いてきたらここで犬やペット関連のフリーマーケットを開催して、その収益を動物に関わる活動をしている団体に寄付できたらいいなって考えています。
――素敵な取り組みですね。
葦原さん:エコな取り組みってすぐにできることではないので、できることから少しずつやっていこうと思って。全部準備ができてから進めるんじゃなくて、できることを探して「小さいことでもやらないよりはいいじゃん」というスタンスでやっています。
――お店のメニューについても教えてください。コーヒーにはやっぱりこだわりが?
葦原さん:オリジナルの「Rブレンド」は、スタッフみんなでコーヒー豆の卸屋さんにいって、何度も試飲して作ったこだわりのブレンドです。
――どんな味わいのコーヒーを目指して作られたんでしょうか。
葦原さん:最初に香りが入って、途中でちょっとした酸味とか、コーヒー本来の味が入って、最後に甘みがくるようにしたかったんです。最後に甘みを出すのがすごく難しくて、みんなで試行錯誤しましたね。いい意味で私たちが素人だったので、コーヒーを知っている人は作らないような味になりました。紅茶派の方にも好評です。
――他にはない、ここでしか味わえないブレンドになったわけですね。
葦原さん:コーヒーはハンドドリップで淹れていますし、エスプレッソマシンにもこだわっていて「チンバリ」を使っています。このマシンがあるからって飲みに来られるお客様もいらっしゃいます。結婚式場とは思えぬこだわりようですよね(笑)
――チュロスは先ほどお話しされていたように、本場の味を再現したものなんでしょうか。
葦原さん:最初はそうしたかったんですけど、せっかく日本でやるし、最近はグルテンアレルギーもあるので、米粉100%のチュロスを作ることにしました。砂糖はヘルシーな和三盆糖を使って、油は米油を使って店内で揚げています。
――へ〜、米粉を使うと食感がだいぶ変わりそうですね。
葦原さん:市販されている冷凍のものを使わずに、すべてハンドメイドして提供しています。米粉は新潟県産のコシヒカリを100%使っているんですけど、米粉の種類を変えると味がすごく変わるんです。婚礼部のシェフをはじめ調理部の努力がすごくて、太さと長さと形も、いろんなパターンを試しました。「チュロス」といわれてまず思い浮かべるのは「細くて長い」イメージじゃないですか。でも実は本場のチュロスって太くて短いんですよ。どうせなら今までにない形にするのも面白いんじゃないかと思って、このずんぐりとしたフォルムに(笑)。形にこだわったことで結果的に、いい意味でチュロスのイメージを裏切る見た目と新食感が生まれました。
――メニューを見るとソフトクリームもあるようですが……。
葦原さん:私はソフトクリームが大好きで、全国いろいろなものを食べ歩いていたんです。だからせっかくカフェをやるならソフトクリームもやりたいなと。マシンにもこだわって「カルピジャーニ」を使っているので、なめらかで牛乳の味が濃厚なソフトクリームになっています。最近だと、チュロスをソフトクリームにつけて一緒に食べているお客様もいらっしゃいますね。
――まだオープンされて間もないですが、結婚式場がやっているカフェならではのできごとってありましたか?
葦原さん:カフェをきっかけに会場見学にいらっしゃった方がいましたね。「カフェの雰囲気がいいので」と言って。あと、けっこうこだわっているカフェなので、「きっと結婚式場にもこだわりがあるんじゃないか」と思って来てくださるのかなと思います。
――会場見学の、更に下見のような感覚でカフェに来られている方もいるかもしれませんね。
葦原さん:それと、20年も式場をしていると卒花嫁・花婿の方がたくさんいらっしゃるんですけど、カフェができたことで、その方々がまた来てくださるようになりました。それは式場をしていて嬉しかったことですね。婚礼部のスタッフもローテーションでカフェに入っているんですが、担当したおふたりにまたお会いする機会ができて、それが仕事のモチベーションにもなっています。犬連れの結婚式もプロデュースしているので、その方々もドッグカフェができたと知って、喜んで来てくださって。カフェがあることで結婚式後もお客様とつながっていけるようになりました。
――葦原さんが目指した、いろんな方が集まる場所になりつつあるわけですね。
葦原さん:ネットを通じて話せる時代になりましたけど、顔を見ながらリアルで集まれる場所って、やっぱり必要だと思うんです。私たちが結婚式場をはじめたときには、こういうゲストハウス型の式場が全国にもほとんどなくて、徐々に広まってひとつの文化になっていったんです。そういうふうに、またここからひとつの文化が作れたらいいですね。
R+cafe
新潟市中央区女池南3丁目3-8
TEL 025-367-0178