番組収録に潜入取材!新潟発、ラジオドラマの作り方。
カルチャー
2019.04.14
サード・シーズンに突入の人気シリーズの収録現場を訪ねました。
≪天国にいる大切なあの人へ、心のなかで想うこと。届くはずもないとわかっていながらも綴ってしまうメール。そのメッセージに天国のあの人から返信が届いたら…。≫ そんな物語のラジオドラマが新潟で放送されているのをご存じですか? 2017年よりBSNラジオで制作されているこの人気ラジオドラマシリーズ『ラストメッセージ~天国からの返信~』が、この春サード・シーズンに突入します。今回は、ラジオドラマがどんなふうに作られているのか、収録現場にお邪魔して取材してきました。

喪失と立ち直りの狭間を描く大人のファンタジー。
BSNラジオで放送されているラジオドラマ・シリーズ『ラストメッセージ~天国からの返信~』は、大切な人を亡くした悲しみ、人生の行き詰まり、ふと胸に去来するさみしさややるせなさ。そんな喪失と立ち直りのあいだにある時間を切り取った「大人のファンタジー」として、2017年にスタートしました。約5~6分の短い時間のなかで、主人公たちの人生のワンシーンを描きます。
スタジオに集結するのは新潟の役者さんたち。
午後7時30分、放送局のスタジオに集まるキャストの皆さんやスタッフさん。収録は小さなブースのなかで行われます。出演するのは、普段、新潟で活動している舞台経験が豊富なベテランの役者さんたち。

まずはリハーサル、そして台本の微調整。
この日の収録は4本。キャストが全員集まると、まず1本目のリハーサルからスタートです。静かなスタジオに、ラジオで聴くそのままの「声」が流れてきます。家のラジオやカーステレオで耳にする声が目の前で発声されている。そのことに、ちょっと「おおっ!」となります。1本通してリハーサルを行うと、演出家と脚本家が話し合って台本を微調整。余計な台詞をカットしたり、表現を直したり。ちなみに、リハーサルのテイクでOKが出ることもあるとか(でも過去に一回しかないそうです)。演出を手がけているのは「演劇製作集団あんかー・わーくす」の石附弘子さん。「ラジオを聴いている人が『ん?』って思わないよう、自然に聴けるように心がけています。でも役者さんたちは皆さんベテランで長いことやってこられているので安心しています。」



収録本番はSEなし。声の表現がすべて。
台本が修正され、細かな演出上の指示が入ると、いよいよ本番のテイクです。ここでは、テーマBGMやSE(効果音)のない、素の声だけを録音します。しんと静まりかえったスタジオ内、主人公の役者さんのリズムと呼吸で物語が淡々と進んでいきます。ブースの外側、ミキサー卓の前で録音をしているのは制作ディレクターの石割恵美子さん(BSN)。台本をチェックしながら、音のレベルを調整しながら、冷静に収録を進行していきます。


ベテランの役者さんたちによる収録風景。
収録の合間はリラックスした雰囲気。現在のこの『ラストメッセージ~天国からの返信~』シリーズは3年目ですが、同じスタッフやキャストによるラジオドラマの制作は、もう6年にもなるそうです。役者さん同士も慣れているので、ブース内でお互いのNGの場面をつっこんだり、冗談を飛ばしたり、和やかで楽しそうです。ちなみに今回の収録に参加したのは、レギュラーメンバーである荒井和真さん、佐藤みきさん、そして松岡未来さん、相木隆行さんの4人。ラジオドラマに出演することについて、コメントをいただきました。
ーーラジオドラマの役というのはステージ上での演技とはまた違うのでしょうか。
佐藤さん「表情じゃなくて声だけで表現するっていう難しさはありますね。録音のときはSEなしで自分の声と想像力だけですし。でも放送される音源を聴いて、あ、こうなるんだ、っていう面白さはラジオドラマならではですね」
ーーこれまでいろんな役を演じられたと思います。印象的な役ってありますか?
荒井さん「このシリーズじゃないですけど、オカマのおじいちゃんの役。これ、どうやろう…って(笑)。でも逆に、そういう突飛な設定よりも現実の自分に近い役の方が難しかったりするよね」
佐藤さん「そうね、振り切っちゃった設定の方が楽ですね。普通のOLみたいな役の方がやりにくかったりします」
相木さん「僕は二十歳のやんちゃな役をやったときは、自分のレパートリーにない役だったのでどうかなと思いました(笑)」
松岡さん「ステージよりも、ラジオドラマの方が役の感情により入り込める感じがあります。私の場合、母が亡くなっているので、お母さんを亡くした主人公の役をやったときは、純粋に自分のお母さんのことを思いながらやらせていただきました」


音だけですべてを表現する。それがラジオドラマの面白さ。
収録が終わると、今度は日を改めて編集作業に入ります。役者さんの声だけの音源にBGMやSE(効果音)を被せて、放送用の一本の完パケ音源が出来上がるのです。「声を録ってからは自分との戦いですね」と語るのはディレクターの石割さん。「ラジオドラマはこれまで何本も作ったことがあるんですけど、このドラマの場合は、登場人物の心と景色によりフィットしないと伝わらないと思っています。だから食器の数で人数を表現しようとか、主人公が歩く床の板は何かとか、手紙を書くシーンではボールペンを何種類も用意してどれがイメージにぴったりかとか、音の細部に気を配っています。」そんなにふうに、ありものの音源だけで済ませないところが、やはり音作りをしているプロのこだわりです。
「ドラマの主人公と同じような立場にいる方、境遇の方から、番組が終わったあとで、じーんときましたとか泣いちゃいましたとか、メッセージをいただくこともあります。ラジオドラマは目に見えないので、物語の中に深く入っていけますよね。音だけで匂いも風も表現できるのが、面白さだと思います」(石割さん)


新しいシーズンがはじまります。HPで過去作も視聴可能。
このラジオドラマシリーズ『ラストメッセージ~天国からの返信~』は、サード・シーズンがはじまると40本目を迎えます。新シーズンのスタートは4月16日。第1、3、5週火曜日の午前10:40頃から、BSNラジオ「近藤丈靖の独占ごきげんアワー」内にてオンエアされます。パソコンやスマホでラジオが聴けるインターネットサービス「Radiko」でもリアルタイムでの試聴が可能。放送当日からこのラジオドラマシリーズの公式HPでも視聴できるので、ぜひ気になる人はチェックしてみてください。過去のシーズンの作品もHP上で聴けますよ。ちなみに今回取材した私のお気に入りの回は、セカンド・シーズンの第8話「母のパスポート」、第21話「いつかのハワイ」、第22話「彼のいない職場」です。
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