ミツバチとともに地域と人を育てる
「三条みつばちプロジェクト」
その他
2026.01.16
2020年に三条市へ移住し、「三条みつばちプロジェクト」を主宰している高野じゅりあさん。東京で働いていたときに出会った「銀座ミツバチプロジェクト」をモデルとし、地域貢献や教育を目的とした活動をしています。じゅりあさんが初めて日本に来たのは高校時代。当時のエピソードや日本で就職した理由、そして「三条みつばちプロジェクト」を立ち上げてからのことをいろいろと聞いてきました。
高野 じゅりあ
Julia Takano(三条みつばちプロジェクト)
1991年ニューヨーク生まれ。高校生、大学生のときに日本留学を経験。大学卒業後は埼玉で英会話講師として働く。その後、東京の一般企業へ転職。2020年にご主人の地元である三条市へ移住し、英会話講師として働きながら「三条みつばちプロジェクト」を主宰。柔道、ブラジリアン柔術のプレイヤーでもある。
柔道仕込みの精神力で乗り切る、
初めての日本生活。
――じゅりあさんが初めて来日されたのは高校生のとき。しかも、新潟にいらしたそうですね。
じゅりあさん:交換留学生として、1年間新潟市の高校で過ごしました。実は日本語の勉強をあまりせずに来日してしまって(苦笑)。留学前はお金を貯めるためのアルバイトで忙しかったですし、「まぁ、なんとかなるだろう」という軽い気持ちでいて、とても苦労しました。会話ができない上にクラスのまとまりもいまひとつで、なかなかお友達ができなかったんです。
――う~ん。高校生という多感な時期が見えない壁を作るんでしょうか……。
じゅりあさん:でも、部活動だけが救いだったんですよね。男子3人と私、4人の柔道部で一生懸命練習して。部活にはいろんな思い出がつまっています。
――柔道部に入るくらいだから、じゅりあさんは元々日本の文化に興味があったんですか?
じゅりあさん:そう、とても興味がありました。それで日本に来たんですけど、言葉の壁はあるし、文化の理解もできていない。それに、お友達もいないんだから、留学生活は順調ではなかったですよね。でも「途中でアメリカに戻るなんて悔しい」と思っていたから、1年間必死に踏ん張ったんです。
――柔道仕込みの根性を感じます。
じゅりあさん:そこで培った根性に助けてもらったんですね。練習では、どんなに疲れていても立ち上がります。投げられるために立ち上がっているようなものなんだけど、それでも立つ。だいぶ鍛えられました。
――その後、大学在学中にも再び日本にいらっしゃったんですよね。
じゅりあさん:大学でも柔道部に入部したんですよ。一緒に日本に来た他の留学生たちは、「なんでこんなに日本での生活が難しいんだろう」と苦労していましたけど、私はもうひと通りを経験していたので、少し余裕がありました。
――「難しい」っていうのは、言葉が、ですか?
じゅりあさん:日本語は難しいです。でもそれだけじゃなくて、日本の決まりごとっていうか、周りに合わせなくちゃいけない空気感に息苦しさを感じるときがあるんですよね。その気持ちをなんとかしないと日本で生きていけないと思って、私は細かいことを深く考えない術を身につけました。
――なるほど。なんだか考えさせられます。
じゅりあさん:こういう話題のとき思い出すエピソードがあって。学生時代、寮生活をしていたんですけど、そこは門限も食事の時間も決められていました。あと洋食と和食で食事をするテーブルも決まっていて。友達と一緒に座りたくても、寮のおばさんが「あなたは和食だから、ここで食べてはダメよ」って言うんです。席はガラガラなのにどうしてなんだろう、と不思議でした。
――そういうところって、アメリカと違いますか?
じゅりあさん:アメリカでは、高校を卒業したら大人も同然。自立するタイミングなのに、日本では「大学生なのに子供みたいに扱われている」と思う場面もありました。出席しないと単位が取れない授業があるじゃないですか。アメリカでは出席するかどうかは個人の判断。テストで合格すればOKという感じが多いかな。

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日本での社会人生活に新しい風。
「銀ぱち」との出会い。
――アメリカの大学を卒業された後、日本で就職することを決めたのは?
じゅりあさん:就職活動のために履歴書を作りはじめて気づいたんです。パソコンが得意なわけでも、優れた研究に関わってきたわけでもなく、「あれ? 何も書けることがないじゃない」って。それで自分の得意分野である日本語を生かして、日本での就職を目指しました。活動初期は「JETプログラム」という公的なルートで日本に就職しようとしたんですけど、残念ながらうまくいかず、一般的な方法で日本の英会話スクールに履歴書を送り、就職しました。結果的にはそれで良かったと思っています。「JETプログラム」には期限があって、あるときになると再び「次はどうするか」を決めなくてはいけないので。
――英会話教室は埼玉、その後に転職した企業は東京の会社だったそうですが、どうして三条に来ることになったんでしょう?
じゅりあさん:夫の実家が三条で、「そろそろ後継ぎとして戻ってこないか」という話になったんです。当時コロナ禍で、私はリモートワークで働いていました。ちょうど職場環境に変化があって、仕事とプライベートのメリハリをつけられずにいたので、「これはチャンス」と思いました。夫から相談されてすぐに「よし、乗った」って(笑)
――東京で働いていた頃に「三条みつばちプロジェクト」のヒントとなる活動に参加されていたとか。
じゅりあさん:養蜂を通じて、人と人、人と自然のつながりを生み出したり、社会貢献活動をしたりする「銀座ミツバチプロジェクト」ですね。最初は「仕事以外にも何か別のことに熱中したい」と「銀ぱち」に参加したんです。実は私、日本に留学する前は環境系を学びたいと思っていて。ミツバチについて学べることが、とても魅力的だったんです。
――「銀ぱち」では、どれくらいの期間活動していたんですか?
じゅりあさん:コロナ禍と重なったので、活動は2年間くらいでした。もっと活動を続けたかったんですけどね。その間、いろいろな業種の人と交流しながら、朝早くから養蜂作業をして。大変なんだけど、ものすごく楽しかったですね。

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「三条みつばちプロジェクト」が目指す、
地域と子どもの未来。
――三条へ移住されて、本格的に「三条みつばちプロジェクト」を発足したというわけですね。
じゅりあさん:2020年に三条に来て、翌年に出産をしたので、「三条みつばちプロジェクト」をどう進めていくかぜんぜん決められなくて。しばらくしてから、イタリア人のお友達が「一緒に活動しよう」と仲間になってくれてようやくスタートを切ったんですけど、すぐには前に進まず……。コアメンバーが増えて、「三条みつばちプロジェクト」ブランドのはちみつと蜜蝋を商品化できたのは2025年です。
――じゃあ、去年は着実に前進した年でしたね。
じゅりあさん:マルシェにも数回参加できましたし、すごく忙しかったです。でも「いい感じに活動できているな」と思った矢先に熊が出て、もう大変。ミツバチを何群も失ってしまいました……。
――なんとまぁ、ここでも熊の被害が。ところで「三条みつばちプロジェクト」は、どんな目的で活動しているんですか?
じゅりあさん:仲間づくりと教育のためのプロジェクトです。活動資金として、はちみつと蜜蝋を販売しています。プロジェクトメンバーとミツバチを増やす、ミツバチについて知ってもらう、その両方に取り組みたいと思っています。「それができるのは、三条ではじゅりあしかいない」と、そういう存在になりたいんです。
――仲間づくりはイメージできるんですが、「教育」とは?
じゅりあさん:蜂はお花よりもずっと前から地球に生息していた生物です。長い、長い間、地球がこれほど変化してきたというのに、絶滅せずに植物の花粉を媒介するという重要な役割を果たし続けています。そういった偉大な蜂の生態と感動的な生き様を伝えることを「教育」と位置づけています。
――「銀座ミツバチプロジェクト」では、社会貢献活動もしているということでしたが、「三条みつばちプロジェクト」はどうですか?
じゅりあさん:私はこの先もずっと三条に住むつもりなので、娘のためにもこの町をもっと良くしたいと思っています。でもそれって、結局自分のためなのかな。「三条みつばちプロジェクト」で社会に貢献したい、仲間を作りたい、将来の三条を良くしたい、もしかしたらぜんぶ自分のわがままなのかも。でもパソコンに向かって仕事をしていた頃とは違って、養蜂をしていると、朝の空気がおいしいとかだんだん暑くなってきたとか、自然の変化をすごく感じられるんですよね。重労働なんだけど、帰り道はスカッとした気持ちになって(笑)。ミツバチは小さいから、注意してよくよく見ないと見つけられません。そうすると咲いているお花に目が入ったり、草木の変化に気づいたりできて、今まで気づけなかった自然の力がよく分かるんです。

三条みつばちプロジェクト
※プロジェクトに関心のある人は、Instagramよりメッセージを送ってみてください。
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