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常に新しいラーメン作りに挑戦し続ける職人「佐藤直人」。

  • ものづくり | 2019.09.23

佐藤直人さん、ラーメンを熱く語る。

個性的な帽子とヒゲがトレードマークのラーメン職人・佐藤直人さん。「昔食堂なおじ」をはじめ、「麺匠克味(めんしょうかつみ)」「ラーメンおこじょ」「中華SOBA鬼にぼ」など県内外の人気ラーメン店を生み出してきました。新しい手法やスタイルをいち早く取り入れ、いろいろなラーメンに挑戦してきた佐藤さんに、いままでのラーメン人生とこれから挑戦したいラーメンについて話を聞きました。

 

ラーメンおこじょ

佐藤 直人 Naoto Sato

1971年新潟市生まれ。ラーメンおこじょオーナー。15歳からラーメンにハマり食べ歩きをするようになる。新潟の人気ラーメン店「おもだかや」で修行したのち、父の経営する印刷会社の営業職を経て、「魁龍(かいりゅう)」で再びラーメンの道に戻る。その後新潟で「麺屋極一(めんやごくいち)」を任された後、自らのラーメン店「昔食堂なおじ」をオープン。以後「麺匠克味」「ラーメンおこじょ」「中華SOBA鬼にぼ」など次々と人気ラーメン店を生み出す。

 

自宅でラーメン作りするほどのラーメンオタク?

——今日はよろしくお願いします。佐藤さんはいつ頃からラーメンに目覚めたんですか?

佐藤さん:15歳ころだったと思います。当時はチャルメラの音を鳴らしながら、ラーメンのキッチンカーが家の周りを回ってたんだけど、食べてみたら美味しくてハマっちゃったんですよ。それからラーメンが大好きになりました。新潟県内はもちろん、東京まで行ってラーメンの食べ歩きをしてましたね。

 

——東京までいってラーメンの食べ歩きをしてたんですか?かなりのハマり具合ですね(笑)。ラーメンを仕事にしたのはいつからなんですか?

佐藤さん:自分が好きなラーメン店で修行したいと思って、23歳から3年ほど「元祖支那そば おもだかや」で修行しました。仕事の段取り、麺の茹で方、スープの作り方、だしの材料に使う煮干やとんこつの性質の違いなど、いろいろなことを学びましたね。その時の経験は、自分のラーメン作りに大きく影響を与えてると思います。

 

 

——「おもだかや」で働いてたんですか?!なんか意外な感じがしますね。その後はどうしたんですか?

佐藤さん:東京で1年くらい修行してきて、新潟で自分の店をやろうと思ってたんですよ。ところが、父親の経営する印刷会社に呼ばれて3〜4年間営業をやったんです。でもラーメンを作りたくてしょうがないので、家に寸胴を買いこんで趣味としてラーメン作りをしていました。ラーメンの食べ歩きをして、美味しかったラーメンの味を再現しながら作ってみるんですよ。その後またお店に食べに行って、自分が作った味と比べ、どこが違うのか確認するんです。給料のほとんどはラーメンの食材や調味料に費やしてましたね(笑)。まあ、ラーメンオタクだったんですよ。

 

——いやいや。普通のオタクはそこまでやらないですから(笑)。印刷会社はなんで辞めたんですか?

佐藤さん:やはりラーメン店をやりたいという夢を我慢できなかったんですね。博多とんこつラーメンを勉強したかったので、小倉に本店がある「魁龍」で修行させてもらいました。ちょうど「新横浜ラーメン博物館」に出店するタイミングだったので、そちらで半年間スープ作りを担当しました。そのときに鉄の羽釜を使ったスープ作りをしていて、それが後の「麺屋 極一(めんや ごくいち)」につながるんです。ここでは、とんこつの使い方をじっくりと学ぶことができましたね。

 

味玉でクレーム?新し過ぎたラーメンセンス。

——佐藤さんが最初に新潟でスタートしたのはどんなお店だったんでしょうか?

佐藤さん:県外のラーメン店での修行を終えて、自分の店をやろうと思って新潟に帰ってきた頃、父親もラーメン店の経営を考えていたので、一緒にやらないかと誘われたんです。それで父親の経営する「麺屋 極一」を2003年のオープンと同時に任されることになりました。最初はとんこつ濃度を3〜4段階からお好みで選べるスタイルの、とんこつラーメン専門店にするつもりだったんだけど、とんこつラーメンのほかに、当時流行りつつあった魚介とんこつラーメンの2種類を看板メニューにしたんです。

 

——「麺屋 極一」の評判はいかがでしたか?

佐藤さん:東京でラーメンの食べ歩きをした経験を生かして、けっこう新しいことをいろいろ取り入れたんですよ。味玉や極太メンマをラーメンのトッピングにしたのは、「麺屋 極一」が新潟で初めてだったんじゃないかな。でも、そのおかげで批判的な意見も多かったですね。味玉を食べ慣れてないお客さんからは「なんで半生のどろどろした卵を出してくるんだ」と言われ、Wスープに慣れていないお客さんからは「とんこつスープにカツオの味がついてるなんてどうなってるの?」とか言われちゃったし(笑)。低加水麺を使っていたので「麺が固い」とクレームがついたりね。一番多くの人から言われたのはスープがぬるいこと。限界まで煮込んだスープは沸点が低くなってしまうので、どうしても温度がぬるくなってしまうんです。今は濃厚系のドロドロしたスープが増えてきて、ぬるいラーメンも受け入れられていると思うけど、その頃はまだ早過ぎたんだと思います。

 

——ちょっと新し過ぎちゃったんでしょうか?

佐藤さん:そうかもしれないです。でもやがて魚介とんこつスープがブームになって、テレビ番組のラーメン店ランキングで「麺屋 極一」が2位になったんです。そのおかげで「ラーメン王」といわれるラーメン評論家の石神秀幸(いしがみひでゆき)さんが来店してくれて、「麺屋 極一」のラーメンをとても気に入ってくれたんですよ。それで横浜の「全国ご当地店センバツ ラーメン甲子園」に推薦してくれたんです。2004年から新潟代表として「麺屋 極一」で出店してみたものの、当時の新潟ラーメンの評価はとても低く、「新潟のラーメンなんてすぐ消えるだろう」なんて周囲からバカにされましたね。自分がバカにされることより、新潟のラーメンをバカにされたのが悔しくてね。

 

——そうだったんですか…。今では新潟のラーメンもかなり評価されてるように思いますけど。

佐藤さん:当時はまだまだ新潟のラーメンの知名度は低かったですね。2005年には東京のアクアシティお台場で開催された「ラーメン国技館」へも出店したんです。新潟のラーメンを悪く言われたことで、逆に発奮したおかげで、全国のラーメン店の中で売り上げ1位になったんですよ。しかも新潟のローカル番組のラーメンランキングでも県内1位になることができたんです。

 

大ヒットラーメン「なおじろう」秘話。

——「昔食堂なおじ」はいつから始めたんでしょうか?

佐藤さん:「ラーメン国技館」の出店を終えて東京から新潟に帰ってきてすぐ、「麺屋 極一」をやめることになったんです。やめた日のうちに「昔食堂なおじ」を営業するための空き店舗をみつけました。当初は私の好きなあっさり系ラーメンで勝負しようと思い「昔中華そば」という醤油ラーメンと「なおじの塩」という塩ラーメンを看板メニューにしました。店舗デザインも「昔食堂」のイメージを出すため、店の前に木の電信柱を立て、店の内装にトタン板を貼り、茶の間にアンティークのテレビを置いてレトロなムードを演出しました。

 

——オープン当初はあっさり系ラーメンが売りだったんですね。

佐藤さん:そうなんですよ。ところが、「全国のリスペクトラーメン王者決定戦」っていう企画をやったことがきっかけで、そのイメージがガラッと変わっちゃったんです(笑)。全国のご当地ラーメンをリスペクトした限定メニューを7〜8品提供して、上位に入賞したラーメンを店のレギュラーメニューにしようという企画でした。その企画の中で、東京を中心に人気があった「二郎」という店のがっつり系ラーメンのリスペクトメニュー「なおじろう」を提供したところ、ダントツに人気がありレギュラーメニューになったんです。しかも、レギュラーメニューになったとたん大ヒットになり、一気に看板メニューになっちゃったんです。私はどちらかというと、あっさり系ラーメンが好きなのに「なおじろう」のおかげで、こってり系ラーメンのイメージがついてしまいました(笑)

 

——「なおじ」=「なおじろう」というイメージがありましたよね。ところで「なおじ」は名前やイメージが変わりましたよね?

佐藤さん:私は「なおじ」を手放し、東京の会社に売ったんです。そのタイミングで店名や店舗イメージを新しくしたんでしょうね。私はいま、長岡市の「ラーメンおこじょ」と燕市の「中華SOBA鬼にぼ」を経営しています。

 

圧力鍋が爆発?そして新スタイルのラーメンをめざして。

——ところで、ラーメン作りで大きな失敗をしたことはありますか?

佐藤さん:修行時代は火傷することが多いですね。だんだん、火傷をすることもなくなるんですが、「昔食堂なおじ」オープン前に大火傷してしまったんです。圧力鍋を使っていて、まだ圧力が残っている状態でむりやりフタを開けたら爆発してしまい、全身の30%近くを火傷しちゃったんです。火傷した顔に皮膚が残っていたので、自分できれいにむいたら病院の先生に怒られましたね(笑)。中途半端に皮膚が残ってるとケロイドになる可能性があるんですよ。

 

——壮絶ですね…。ラーメンを作っていてやりがいを感じるのはどんなときですか?

佐藤さん:既存の作り方やスタイルのラーメンじゃなくて、今までにない新しい製法で作ったラーメンが、お客さんに喜んでもらえたときですね。

 

——なるほど。それはこれからも変わらないのでしょうか。

佐藤さん:さっきの話でもあったように、どこかのパクリではなく、まったく新しいスタイルのラーメンを作りたいと思っています。ラーメンとは違った作り方で作るんだけど、やっぱりラーメン、みたいな。そして、そのラーメンが新しい定番ラーメンになっていったらいいなって思いますね。そのひとつが「ラーメンおこじょ」で提供している「のどぐろラーメン」です。新潟を代表する食材でもある高級魚の「のどぐろ」を使い、焼き魚の香りを感じさせるいっぱいに仕上げました。このラーメンは2017年に大阪で開催された「第4回ワールドラーメングランプリ」でファイナリストに選ばれた自信作です。新しい新潟名物として定着していってくれたらと思い提供しています。ぜひ一度食べてみてほしいですね。そして、これからも新潟への郷土愛を込めたラーメン作りをしていきたいと思っています。

 

 

ラーメンが好きすぎて自分で試作するようになり、ついには自分のお店を出し、つぎつぎと人気店を生み出してきた佐藤さん。やることが新しすぎて不評を買うこともあったようですが、つねに新潟のラーメン界をリードしてきたラーメン職人といえるのではないでしょうか。そんな佐藤さんが挑戦するまったく新しいスタイルのラーメン、どんなラーメンになるのかとても楽しみです。

 

 

ラーメン おこじょ

〒940-2023 新潟県長岡市蓮潟4-11-18

0258-89-8536

ランチ 11:00-16:00(L.O.15:45)/ディナー 17:00-22:00(L.O.21:50)

不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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