Things

商店街の雰囲気を感じながら、かき氷を楽しめる「真保餅屋」。

下本町の老舗餅屋が、今年の夏からかき氷を始めた。

下本町にある「フレッシュ本町」商店街。以前は市場なども立って賑わいのある商店街でしたが、現在はスーパーマーケットの閉店もあり人通りが減ってきています。そんな商店街で100年近くも営業を続けてきたのが「真保餅屋」。餅の他にも、赤飯、かき餅、笹団子などを製造販売してきました。その「真保餅屋」が今年の夏からかき氷の提供を始め話題になっています。店主の真保さんから、お餅に対してのこだわりや新たに始めたかき氷についてお話を聞いてきました。

 

 

真保餅店

真保 隆 Takashi Shinbo

1967年新潟市中央区生まれ。大学卒業と同時に「真保餅店」で働き始め、現在は3代目店主。バイク好きで以前は大型バイクに乗っていたが、現在はベスパやスーパーカブで街乗りを楽しんでいる。

 

職人気質の父親の仕事を目で見て盗んだ餅作り。

——「真保餅屋」さんってずっと本町にあるんですか?

真保さん:本町で餅屋を始めたのは大正15年と聞いてますから、今年で94年目になりますね。始めたのは私のおじいさんなので、私で3代目になります。

 

——もうすぐ100周年を迎えるんですね! 真保さんはいつ頃からお店で働き始めたんですか?

真保さん:大学を卒業してすぐ店で働き始めました。高校時代からアルバイトで店の手伝いはしてたんですけど、本格的に餅やお菓子を作ったのはそのときが初めてで、親父に教わったんです。ただ教わったといっても、親父は昔ながらの職人気質だったので口で教えてくれることはなかったんですよ。「仕事は見て盗め」っていう教え方だったので、親父の仕事を見ながら必死にメモを取って覚えました。

 

——職人の世界って、そういうもんなんですね。

真保さん:経験や感覚で仕事しているから、口で説明できるもんじゃないんでしょうね。親父の仕事を見ていると分量を量ったりしないんですよ。毎回分量が違っていたから、気温や湿度なんかで調整してたんですね。私もずっと餅を作り続けてきて、今になってみるとよくわかるんです。

 

——なるほど。でも、覚える方はけっこう大変ですよね。一人前になるにはどれくらいかかるんでしょうか?

真保さん:う〜ん…10年はかかりますよね。

 

——やっぱりそれくらいかかるんですね。じゃあ餅屋さんをやってきて大変なことって何ですか?

真保さん:とにかく朝が早い仕事なんですよ。若い頃は早起きが苦手だったので大変でしたね(笑)。当時はまだ景気のいい時代で、週末になると結婚式用に赤飯の注文がたくさんあったんです。夜中の1時とか2時とかに起こされて赤飯を作ってましたよ。今はそこまで早く起きることは減りましたけど、3時から4時に起きて醤油団子とか大福とかの朝生菓子を作ってます。

 

マイルドで食べやすい「醤油おこわ」や1日中やわらかい「豆餅」。

——「真保餅屋」さんでは、どんなお餅やお菓子を作ってるんですか?

真保さん:お店で常時売っているのは、笹団子、醤油団子、かき餅、大福です。法要やお祝いの席には赤飯や醤油おこわの注文が来ます。年末にはお歳暮として餅を県外発送する人が多いので、ほとんど餅を作ってますね。新潟市内でも「餅屋」が屋号に残っているのは、そんなに多くないんじゃないかな。

 

——お餅や団子を作るときにこだわっていることはあるんでしょうか?

真保さん:作る時に特別なことはしてないですね。ただ、素材の味を引き出せるように作っているので、素材のよさにはこだわってます。もち米には新潟県産のこがねもちを使ってますし、小豆も国産を使っています。

 

——ぜひ、おすすめを教えてください。

真保さん:うちで一番売れるのは「醤油おこわ」ですね。醤油の味が前面にがっつり出てくるっていうものではなくて、マイルドで食べやすいおこわになってます。ほんのりとした甘みもあるんじゃないかな。お米の美味しさも楽しんでもらえたら嬉しいですね。

 

 

——たしかにマイルドなのに甘みはしっかり感じられますね。他にもおすすめはありますか?

真保さん:「やわらかい豆もち」も人気があります。うちは保存料を使わずに作っているので、普通だったら昼頃には餅が固くなっちゃうんです。でも保存料を使わずにやわらかさが長持ちするよう工夫しているから、1日中やわらかいままなんです。

 

 

——へ〜、保存料を使わないでやわらかさを長持ちさせるのはすごいですね。最後にもうひとつくらいおすすめを聞いていいでしょうか?

真保さん:やっぱり「笹だんご」かな。でも、うちの「笹だんご」ってなんの変哲もない「笹だんご」なんです。地元の人たちに食べた感想を聞いても「普通」っていわれるんですよ(笑)。まあ、よくいえば「笹だんご」らしい「笹だんご」っていうことですね。

 

かき氷を始めて今までとは違う年代のお客さんが増えた。

——お店の前に飲食スペースがあるんですね。

真保さん:今年の夏からかき氷の提供を始めてみたんです。前からやってみようかなって思ってたんですけど、保健所の許可が下りないと思ってたから真剣に考えたことがなかったんです。最近、たまたま保健所の方にお会いする機会があって、かき氷のことを相談してみたら販売する許可がもらえたんですよ。

 

——かき氷を始めてみて反響はいかがですか?

真保さん:もう、びっくりするくらい反響がありましたね。今までは年配のお客様が多かったんだけど、かき氷を始めてから若い人も来てくれるようになったんです。小学生までおこづかいを握りしめて来てくれるからとっても嬉しいですね。

 

 

——お客さんにも変化があったんですね。そもそも、かき氷を始めたのはどうしてなんですか?

真保さん:なんとかお店にお客様を呼びたいという思いはありましたね。本町周辺の人口が減ってきているので、町にも活気がなくなってきているんです。昔は市場も立っていたので観光客なんかもたくさん来てたんですけどね。地元の人たちに人気のあったスーパーマーケット「ホクセイマート」が閉店してからは、さらに人通りがなくなってしまいました。かき氷をやることでお客様が寄ってくれたらと思ってるんです。

 

——今後もかき氷を続けていく予定ですか

真保さん:そうですね。とりあえず毎年夏には出すようにしたいと思ってます。反響があれば寒くなってからも続けてみてもいいかな。あと、かき氷に限らずテラスを利用してお汁粉とかお雑煮とか、いろんなメニューを食べて行ってもらえるようにしたいとも思ってます。そうすることで、少しでもお客様が本町に立ち寄ってくれるようになってくれたらいいなって思ってるんです。

 

 

大学卒業と同時に家業だった老舗の「真保餅屋」で働き始め、3代目として店の暖簾を守ってきた真保さん。人通りが少なくなった下本町の商店街に活気を取り戻したいと、この夏からかき氷の提供を始めて反響を呼んでいます。今後はお汁粉も食べられるようになるかもしれないということなので、町歩きの途中で立ち寄って、甘味で疲れを取ってみるのもいいのではないでしょうか。

 

 

真保餅店

〒951-8067 新潟県新潟市中央区本町通2754

025-222-9638

7:00-18:00(日曜は12:00まで)

水曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP