オススメしたいものだけを誠実に売る「たのしいスーパー エスマート」。
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2022.11.10
五泉の郊外にある「たのしいスーパー エスマート」は、他のスーパーではあまり見かけないような商品がおすすめされている、ちょっと変わったスーパーマーケットです。「エスマート」におじゃまして、「プリン店長」こと鈴木さんにいろいろとお話を聞いてきました。


たのしいスーパー エスマート
鈴木 紀夫 Norio Suzuki
1971年五泉市生まれ。東京の経済大学を卒業。大手スーパーや鮮魚店での修業を経て、2000年頃、新潟に戻って家業の「エスマート」に就業。趣味は店の裏にある高立山(たかたてやま)でトレッキングをすること。
五泉のスーパー「エスマート」の危機。
——「エスマート」さんはいつ頃から続いているスーパーなんでしょうか。
鈴木さん:スーパーの形態になったのは昭和52年です。ちょうどあちこちにスーパーができはじめた頃で、「これからはスーパーの時代だ」と考えた父がはじめました。それまでは「すゞきや」というお店をやっていて、駄菓子、文具、日用品を売っていたんです。
——鈴木さんは、いつかはスーパーを継ぐつもりだったんですか?
鈴木さん:はい。そのために東京の大学で経済を勉強して、卒業後は大手スーパーに就職したんです。そのスーパーでは鮮魚の勉強をしたいと思っていました。
——どうして鮮魚を?
鈴木さん:精肉はほとんど豚、牛、鶏の3種類ですけど、魚って種類が多いじゃないですか。料理の方法だって刺身、煮物、焼き物といろいろありますよね。だから他のスーパーとの差別化を図る上では、魚に力を入れるのが面白いんじゃないかと思ったんです。

——なるほど。それで鮮魚の勉強をしたんですね。
鈴木さん:面接の際に「鮮魚部で働きたい」と伝えたんです。そうしたら、鮮魚部は水を使う上に汚れるから人気がないらしくて、僕の意向通り鮮魚部に配属してもらえそうだったんですよ。ところがどういうわけか、鮮魚部ではなく精肉部に配属されまして……(笑)。仕方ないので1年働いてからスーパーを退職して、鮮魚店に転職することにしました。
——新潟に帰って「エスマート」で働きはじめたのはいつ頃ですか?
鈴木さん:2000年頃です。店舗を増やそうと意気込んで帰ってきたのに、実際はそんな状況じゃなかったんですよ(笑)
——と、いうと……?
鈴木さん:1987年頃には3店舗あったのに、僕が戻ってきたときには2店舗だけになっていて、しかも五泉市内にあった店舗の業績がよくなかったんです。そこで五泉市内の店舗を閉めて、こちらの1店舗に絞ることにしたんですよ。ところが、これが失敗だったんです。
——どうしてですか?
鈴木さん:閉めた店舗は経費も多くかかっていたけど、その分売上も大きかったんです。逆に売上の少ない店舗を残しちゃったから、今までの負債を埋めていくのが厳しくなっちゃったんですよ。まして残した店舗があるこの地域は、人口がどんどん減っている過疎化地域だったんです。
——なるほど……それはピンチですね。
鈴木さん:スーパーは薄利多売な商売ですから、このピンチを切り抜けるにはもっと儲かる商売をはじめるしかないと思いました。そこで小売業から惣菜の製造業に商売替えをして、今までライバルだったスーパー相手に製品を卸そうと考えたんです。そんなとき、僕の目を覚ましてくれた「プリン事件」が起こったんですよ(笑)

お店が変わるきっかけになった「プリン事件」。
——「プリン事件」って、どんな事件なんですか?
鈴木さん:普段はお店に置かないような高級プリンを4個だけ発注したつもりが、僕のミスで24個入りを4箱発注してしまったんです(笑)
——え〜と……全部で96個ということでしょうか。
鈴木さん:そうなんです。しかも、僕は外せない出張があったので、とりあえずその日は冷蔵庫に入れておくように指示して出かけたんですよ。ところが出張から帰ってきたら、そのプリンが半分くらい売れていたんです。あんなに値段の高い品物が、どうして1日で50個も売れたのか不思議でしょうがありませんでした。
——私も不思議でしょうがないです(笑)
鈴木さん:じつは私が出かけた後、父とスタッフでプリンを試食してみたらしいんです。そしたら値段が高いだけあって、とっても美味しかったわけですよ。そこでレジのスタッフが、常連のお客様ひとりひとりに「本当に美味しいプリンだから、買ってみてくれない?」ってすすめてみたところ、常連のお客さん達が2〜3個ずつ買ってくれたそうなんです。そこで2日目もお客様にすすめ続けてみたら、なんと完売してしまったんですよ。
——えーっ、それはすごい。
鈴木さん:その頃の僕は、大手スーパー仕込みの効率的な商売を実践していたので、スタッフにはお客様との無駄話を禁止していたんです。「口を動かす暇があったら、その分手を動かせ」とスタッフ達に言っていました。でも、そのやり方が間違っていたことに気づかされる事件でしたね。お客様はスタッフとの信頼関係があったから買ってくれたんです。しかもスタッフがプリンを試食していたことで、言葉に説得力が生まれたんだと思います。僕がいたら試食なんてさせなかったから、いなくてよかったですよ(笑)

——いろんなタイミングが重なって「プリン事件」が起きたんですね。
鈴木さん:それからは二度とそんなに高い商品を発注しないつもりだったんですけど、しばらくして、年配のお客様から「あのプリンは今度いつ入荷するの?」って聞かれたんです。聞いてみると、あのとき買ったプリンを孫に食べさせたらとっても喜んで、それ以来ねだられるようになったそうなんです。
——へぇ〜「怪我の功名」って感じですね。
鈴木さん:びっくりしました(笑)。僕はお店に来るおばあちゃんたちが好きそうな、餡玉やかりん糖といった懐かしめのお菓子ばかり揃えていたんです。ところがおばあちゃんたちは自分のためではなく、孫を喜ばせたくてお菓子を買っていたんですよね。そこでもう一度高級プリンを仕入れて、チラシで入荷の告知をしてみたら地元でプリンフィーバーが起こったんです。
——今風に言うと「バズった」わけですね(笑)
鈴木さん:本当にそんな感じでした(笑)。今度は試しに600円もするパンを売ってみたら、予約だけで完売してしまったんです。それで気がついたことは、自分達が今までやってきた「他より安く売る」という商売が間違っていたということでした。本当に品質のいい商品で、お客様がそれに納得してくだされば、安くなくても売れるんですよね。それからはお客様に喜んでいただけそうな商品を、自信を持っておすすめするようになりました。そのおかげで業績が上がってきたんです。

お客さんにとっての「親切」を考えた営業。
——今はどんなことを意識しながら、スーパーを経営しているんですか?
鈴木さん:まずは嘘をつかないこと。「あまり美味しくない」とか「鮮度がイマイチ」とか正直にお客様に伝えて、その上で納得してお買い上げいただくようにしています。ごまかしたりしないことで、お客様から信頼していただけるスーパーになりたいんです。
——簡単なようで難しいことですよね。他にも意識していることはありますか?
鈴木さん:常にお客様から喜んでもらえるよう心掛けています。美味しい商品を置くようにすることはもちろん、商品を手に取りやすいように棚を低くしたり、声をかけてコミュニケーションを取ったり……。どうしたらお客様にとってより親切なのかを、いつもみんなで考えていますね。
——「親切」といえば、ポップの説明がとてもわかりやすいですね。
鈴木さん:ありがとうございます。以前は「2個で○○円」とか「お早めにどうぞ」とか、商品を買わせようとするポップばかり出していたんです。でも今は商品がどういうものなのか、どうしておすすめしたいのかをお客様に伝えるためのものという意識に変わりました。おすすめしたい商品を集めたガイドブックも作っているんですよ。

——ちなみに、おすすめの商品にはどんなものがありますか?
鈴木さん:いち推しは自家製の「なんばん味噌」です。この地域の郷土料理といえるもので、刻んだ青唐辛子と砂糖を入れた、ほんのり甘くてピリ辛な味噌なんです。ご飯のお供や、おにぎりの具にぴったりな商品ですね。うちのオリジナルとして「ゆず入りなんばん味噌」もあります。

——ご飯が進みそうですね〜。
鈴木さん:あとは、「トロサバのレモンはさみ」ですね。脂の乗った大きいサバにレモンが挟んである商品です。それをグリルで焼いてから召し上がっていただきます。サイズにはこだわっていて、手に入るなかでは一番大きなサバを使っています。そのサイズのサバを使っているのは料亭以外でうちだけなんです(笑)

——これからも、こだわった商品が増えていきそうですね。
鈴木さん:最近はじめたのは、土日限定の揚げたてカレーパンです。注文をいただいてからカレーパンを揚げるので大変なんですけど、お客様にはとても喜んでいただいています。今では先にカレーパンを注文してから、買い物をはじめるお客様も多いんですよ。
——そこまで徹底している揚げたてカレーパンって、パン屋さんでもなかなかないですよね(笑)
鈴木さん:ありがとうございます。今までは「スーパーはこういうものだ」っていう呪縛があった気がするんです。これからはそういうことに捕われず、「これって、スーパーなの?」って言われても、お客様が喜んでくれると思ったことは自信を持って続けていきたいと思っています。

たのしいスーパー エスマート
五泉市橋田389-4
0250-42-4857
10:00-18:30
火水曜休
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