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フランスの民家のようなケーキ屋さん「ラ・パティスリー プレジール」。

絵本から飛び出したような可愛い外観の洋菓子屋さん、新潟市西蒲区の「ラ・パティスリー プレジール」。お店のまわりだけフランスの田舎町のようなムードで、次から次へとお客さんが入っていきます。そんな人気店の秘密を、オーナーの岡村さんに聞いてきました。

 

 

有限会社 プレジール

岡村 克巳 Katsumi Okamura

1968年新潟市西蒲区(旧巻町)生まれ。地元の菓子店「俵屋菓子舗」の長男として生まれ、高校卒業と共にいくつかの菓子店で修業を積む。その後「俵屋菓子舗」に就業し、1994年に「ラ・パティスリー プレジール」の前身となる「プレジール俵屋」をオープン。生き物が好きでアクアリウムを楽しんでいる。

 

社会に出てからは他人に育てられる。

——とっても可愛いお店ですね。

岡村さん:ありがとうございます。私たちは夫婦揃ってフランスの古民家やガーデン、アンティークが好きだったので、そんなイメージで17年前に店舗を改装したんです。建物は北フランスにあるノルマンディー地方のスタイルなんですが、色合いは南フランスのプロヴァンス地方に見られる黄色や水色の明るいカラーリングにしました。

 

 

——外観も内観も凝っていて素敵ですね。オープンされたのはいつなんですか?

岡村さん:もともとは私の実家でやっている「俵屋菓子舗(たわらやかしほ)」の姉妹店として、「プレジール俵屋」の名前で1994年にオープンしたんです。父は以前からこの場所に目をつけていて、私が高校生のときにアルバイトとして私に自動車の通行量を調べさせたんです。駐車した車のなかで朝から晩までカウントしていました(笑)

 

——お父さんには先見の明があったんですね。「プレジール俵屋」をはじめるまでは「俵屋菓子舗」で働かれていたんですか?

岡村さん:勉強のために、新潟市西区にある菓子店で5年間修業しました。私もまだ高校を出たばかりの年頃の男子だったので、男ばかりの職場で働くのは寂しかったですね(笑)。でも段取りをはじめ仕事の基本を教わることができましたし、同じ釜の飯を食った仲間との絆ができたことは大きな財産になったと思っています。

 

——その後は「俵屋菓子舗」に?

岡村さん:当時流行りはじめていたフランス菓子を勉強したかったので、夫婦で経営している洋菓子店で2年くらい修業しました。それまで教わった仕事のやり方とはまったく違ったので、こてんぱんに叱られて苦労しましたね。でも新しいことをいろいろ学ぶことができて、とても勉強になりました。

 

——修業が今に生かされているんですね。

岡村さん:人間って、社会に出てからは他人に育てられるものだと思うんですよ。働いていれば理不尽なことも多いんだけど、それも経験として受け入れることが大切だと思います。私もそうして成長してこられたような気がしますね。

 

販売と製造を、同じパワーバランスにすることが大切。

——お店を続けているなかで、心掛けてきたことがあったら教えてください。

岡村さん:とにかくお客様に満足していただけるように努力しています。そのためには、販売と製造を同じ力加減にして臨まなければならないと思うんです。たとえどんなに美味しいお菓子があったとしても、接客態度が悪ければお客様は来なくなってしまうし、その逆もありますよね。

 

——どちらかが秀でたり劣ったりしてはダメなんですね。では販売の際には、どんなことに気をつけているんでしょうか?

岡村さん:お客様の顔を見て、どんな人なのかを察するんです。お話したいのかお話したくないのか、急いでいるのか時間があるのか、それを察した上でお客様に合わせた接客を心掛けるようにしています。

 

 

——製造面ではどんなことを心掛けていますか?

岡村さん:「お客様に嘘をつかない」ということを大切にしています。創業当初は売れ残った商品でも翌日に販売していたんです。鮮度が落ちていても充分食べられる状態なので、当時はわりと当たり前にやっているところが多かったんですよね。でもある時期からそれをやめて、毎日作りたてのケーキしか置かないことにしました。そうしたところ、来店数も増えてケーキの売上げも上がったんですよね。お客様には伝わるんだろうなと思いました。

 

——それにしても、ずいぶんたくさんの製造スタッフがいますね。

岡村さん:ただのスタッフとして使い捨てするのではなく、弟子として一人前のパティシエやパティシエールに育てるような気持ちで接しています。なかには自分のお店をオープンした子もいましたし、今年も独立する予定の子がいるんですよ。本当にうれしいですよね。

 

——スタッフを大切にされているんですね。お弟子さんにはどんなことを教えているんでしょうか。

岡村さん:お菓子づくりよりも、洗い物や片付け、掃除といった雑用がしっかりできる職人になってほしいんです。どんなに高級で綺麗で美味しいお菓子を作っていても、その手元が汚かったら失格だと思っています。衛生面においてもいい加減になりかねない。雑用がしっかりできる子は、仕事の段取りもスムーズなんですよ。雑用は仕事の基本ですね。

 

——雑用がすべての基本なんですね。

岡村さん:僕はそう思います。時代の流れで世のなかが便利になっちゃったせいか、楽をしたがる子も多いんですよ(笑)。でも最初から甘い水を飲んでいたら、その後は苦い水を飲めなくなってしまうので、若いうちに苦い水を飲んでおくことも大切だと思うんです。今は人と関わりたがらない子も多いけど、人との関わりも大切にしてもらいたいんですよね。

 

オススメの秋スイーツと今後の抱負。

——どれも美味しそうなお菓子ばかりですよね。オススメの商品を教えてください。

岡村さん:これからの季節でしたら「アップルパイ」がオススメですね。長野の農家さんから仕入れている旬のリンゴを使って、バターや砂糖を合わせてシンプルに焼き上げています。サクサクしたパイ生地の食感と、アーモンドクリームのバランスが絶妙なんです。

 

 

——サクサクしたパイ生地と、しっとりしたリンゴの組合せが美味しいですね。

岡村さん:ありがとうございます。それから「いちじくタルト」も10年前から続いてきた人気商品です。地元で盛んに栽培されているいちじくを使ったタルトなんですよ。

 

——「地元」といえば「巻ルーロ」というロールケーキがありますよね。あの「巻」というのは地名からつけたものですか?

岡村さん:もちろんそれもありますけど、地元ではロールケーキのことを「ロール巻」と呼んでいるんですよ。それを逆さまにしたのが「巻ルーロ」です(笑)。手みやげで買っていく人もいますし、盆暮れに里帰りした際に買って食べてくれる人もいます。

 

 

——もはやご当地スイーツですね。今後はどんなことに挑戦してみたいですか?

岡村さん:長く続けていると、自分の味が決まってきてしまうんですよね。もちろん、その味を求めてご来店くださるお客様もいらっしゃいますけど、職人としてはそこから脱却して新しい味に挑戦したいんです。そして、決して高級店ではなく、地元のケーキ屋さんとして皆さまに愛されていきたいですね。

 

 

 

ラ・パティスリー プレジール

新潟市西蒲区巻甲62-1

0256-72-0556

10:00-18:00

月火曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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