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古町に誕生した、次世代の先駆けとなる古着屋「snoob」。

  • カルチャー | 2022.09.28

今年8月、洋服屋で盛り上がりを見せている古町通に、古着屋「snoob(スノーブ)」がオープンしました。こちらのお店のオーナーは長きに渡りファッション業界に携わってきた方で、今回のお店は、こだわり抜かれた空間作りと、既存の古着屋にはないアプローチが魅力なんだとか。どんな話が聞けるのでしょうか。オーナーの星さんに、お店のことや古着のことについて、いろいろとお話を聞いていきました。

 

snoob

星 慧 Satoru Hoshi

幼少期からファッションに興味を持ち、17歳でアパレル業界に入る。2009年24歳のときにメンズアパレルのセレクトショップ「SISTER」を立ち上げ、その後、数々のショップをオープン。2022年8月に「snoob」をはじめる。

「snoob」が作り出した新しい古着屋の見せ方。

――こちらの古着屋さんでは、こだわり抜いた空間作りをしていると聞きました。どんなテーマでお店づくりをしたんですか?

星さん:「再利用」をテーマに、コロナ禍で閉店してしまったブティックの跡地を使った、他のお店にはない「見せ方」を意識した店づくりをしました。

 

――具体的にはどのあたりをこだわったんでしょうか?

星さん:とある内装にインスピレーションを受けて「サステイナブルを意識したリデザイン」にこだわりました。よくある「居抜き」とは違って、店内にあるほとんどの什器は以前のお店にあったものを使っています。入り口のすぐそばにある建具は、あえてむき出しの状態にした天井や床の退廃的な雰囲気に合うようヴィヴィットな赤色に変えて、ラグジュアリーさを感じられるデザインにしました。

 

 

――このスピーカーもリデザインと何か関係があるんですか?

星さん:これは、コロナ禍に入って旅に出ることができなくなってしまったトランクケースに、Bluetoothと極上のサウンドシステムを内蔵したスピーカーです。金沢にいる知り合いのもとで見つけたときに、店のテーマと一致していることやビジュアルに惹かれたこともあって手に入れました。

 

 

――内装のリノベーションはすべて自分たちでされたそうですが、特に苦労されたところはありますか?

星さん:建物の図面が残っていなかったので、手探りで解体をしつつ、天井の配線や軽鉄をどの程度見せるか考えて作業を進めるのは本当に難しかったです。そこのバランスについてはパートナーと綿密に打ち合わせを行って、無事予定日までになんとか完成させることができました。

 

競合の多い古町通を選んだ理由は?

――競合ぞろいのエリアですが、いまここでお店をオープンされたのには何か理由があったんですか?

星さん:国内で古着の再ブームが起きてから数年で、このエリアもたくさんのお店が並びはじめました。その様子を見ながら、「見せ方の違いで、他のお店がまだやっていないようなアプローチができるのではないか」と考えていたんです。

 

――ふむふむ。

星さん:以前からこのエリアで店をはじめる構想は練っていたんですが、理想的な場所を見つけるのに時間がかかってしまって、このタイミングでオープンすることになりました。あとはコロナ禍があったことでフィジカルな場面の大切さが再認識されて、ここがさらに活気づくのではないかとも考えていました。古着はそれぞれが1点物ですから、フィジカルな場所にこそ適しているものだと思っています。

 

――オープンの前日には、レセプションパーティーを開かれたそうですね。みなさんのリアクションはいかがでしたか?

星さん:かなり好評をいただきました。告知が遅くなってしまったにもかかわらず、たくさんの方が来てくださり、いいスタートが切れたと思います。昔から付き合いのある人たちには、「知らせるのが遅くてお祝いの花も用意できないから、もっと計画的に頼むよ」と言われてしまいましたが(笑)

 

 

――ところで、星さんはいつ頃からアパレルの道へ進もうと思っていたんですか?

星さん:13歳くらいのときから「自分はいつか洋服屋をやるんだろうな」と思って疑いませんでした。

 

――これまでに影響を受けた人はいますか?

星さん:昔から夜が好きで、夜遊びで知り合った人たちには影響を受けていました。それと、金沢でショップやギャラリー、ご自身のアパレルブランドも運営されている方には考え方や生き方が大きく変わるほど影響を受けました。はじめてお会いしたときから私のことをちゃんと叱ってくれる大切な存在で、いまでも年に数回、叱られるために金沢までいっています(笑)

 

――ちなみに、内装工事の技術はどうやって身につけたんですか?

星さん:独学です。もちろん、いきなりはじめるのは無理だったので、周りにいた強力なサポーターに教えてもらいながら少しずつ覚えていきました。

 

――そもそもどうして自分で内装をやろうと?

星さん:「Maison Margiela」が恵比寿でお店をオープンしたとき、「Margielaは塗装も内装も全部自分でやるらしい」という話を聞いたことがきっかけでした。それ以来、店をやるなら絶対に自分の手で作ろうと決めて、新装も改装もすべて自分たちで行いました。

 

クールとユーモアをかけ合わせた「snoob」らしいアプローチ。

――では、もう少しお店のことについて教えてください。「snoob」はどんな古着屋さんですか?

星さん:洗練されたセレクトショップのような古着屋です。近県の古着屋さんではあまり見られないような内装デザインを意識して、セレクトショップならではの現代的な見せ方ができたんじゃないかと思います。

 

――洋服のラインナップはどんなものがありますか?

星さん:「グッドレギュラー」と呼ばれる、これからヴィンテージになり得る90年代以降の洋服と、当時のデザイナーズブランドのアーカイブ、店頭に立っているスタッフの好みで70年代の洋服にも力を入れています。現代のブランドともミックスしやすいように、デザイン性や着たときに生まれるムード、シルエットの良さを見ながらセレクトしています。

 

 

――新品にも合わせられるような古着を揃えることができるのも、セレクトショップをやってきた星さんならではのアプローチですね。ところで、タグに書かれている「レア度」ってなんですか?

星さん:私たちの独断と偏見で希少価値の高さを5段階に分けて、古着ならではの宝探し感をより楽しんでもらえるように付けました。子供の頃にやっていたカードゲームのようなエンターテイメント性って、誰にでも親しみがありますし、見ていて面白いじゃないですか。裏面もちょっとした工夫が加えてあるので見てみてください。

 

――注意書きとクリーニングについてですね。

星さん:注意書きの部分には英語で「洋服によっては汚れが付いていたり、穴が開いていたりするかもしれませんが、あなたの人生には何も影響しません。ご安心ください。」、クリーニング方法の最後には「分からなかったら母ちゃんに聞け」と書いています(笑)。店内のデザインをクールにした分、クスッと笑ってもらえるようなユーモアをタグに入れてみました。

 

 

――こんなタグは他の古着屋さんでは見たことがないですね(笑)。お客さんの反応はどうですか?

星さん:面白がってくれる方が多いですね。なかにはレア度を確かめるためにひと通り見て回る方もいらっしゃいます。それが結果的にいろんな洋服に触れてもらえたり、「あのお店はちょっと違うな」と思ってもらえたりするきっかけにもなります。店にきてくれたお客さんの心になにか少しでも残せるようなアプローチをこれからも考えていきたいです。

 

誠実に進化し続ける「snoob」の展望。

――今まで洋服屋をやってきたなかで、大切にしてきたことはありますか?

星さん:「変化を受け入れること」と「誠実であること」、そして「経験すること」です。これは全ての職業にいえることかもしれませんが、長く続けていくためには常に先を見据えて、時代の変化を受け入れながら進化し続けることが唯一の方法だと思っています。

 

――ふむふむ。

星さん:でも、トレンドや変わることばかりを意識しすぎて本筋がブレてしまっては意味がありません。私は誠実な人や服が好きです。誠実な人はなにをやっても本筋がブレません。だからこそ自分も誠実でありたいと思うし、時代の変化を受け入れる多様性を持ちながら進化を続けるためにも、経験することが大切だと思っています。

 

――ファッションはトレンドの変化が激しい世界だと思いますが、どんなふうに経験を積んできたんですか?

星さん:あまり固定観念を持たずに、なにごともまず経験だと思って一度は試すようにしています。ただ見ただけ、聞いただけ、読んだだけでは世の中に流されていってしまうので、食わず嫌いせず、常にフラットな視点を持って試すことが理解を深めるためにも欠かせません。そうやって何年も続けてきたなかで得た失敗や成功があるからこそ、変化していく時代の本質を見極める目や、ブレない誠実さを養うことが出来るのではないかと思います。

 

――これから「snoob」はどんふうに変化していくんでしょうか?

星さん:近年特にトレンドの移り変わりが目まぐるしいファッション業界でニーズだけを追い求めていると、洋服屋としての本質や存在意義を簡単に見失ってしまいます。だからといって自分たちのエゴ優先になったり、ずっと内容が変わらなかったりしていると、いつか飽きられてしまいます。だからこそ既存の古着屋らしい考え方ではなく、お客さんのニーズと私たちらしいチョイスをかけ合わせた「USED をチョイスしているセレクトショップ」 として、誠実な店づくりを続けていきたいです。

 

 

 

snoob used & vintage store

新潟県新潟市中央区古町通5番町586

12:00-20:00

水曜、不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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