阿賀野市にある「サントピアワールド」は、「安田アイランド」の名でオープンして以来、約45年にわたって多くの新潟県民に親しまれ、愛されてきた遊園地です。子どもの頃の思い出の中に、ここで遊んだ記憶がある、という人もたくさんいるのではないでしょうか。しかしその「サントピアワールド」が、新型ウイルスの影響で、今、深刻な悩みを抱えています。今日は「サントピアワールド」の歴史や直面している問題について、企画部の齊藤さんにお話を聞きました。
サントピアワールド
齊藤 武志 Takeshi Saito
1973年新潟市西区生まれ。「サントピアワールド株式会社」企画部。大学卒業後、「サントピアワールド株式会社」前身の「株式会社安田遊園」に就職。以来、サントピアワールドに関わり続けてきた。趣味はB級スポット巡りで、変な看板を探して色々なところに出かけている。
——よろしくお願いします。今日は休園なんですね?
齊藤さん:そうなんですよ。7月22日までは土日だけの営業になってるんです。
——オープン当時は「安田アイランド」でしたよね?
齊藤さん:1976年4月にオープンしました。当時ここはまだ阿賀野市じゃなくて、安田町でした。このあたりの区長をやっていた現社長のお父さん、安田町長、山下家具オーナーの3人で立ち上げたんです。安田町や新潟県を盛り上げたいという気持ちだったんじゃないでしょうか。オープン日には国道49号が大渋滞したと聞いています。「安田アイランド」っていう名前は、まわりの田んぼが水を張ると、この遊園地一帯が島に見えるから「アイランド」ってつけられたという説があるんです。
——そうだったんですね。これほどの規模の遊園地って初めてだったから、みんなの期待も大きかったでしょうね。その後「サントピアワールド」にリニューアルしますよね。
齊藤さん:1998年にリニューアルオープンしました。その時はゴールデンウィークに25,000人の来場者があって、開通したばかりの磐越自動車道の新潟中央I.Cから安田I.C区間が長い渋滞になったんですよ。リニューアルオープン日はスタッフが全然足りなくて、急遽募集したんです。
——ところで「サントピアワールド」に変わったときは、どこをリニューアルしたんですか?
齊藤さん:センターハウスから観覧車までの景観が整備されました。キャッチフレーズは「水と緑と太陽のユートピア」なんですけど、「どこか漂うイタリアの風」っていう裏コンセプトもあったんです。そのコンセプトに沿ってイタリアの情景のようにリニューアルしました。実際にイタリア製の大理石像とかアトラクションとかをたくさん使ってるんですよ。でも、いつの間にか日本庭園ができたり、トーテムポールが立ったり、無国籍なイメージになっていっちゃいましたよね(笑)
——齊藤さんおすすめのアトラクションやスポットを教えてください。
齊藤さん:まずは「恐竜ジェットコースター」ですね。恐竜の形をしたジェットコースターって珍しいんですよ。あと意外と激しい動きをするので、かなりスリリングです。
——私も以前乗った時は、けっこう怖かった記憶があります。
齊藤さん:それからイタリア製の「メリーゴーランド」もおすすめです。2階建てになっていて装飾も凝っているので、インスタ映えするんじゃないでしょうか。Negiccoのミュージックビデオにも登場してるんですよ。
——どことなく高級感があるメリーゴーランドですよね。他にもおすすめはありますか?
齊藤さん:「大観覧車」も自慢ですね。一面の田園風景が見下ろせて絶景を楽しむことができます。晴れていれば日本海に浮かぶ佐渡島まで見えるんですよ。あとお客様がむき出しのまま乗る「あいあいアンブレラ」っていう観覧車は全国でも3ヶ所くらいしか設置してないんです。
——アトラクションの他にも、ここは、という園内スポットはどうでしょうか。
齊藤さん:「恐竜神社」は撮影スポットとして人気があります。もともとキャンペーンで「恐竜みくじ」っていうおみくじをやっていて、そのための鳥居があったんです。そこに恐竜の置物も置くことになったので、夜中になると暴れる恐竜を封じ込めるために鳥居があるっていう裏設定を作ったんです。
——なにげにパワースポットだったりするかもしれませんね(笑)
齊藤さん:パワースポットといえば、センターハウスの裏にあまり知られていない祠があるんです。その祠はパワースポットとして人気のある、阿賀野市の旦飯野神社(あさいいのじんじゃ)の宮司さんにお祓いしてもらってるんですよ。いつだったか占いの先生に見てもらったら、「サントピアワールド」の園内全体がパワースポットらしいです。なんでも風や水の通り道になっていて、悪い気が残らない場所らしいんです。
——「サントピアワールド」の業務に関わってきて、やりがいを感じるのってどんなときですか?
齊藤さん:それは何といってもお客様の笑顔を見たときですね。あと、「思い出に残る仕事をしている」って実感したときです。園のスタッフが新潟市の古町を歩いていたときに、親子連れのお子さんに「あ、サントピアワールドのジェットコースターの人だ!」って言われたそうなんです。それだけ子どもの記憶には強く残っているもんなんですよね。
——いいお話ですね。では反対に大変なのってどんなことですか?
齊藤さん:接客業務でもあるし、安全面での機械管理業務もあるし、いろんなことをこなす総合的な仕事が多いですね。私もパフォーマーとしてバルーンアートをやったりしています。あとこれだけの設備になってくると維持管理に膨大なお金がかかるんですよ。毎月のメンテナンスだけでも年間で3,000万円かかっています。
——経営面で新型ウィルス感染症の影響ってあるんでしょうか?
齊藤さん:それはかなり深刻ですね…。今、クラウドファンディングでアトラクションの維持管理費、水道光熱費、税金、新たなチャレンジ資金としての支援金を集めています。新潟県に住む人たちそれぞれの思いが後押ししてくれているのか、目標の5,000万円に対して支援金1,600万円が集まりました。募集終了日の7月30日まで引き続きご支援をお願いしたいと思ってます。先週末の来園者数は昨年と比べて増加していたので、クラウドファンディングの影響もあるのかもしれないですね。とてもありがたいです。
——今後の抱負を教えてください。
齊藤さん:この危機を乗り越えられたら、地元の人たちに何らかの形で還元したいですね。遊園地ってみんなが楽しむために来る場所だと思うんです。だからたくさんの「楽しい」を集められる施設として長く続けていきたいですね。
長い歴史の中で新潟県民の思い出の場所として続いてきた「サントピアワールド」ですが、新型ウィルス感染症の影響を受け存続の危機を迎えています。新潟県でも数少ない遊園地を残していくためにも、みんなで応援していきたいですね。
サントピアワールド
〒959-2212 新潟県阿賀野市久保1-1
0250-68-3450
10:00-16:00
7/22まで土日のみ営業