「魚のアメ横」と呼ばれている長岡市の「寺泊魚の市場通り」。新鮮な魚介類や焼きたての浜焼き、海鮮丼などを目当てに、いつも多くの観光客で賑わっています。昨年、そこから少し離れた海岸沿いに「すず家(すずや)」というお店がオープンしました。のぼりや看板を見ると、ラーメン、肉まん、そしてカレーが食べられるお店のようです。いったいどんなお店なのか、スタッフの山沢さんにお話を聞いてきました。
すず家
山沢 涼子 Ryoko Yamazawa
1983年新潟市中央区生まれ。千葉の大学で栄養学を学び管理栄養士の資格を取得。新潟に戻り給食調理の仕事に就き、その後は管理栄養士として老人ホームで献立を立案する業務を続ける。2020年8月にオープンした「すず家」のスタッフとして肉まん製作や接客を担当。趣味はロードバイクでのサイクリング。
——こちらのお店ではラーメン、カレー、肉まんが食べられるんですよね。どうしてこの取り合わせになったんですか?
山沢さん:私が肉まんを作って、オーナーがラーメンとカレーを作っているんです。オーナーは私の前の職場の上司だったんですよ。ある日「一緒にお店をやって、自分が作った肉まんを売ってみない?」って誘われて、軽い気持ちで「やります!」って言っちゃったんです。まさかラーメン屋をやることになるとは思ってもいませんでした(笑)
——山沢さんは肉まん担当ということですけど、なぜ、肉まん?
山沢さん:私は千葉の大学で栄養士の勉強をしていて、そのときの調理実習で本格的な中華料理の肉まんを作ったことがあったんです。それを食べてみたら、今まで食べてきた肉まんとまったく違っていて、その美味しさに感動したんですよね。それ以来、趣味でちょくちょく作るようになったんです。
——栄養士を目指していたんですね。
山沢さん:高校生のときにテレビで見ていた朝ドラで、ヒロインが給食調理の仕事をしていたことに影響を受けたんです。卒業後は新潟の給食委託会社に勤めて、病院や老人介護施設の給食を作っていました。いろいろな健康状態の人に食事を作る仕事だったので、食べる人に合わせて食事を作る、っていうことを学びましたね。
——病院や施設だと、なんでも食べられる人だけじゃないですもんね。ずっと給食作りをやっていたんですか?
山沢さん:大学で管理栄養士の資格を取っていたので、老人ホームで食事の献立を考える仕事もやりました。やりがいのある仕事だったんですけど、ずっと事務所にひとりでこもっている仕事だったので、もう少し人と接する別な仕事をしたいと思うようになったんです。そのときにオーナーから誘われて、お店をやってみるのも悪くないなって思ったんですよ。
——「すず家」は具体的にどういういきさつでオープンしたんですか?
山沢さん:私と同じ職場に勤めていたオーナーが、会社を辞めることになったんです。これからどうしようかと考えて、趣味で作っていたラーメンのお店を始めようと思ったそうです。もともとラーメンを食べるのが好きで、趣味が高じて自分でラーメンを作ることにハマっていたんですよ。オーナーは私が肉まんを作っていることを知っていたので、お店を始める際に誘ってくれたんですよね。
——新潟や長岡の市街地じゃなくて、寺泊にオープンした理由は?
山沢さん:オーナーは趣味のロードバイクでシーサイドラインをサイクリングしていて、寺泊のこの辺もよく走っていたんです。そのときに、もっと気軽に入れる店があったらいいのにって思っていたらしくて、この場所でお店を始めることにしたようです。肉まんを出そうと思ったのも、サイクリングの人がテイクアウトできて、片手で食べられる物があればいいと思ったからなんです。お店の前には自転車用の駐輪スペースもあって、ワイヤーロックや空気入れもレンタルしているんですよ。
——たしかに寺泊って海鮮系のお店に比べて、ラーメン店はそんなに多くないですもんね。実際にお店をやってみて大変なことはありますか?
山沢さん:長い間デスクワークをしてきたので、立ち仕事になったのが最初はきつかったですね。でも今ではすっかり慣れました。あと接客業も初めての体験だったので、最初は何もわかりませんでしたけど、幸い一緒に働いているスタッフが接客のベテランだったので、いろいろ教わることができて助かりました。今でも教わり続けています(笑)
——じゃあこれまでで嬉しかったことは?
山沢さん:中国出身のお客様から肉まんを褒められたときですね。「お母さんの作る肉まんんと同じ味だ」って言っておかわりしてくれた上に、テイクアウトまでしてくれたのは嬉しかったです(笑)
——肉まんはどんなところにこだわっているんですか?
山沢さん:一番こだわっているのは皮のモチモチ感です。気温や湿度で毎日違うし、水の量が1ミリリットル違うだけでも変わるんです。でも最近やっと分量の加減がつかめてきました。あと、肉餡には市販のひき肉を使わずに、赤身の肉を自分で挽いた物を使っています。赤身肉を使うことで脂身が少なくて食べやすくなるんですよ。
——なるほど、美味しそうですね。じゃあラーメンのこだわりも教えてください。
山沢さん:ラーメンを担当しているオーナーは、毎日でも食べられるようなあっさりラーメンを提供したかったようです。6時半から9時までの朝営業もやっています。スープは無化調の鶏ダシをベースにしていて、麺は西堀や本町の老舗人気店と同じものを使っています。
——観光地で提供しているということはあまり意識していないラーメンなんですね。でも、どうしてカレーまで出そうと思ったんですか?
山沢さん:カレーもオーナーが作っています。ラーメンだけだとさみしいのでご飯メニューも考えたんですよ。そこでカレーだったら男女や年齢を問わずに食べられるし、ラーメンと合わせても美味しく食べられると思ったんです。タカギ農場の「玄氣米(げんきまい)」に、数種類のスパイスを使ったカレーをかけています。どのメニューもすべて化学調味料を使わずに作っているのがこだわりですね。
——今後はどんなことをやってみたいですか?
山沢さん:肉まん以外の創作まんも作ってみたいと思っています。昨年10月のハロウィンシーズンには期間限定で、かぼちゃ餡を使った「かぼちゃまん」を提供して好評だったので、これからは他の新しいメニューも考えてみたいですね。いつでも気軽に立ち寄れて、飽きられないお店を目指していきたいと思っています。
大学時代に食べた調理実習の肉まんに感動し、趣味で作り続けてきた山沢さん。その肉まんが今ではお客さんに提供され、逆に喜びや感動を与えています。皆さんも観光やドライブ、サイクリングで寺泊を訪れたら「すず家」の肉まんを片手に散策してみてはいかがでしょうか。
すず家
新潟県長岡市寺泊大町9353-567
0258-86-5527
平日11:00-14:00、土日祝6:30-9:00/11:00-14:30
不定休